5歳3
去年大勢の村人を動員しアキタ村とクルルートの町にある路面状態が悪い箇所をレンガ舗装した道路に変えてから、ロバに荷車を引かせた行商人を見る事が多くなってきた。
やはり道路が改善され車輪を使える事が輸送能力の向上に繋がった事で、積載できる物資を増やせたことで採算が採れ行商人の往来は増えた。
舗装した道路の効果によって移動速度の向上にも繋がり、今までは町まで3日かかっていたのが2日で移動できるようになった。
トサ村で干鰯の生産が始まっても小型の船で小さな網を使用した地引網漁では干鰯の生産も少なく、遠浅にできた漁村では喫水の深い大型の船舶が寄港出来ない事やただ子供を含めても千人に満たないハウンド男爵領では市場的価値は低く、馬車を数台引き連れた商隊どころか馬を使用した馬車もなく、駆け出しの商人である行商人がロバの背に荷を積むか、ロバに小さな荷車を牽かせるような行商人の往来しかなく週に1人2人といったものであったが、村人達が農作業を抜けて町に行く必要もなくなってきた。
彼ら行商人たちは村では採れない町の加工生産品である、石鹸・ごま油・染色された糸・岩塩などを銀貨や銅貨で支払い、糸・布を売り銀貨や銅貨を得ていた。
村人達は文字を書くことや計算ができる者が少なく、行商人たちに彼らが騙されていなかを定期的に兄が村人達に聞いて回っていたりする。
騙さされた者もおらず時期的な変動はあるが取引に問題となるようなことはなかった。
村人達から糸や布を買うだけでは荷車には余剰スペースが十分にあるため、臭いがつくためトサ村に行き干鰯だけを買う者、父や兄を通し小麦や大麦の穀物や炭を買う者がほとんどだった。
「では木炭300㎏で4,500Rなので金貨45枚お渡ししますね」
「金貨45枚預かった、やはり炭の価格もだいぶ落ちてるみたいですね去年の半分とは」
「そうですね一時期高値で売れていたというのもあるんでしょうが、町に入ってくる量が日に日に増えており下がっている状態ですが、ここ最近は下っておらずこのあたりが下限ではないでしょうか」
「これ以上は値下がりしてほしくないですね、穀物に比べれば良い値で売れていたので」
今日も乗馬の訓練を兼ねて村を散策していると、クルルートの町の行商人ブレントが兄から炭を購入していた。
ライル王国では通貨にRを使用しており、1Rは銅貨1枚で、10Rは銅貨10枚か銀貨1枚となり、100Rは金貨1枚となる。
村で1㎏15Rで買った炭を町に持って行けば25Rで売れ、1㎏10Rの利益となるが炭は運搬時の振動で他の炭と接触したりすると欠けたり折れたりすることがあり、破損した炭は町では相場よりも安く買われるために差益10Rとなっている。
穀物の相場は小麦が1㎏10Rに大麦が1㎏5Rで村で買われ、町の商会が住民に対して売っている価格は小麦が15Rに大麦10Rとなる。
炭は町では鍛冶師などの職人たちが買うなど固定客が多く商会が行商人から買取価格は決まっているが、穀物は住民が客となるため複数の商会で安く質の良い麦を買い求めようとするため、行商人からの買取価格に差が出てくる。
質の良い麦であればこの村で取れる物よりも高い値で商会が買うため行商人も村での買取価格を高くし、逆に質の悪い物であれば低い取引価格となる。
このあたりでは盗賊の被害があったなどの話は聞かないが、ひとり旅で金貨を何十枚と持ち歩く行為は危険だが商人としての危機意識がブレントにあるのか疑問に思えてくる。
今までは辺境にあり貧乏な男爵領であったが貨幣経済が浸透しつつあり、人の往来が増え始めれば盗賊などによる治安の悪化が心配される。
貨幣が領内に流れ1人当たりの農作物の収穫量が増えている今の男爵領であれば、専属の兵士を雇用したり騎士として領内のパトロールをさせ治安悪化を防いだほうが良いのかもしれない。
中世の時代において広大な森を持つ貴族が資産を持っていました。
製鉄に使う炭や船材として、木材は重要な資源であります。
石炭を蒸し焼きにしてコークスが作られるまでの鉄の値段は同じ重さの穀物に対して6倍の価値がありました。時代が進むにつれ2倍程度まで縮小していきます。
鉄を作るのにかかる費用の内訳で炭が6割で鉄鉱石が1割で残りが人件費とかです。
炭の値段を抑えるために、森の中で製鉄を行い価格を抑えようとして森がなくなれば移動するという流れです。現代であれば製鉄所があるので場所が固定しているので現代とはイメージが変わります。




