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3歳3

 小麦の収穫を前に3m四方の小さな麦畑の小麦の生育状態を観察している。

 茎の数、穂にできた実の大きさを確認すると、村の大きな小麦畑とはあきらかに異なっていた。

 大きな畑と小さな畑から1本ずつ引き抜き見比べてみると、大きな畑の麦は茎が1本であり実も少し小さいが小さな畑の麦は茎が3本あり実も少し大きかった。

 「違うとは思っていたが、こうして抜いて近くで見比べてみるとはっきりとわかるな」

 「そうですね、これほどの差が出るとは思わなかったですね」

 「これを村のすべての畑で出来れば麦の収穫は今までの2倍いや3倍以上にはなるぞ」

 「3倍ですか、確かにこれだけの差があればあり得ますね。収穫をしたときに正確に測ってみます」

 「よくやったぞクルト、優秀な息子がいて本当に頼もしい」

 「いえ私はただルークが言うように作業をしていただけです。本当にすごいのはルークですよ」

 「本当にすごいのは兄さんだよ、麦の栽培方法や生育状況を羊皮紙に記録してわかりやすくまとめてるんだから」

 去年私が兄に頼み小さな秋蒔き小麦の畑を作ってもらい、私がこの村で今試せる限りの農法を実施し収穫前の麦を見ながら父・兄・私の3人で話していた。



 私が試した農法は、作っていた肥料を畑に撒き耕起し、種を選別しばら撒きで蒔き、麦踏を行い追肥し土が乾燥すれば水を撒くものだった。


 耕起前に肥料を撒くのはクローバーによる窒素はは補充されたとしても家畜の糞による施肥では発行が不十分なため、糞・草・腐葉土を混ぜ合わせ完全発酵した肥料を作成した。


 種の選別とは塩水選が有名で江戸時代に発明され明治に義務づけられ稲の収量を1割増やした農法だがそんな事をしなくても、普通の水に種を入れ浮いた物を除外するだけでも十分な選別が出来る。

 種を水に浸し浮き上がった物を除去し、底に沈んだ種は実が詰まった発芽率が高いものとなる。

 この世界の農業では施肥が不十分であり追肥もなく、種に養分がいかず未成熟な物が多く塩水に居れたら半分以上が浮いてしまうため、わざわざ塩水を入れてより厳選する意味がなくなってしまうからだ。


 種をばら撒いたのは機械などが無いので1粒1粒を地面に埋めていく方法であれば非常に時間がかかるためでその労力で耕作面積を広げたほうが有効なためだ。

 麦は1粒約0.03gで村では10a(10m×10m)の畑に20㎏蒔いており60万粒以上になり、村では耕作地が広がり今では50ha(5000a)ずつを3圃式で回しているので50haに種を植えるとなると3億粒となる。

 1000人もいないような村で3億粒も手作業で1粒1粒植えていく行為は時間の無駄というのがこの理由だ。

 では日本では稲などは古くから手作業で苗を植え替えていたが、稲は10aの水田に200gほどの籾を発芽させ苗をして植えていくためで20kg(20,000g)と200gとでは100以上も労力が違うというわけだ。

 今回の試験では9平方m(3m×3m)の畑に対して1㎏を蒔いている。


 麦踏とは冬季に芽が出た麦を足で踏みつけることによって土の中の隙間を無くし霜柱などで根を痛めるのを防ぐ為の農法で日本などの一部の地域で見られる農法だ。

 茎が折れ曲がり吸水能力が弱まり、内部の水分が減り寒さや乾燥に強くなることが分かっている。

 麦踏などの外部からの刺激があると種からできた茎とは別に新しく茎が出来る(ぶん)げつが発生し、分げつで出来た茎からも穂が実る。

 麦の収量増加にはこの分げつが重要なためで、村で育てている小麦には1つの穂に約10粒の実が出来るがこれが分げつすると20粒に、さらに分げつすると30粒にと増えていく。

 昔は村人みんなで歌い踊りながらしていたりもする。

 農地が広大になるとさすがに人がペタペタ踏むわけにもいかないので、鎮圧ローラーという道具を使うようになった。

 村では丸太を転がしてれば鎮圧ローラーの役割は十分だと思える。

 米の採れる稲は水田にあれば勝手に分げつして増えていくため、分げつして養分がなくなるのを防ぐ為に水田の水を抜く中干しが収量増加につながる。

 中干し第2次世界大戦後に全国に急速に普及し収穫量が多く上がった。


 この世界の麦は雨水だけに頼った天水農業で育てられ村でもそうなっている、麦を蒔く前にあった養分は麦の成長とともに消費され生育途上でなくなり未成熟な実の穂が出来るというわけだ。

 追肥を行い実の詰まった穂を作れるようにするには、どのタイミングで追肥を行うかをこれから研究していかなければならない。

 この地域は雨は少ないが土が乾燥すると麦の成長にも悪影響が出るので、乾燥すれば水を散布するようにはした。

 麦というのは乾燥に強いとイメージが強すぎて、乾燥したほうがよく成長すると思うのは間違いである。

 種が成長するときに水に浸かっていると窒息して発芽しないため晴れた乾燥した日に蒔いたり、穂に実が出来始めている時に穂が雨などの水に濡れると収穫量が落ちる。

 このようなイメージのせいで水が全くいらないと思っていたりするが、灌漑設備を整え水を与えれば収穫量が増える。


 小麦の収穫量が増えればパン食の日が増え食生活の改善になるため、兄にはこの農業を村全域で実践してもらうためにも頑張ってもらいたい。


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