3歳2
あれからブリントは10日に1度の頻度で村を訪れており、村で不足している物や無い物を町で買い入れ領主である父に一括で売却し村では炭を買い入れ町と村を往復するようになっていた。
炭の売却益が良いのか売買は去年から黒字であるようで我が家の財布も膨らんでいるようだ。
ブリントが村で売却した物には、石鹸、染色された糸、石灰、岩塩、香辛料、オリーブ油などの町で加工し生産された物やこの地域では採れないものであった。
購入された物についてだが、このあたりでは石鹸の原料となるオリーブやゴマなどの植物が育たず獣脂や魚油を用いた石鹸となるが、臭いを我慢すれば衣類の洗剤として使えた。
染色などの加工は町などの職人が行っていることが多く、生活に余裕が出てきた村人達の要望で染色された糸が入っている。
石灰は畑に撒いたり、高温で焼成して砂を混ぜ合わせたモルタルが建物の補修などに使っている。
香辛料は高価だが数年前に比べれば値下がりしており、町では売られることも多くなったとか。
この地より南方の温暖な地域でオリーブ採れており、オリーブから採れた植物油でここまで持ってくるには輸送コストで高くなっているとか。
釘やインゴットなどは値が上がっているために買い控えている状況で、造船作業にも影響が出ていた。
また例年であれば村から町に羊毛を売りに行く商品にも変化があり、麻布や亜麻糸などの生産量が増えた物も混ざっていた。
「初めは日干しレンガで試してみたんですが数時間水に浸した物は脆くなり耐久性に問題があるため、次に焼成レンガで試してみると衝撃にも強く水に浸した状態でも問題が無いことがわかったので、このまま焼成レンガで計画を進めてもいいですか?」
「なるほど実用に耐えれそうならそれでいこう、1日にどのぐらい敷設できそうなんだ?」
「そうですね道を30cmほど掘り、砂利を付敷き詰めその上にレンガを敷設し隙間にモルタルを流し込むので順調に行って1日に2人で5mほどでしょうか」
「ある程度は時間はかかるのはしょうがないとして大勢で作業をすればそれだけ早く終わるだろうし、荷車が通れないほど酷くなる場所さえどうにかできれば荷車を使えるようになるから作業があいたときに集中してやってしまおう。クルトは何人か子供達を使ってレンガ作りを行ってくれ」
「わかりましたレンガをある程度作るので工事は2か月以上先の予定でお願いします」
路面に敷設するレンガの試作を村内で行い十分実用に耐えれるものが出来たことを、水を撒き荷馬車を通すなどして兄が実演し父に説明している。
私も粘土をこねるなどの手伝いをして兄に協力し、今も隣で説明を聞いてた。
父が言うように荷車が通れないような凸凹の酷くなる場所さえ先に改善してしまえば、町まで荷馬車が使えるようになる。
馬やロバの背に荷を載せて運搬する方法は古くから行われていたが、100㎏前後の重量しか載せれず無理をさせてしまえば馬が潰れてしまうような却って状況はひどくなる。
荷車を使えれば1トン以上の重さを運搬でき、コネストーガ幌馬車の様に車輪を大きくし牛や馬を直列にして牽かせれば5トン以上の運搬もできる。
石灰を高温で焼成して砂利などと混ぜ合わせたモルタルは古くから利用されており、日本でも石灰を使った最古の物は縄文時代に利用されていたとあり他の地域では見られないためその地域独自の技術とあり伝承はしていないが、その後大陸から技術が伝来し古墳時代には壁画などに使われていたりする。
海に囲まれた日本では漆喰の材料である石灰は牡蠣の殻を使ったりもした。




