2歳の冬2
足踏み式糸車によって糸を作る紡績技術や飛び杼によって布を織る機織り技術の変化によって村では多くの糸や布が出来上がっていく。
今年の冬は父の今後の方針の発表もあって漁村に必要と思われる漁網や帆の準備も進められていた。
衣類用よりも太くした魚網用の糸を例年の何倍もの速度で大麻繊維が消費されていき、例年であれば加工する時間が無いため町に繊維の状態で売られていく亜麻も布として消費されていった。
私も大麻で船の帆を作ろうとしていたのは中止し、漁網の製作を少し手伝っていた。
女性達が糸や布作りに精を出している頃、男達は刃こぼれもなく手入れされた斧を使い木の伐採や炭づくりを行い何人かはシバ村に泊まり込んで開拓の応援に行っていた。
村では鍛冶師バーザクの移住により男女ともに恩恵を受けており、新たに子供達にもその順番がやってきた。
井戸での水汲みは子供たちの仕事で今までは釣瓶を使い汲んでいたが、手押し式ポンプが村の井戸に取り付けられ水汲みの労力が軽減されていた。
そして今日も鍛冶小屋に赴いていた。
「今日は何を作ってほしいんだ」
「同じ大きさの上下にに板が無い箱を積み上げていった箱が大量に欲しいだ、図を描いてるからこんな感じでお願い」
「何に使うかよくわからんが、板と板を合わせるのに釘が必要だな。鉄は高いんが役に立つものなんだろうな?」
「上手くいくかはわからないけど、成功すればきっと役に立つよ」
「だいたい何に使うんだこれは?」
「ミツバチの巣だよ、今は蜂蜜を採る時に巣箱を毎回壊してるけどこれなら上の部分だけを分解して蜂の巣の上側だけを採れると思うんだ」
「なるほど、蜂蜜が本当にうまく取れるならやってみる価値はあるかもな」
ミツバチの重箱型巣箱の製作を依頼した、ミツバチは上から巣礎を作っていき巣が大きくなっていくと上部は蜜を貯める部分となっており重箱の上から1段目2段目だけの採蜜であれば巣を壊すことなく来年も採れるため増産が見込める。
前世では主流となっているラングストロスの巣という巣枠に、蜜蝋などを混ぜ6角形のハニカム構造で印圧した巣礎を張り付ける方法は成功するかわからない養蜂で蜜蝋の消費が出来ないのであきらめている。
この世界では年が明け1月1日になれば1つ歳が増え私も今日から3歳になったが、特に何か祝うなどの催しもなくただ何事もない普段の日と変わらず過ぎていった。
それから数日するとシバ村に応援に行っていた者たちが帰ってきた。父や祖父や兄達が混ざっており良い笑顔を浮かべていたので開拓は成功のようで、何軒か家屋も完成し耕作面積も以前の数倍に広がったと母に話しているのを聞いた。




