2歳の冬1
今日はこの地域では珍しく大雪に見舞われており昨日の昼から降り続け、今は50㎝ほどの高さにまで積もっている。
大雪のため屋外での作業をしている者はおらず、皆屋内での仕事をしている。
村の家屋は土にひび割れを防ぐ為に草などの植物を混ぜた物を壁として、片側を高く上げて傾斜のついた板の屋根に焼成レンガで作った暖炉が基本の形だ。
寒い冬の季節にはこの暖炉に薪をくべて暖をとり、農閑期のこの時期は大雪という天候に関係なく屋内での作業が多くなっていく。
母が織機を使い布を織っていく、足でペダルを踏み経糸上下の隙間を広げそこに緯糸の巻かれた杼を右手で滑らせるように投げ入れ向かい側を左手で受け取る。次に反対のペダルを踏み上下の入れ替えれた経糸をさっきとは逆の左手で投げ入れ右手で受け取り、この動作を延々と繰り返し布を織っていく。
この光景を見て木炭と板を探し自分が頭の中に思い描く形を図で描いていく。
翌日晴れた村内を雪がまだ多く残る道を鍛冶小屋を目指し歩いていく、昨日図を描いた板を片手に冷たい風が吹く中を急いでかけていく。
小屋の前までたどり着き大きな声で声を出す。
「おはようございますバーザクさん」
「開いてるぞ、勝手に入ってこい」
扉を開け中に入ると足踏み式フライス盤で斧を研磨しているバーザクがおり、私の姿が目に入ると
「寒い中どうした」
「作ってほしいものがあるので来ました」
「ちょっと待ってくれ、これだけ仕上げたら話を聞く」
そういって斧の研磨を始めたので小屋内を観察して見ると、今バーザクが使っている砥石が回転するフライス盤・糸鋸がついて上下方向に動くフライス盤・旋盤が秋が終わってから置かれるようになっていた。
足踏み式糸車のクランク機構を利用してフライス盤と旋盤を作れば作業効率が上がると考えバーザクに提案すると、興味を持ったバーザクが作り上げたものだ。
フライス盤と旋盤の違いは2つとも動力をもって動かすのは変わらないが、フライス盤は切削する砥石や刃物が往復運動や回転するのに対して、旋盤は加工したい物を回転させるなどして動かし加工していく点だ。
10分ほどして斧を置き私に向き直り
「作りたいものとは何だ、このフライス盤や旋盤のような便利になるような道具か」
「織機の部品なんだけど緯糸を通す時に使ってる杼を、こんな形で織機の両端に箱を作って箱の中に杼を入れて紐を引っ張ったら反対側の箱に飛び込むような装置を作って、あと杼の底側によく滑るように車輪もつけてほしいんだ」
そう言って図を描いた板を見せる。
「構造自体は簡単だから今からこの部分だけ作って試してみるか」
「任せるよ」
そう言うと1時間もしないうちに簡単な試作機を作り上げ何度か実験行い、軽く紐を引くと勢いが足らず杼が上手く滑らないことなどが分かりいくつか改良を終えた。
翌日我が家にバーザクがやってきて織機の改良をすると言うと、主に使ってる女性陣が了承したため早速作業に取り掛かり何度か試験を行い3時間ほどで完成した。
「クラン早速試してくれ」
「はいわかりましたバーザクさん、杼を通す時はこの紐を引っ張れは良いんですね?」
「そうだ紐を勢い良く引っ張るのがコツだ」
母が織機の操作を始めると初めは慣れない紐を引くという動作に戸惑いがあったのかぎこちなかったが、数分も経過すると速度が上がっていき前の2倍以上の速さで織っていく。
「まるで飛んでいくように杼が右に左に動いていきますね」
「そうだな、これは飛び杼という名前にしようか?」
「いい名前だと思うよ」
バーザクが私に向き問いかけてきたので、了承の意を込めて答えておいた。
飛び杼に関してはいろいろ調べたのですが日本語では動画などの説明がほとんどなくわかり辛いと思います。
fly shuttleと動画検索して海外の動画を見たほうがわかりやすいです。




