episode02
「叶夢、クラス一緒かなぁ!いっしょがいいなぁ、楽しいし、」
「私は別がいいけどね。だって疲れる。星海と一日中一緒にいたら体力持たないからね」
そうちょっとそっけなく言ったものの、内心ではいっしょならいいな、と思っていた。星海は心の奥底から一緒になりたい、という事を望んでいることを知ってしまった事からの照れ隠しなのだが。
そんなことを考えながらクラス分け票を眺める。叶夢はまず、自分の名前からゆっくりと探し始める。星海の名前をようやく見つけた、そのとき、隣から星海の「あ、俺と叶夢お名前あった」という小さな呟き。隣をm琉と、一気に明るい笑顔に変わっていく。
「やった、叶夢一緒のクラスだって!A組!」
「そっか……、また一年よろしくね、星海」
星海は叶夢よりもいち早く見つけたのか嬉しそうにしながら叶夢に声をかけた。“やったやった、叶夢と一緒だ”という心が聞こえ、思わず、少しだけ笑みがこぼれた。その様子を見た星海は悲しそうにしながら、下から覗き込みながら口を開く。
「ねー、叶夢ひどいよー、反応薄いよ?……叶夢はうれしくなかった?」
「星海、そうじゃない。うれしいよ」
いつもは自分よりも高い位置にある幼馴染の顔。久しぶりに自分よりも下にある顔を見つめる。ふと頭に手を伸ばして、頭をなでながら口を開く。星海は少し不思議そうにした後、顔を潤ませた。”幸せそうな面してるなぁ“なんて考えながら頭をなで続ける。
「……あのね、叶夢?俺ってさ、いつまで頭なでられてればいいの?」
「……私の気が済むまで」
「この耐性キープ意外ときついんだけどなぁ……。でも叶夢嬉しそうだからいいや」
叶夢が頭をなで続けていることに疑問に思った星海は少しだけ困惑したような笑みを浮かべたまま、質問を投げかけた。その質問に叶夢が答えると、少しだけ困ったような笑みを浮かべるも、すぐに叶夢の顔を見て他人が見ても分からないような変化を感じ取り、満足そうにしている顔を見つめながら同じく満足げに笑うのだった。
「そんな顔してない」
「え~、そんなことないのに~。……あ、でもそろそろ教室に行かないと、遅刻しちゃうよ、叶夢!」
「……もうそんな時間か、じゃあ教室行こうか、星海」
星海の言葉を真っ先に否定をすると、頬を膨らませながら口を開くが、時計が目に入ると、少し慌てた夜に声をあげる。それを聞いた叶夢は手のひらを返すように手を離すと、あっさりと星海を置いて教室へと向かう。
「えぇ?!叶夢ちょっと待ってよ、おいて行くなよ~!」
「はいはい。待ってあげるから、早く追いついて」
「もー、叶夢酷いよ。入学式の前に髪型ぐしゃぐしゃにするなんて」
「はいはい、全く星海は櫛も持ち歩かないの?」
星海は少しだけ髪の毛をいじりながら、頬を膨らませる。その様子を横目で見ながら鞄から櫛を取り出すと「ちょっと待ってね」と言いながら軽く櫛を通して整え始めた。
「はい、これでいいでしょ」
「おぉ……!」
整え終えた髪の毛を小さなコンパクトミラーで見せると顔を輝かせた。星海は元々わかりやすいというのもあるのだが、この顔は、叶夢じゃなくても、分かるだろう。そんなときだった。星海の瞳がきらきらといっそう輝いたことでそろそろ口を開く頃だと察する。声をそろえるように叶夢は星海と同時に口を開く。
『かっこいい!』
「……でしょ?」
タイミングばっちり、そろった状態で言うと、ものすごく目を見開いて驚いていた。口を泊尾悪とさせながら「なんでぇ??」と心からの叫びが聞こえ少し考えた後に口を開く。
「星海がわかりやすいからだよ、……ほら、早く行かないと遅刻するよ」
「え?え?あっ、待ってよ、叶夢ぇ!」
訳が分からないといった様子の星海をよそに叶夢は歩き始めるのだった。