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Happy new birthday〈1〉

たいへんたいへんお久しぶりです。


ここまで読みに来てくださった皆さま、本当にありがとうございます(⁎ᴗ͈ˬᴗ͈⁎)

久しぶりすぎて、投稿の仕方を忘れてしまったプリンです(^_^;)




まず最初に。


このシリーズはいつも章を書き終えてからの投稿を心がけていたのですが、今回一年以上かかってもまっっったく書き進めることが出来ず、このままだとあと一年、二年かけても完結しそうにないため、自分に発破をかける意味で未完結のままの投稿にふみきりました。

基本的には次話を書き終えた時点で前話を投稿する、という形にするつもりです。

つまり今は第二話まで書き終えていて、第三話を書いた段階で第二話を投稿することになります。

そして第四話を書き終えたら第三話を投稿する予定……。

ちなみに第三話はほぼほぼ手つかずです(;▽;)



そんな状態での投稿ですので、わざわざ読みに来てくださいました皆さまには申し訳ないのですが、次話をいつ頃投稿できるのか、全く分かりません。

完結までサクサクと読み進めたい方はここでストップして、完結設定になってから改めて読みに来ていただけますととても嬉しいです。


よろしくお願い致します(•ᵕᴗᵕ•)



風は冷たいものの冬にしては日差しが暖かい、そんなある日。


クラウスからの手紙ひとつで、もはや通い慣れてしまった道を辿りやってきた私は、奴の店の前で面妖なものを観察していた。


年中開けっ放しかと思いきや、寒くなってからはさすがに閉め切られるようになったドアの脇に貼り紙らしきものを貼り、一歩下がって腕を組んで見つめ、ため息をついてベリベリと剥がし、剥がした紙を見つめてまたドアの脇に貼り……ENDLESS。

黙って見ていたらいつまで続けるのだろう、と思ってたらすぐに気づかれた。隠れていたわけでもないから当然といえば当然か。

「うわっ、何してんだお前っ」

勢い余って剥がしかけてた紙がビリッと破け、顔をしかめるクラウス。


何してんだ……って、私を呼び出したのはあんたじゃん。









『話があるから、近いうちに顔を出してほしい』と書かれたクラウスからの手紙を受け取ったのは、三日前のクローの誕生日。

用件は書かれていなかったものの、以前からそこはかとなく匂わされていた『あらむ』の件だろう、と見当はついていたので、たいして気負うこともなく天気を見計らうこと三日。本日ようやくクラウスの店を訪れた。

過保護なクローは私が一人で出歩くのにあまりいい顔はしないが、ご近所とこの店だけは別。行先と帰宅時間さえ申告しておけば気持ちよく送り出してくれる。


街中にあるクラウスの店までは乗り合い馬車に揺られること約二十分。馬車を降りてから奴の店まで歩く途中にはお洒落な店が幾つも建ち並んでいて、店先の小物を見たり日毎変わるショーウィンドウの中を眺めたりするだけでも凄く楽しい。

以前クローがウェディングドレスを注文してくれたお店もその中の一つで、明らかに普段着ではないよそいきっぽいワンピースやドレスを扱っているその店のショーウィンドウは一際華やかだ。

地味顔の私には到底似合わないとチラ見だけで通り過ぎていたその店のドレスをまさか着ることになろうとは思いもしなかったし、今も分不相応だと分かってはいるんだけど、あれ以来何だか気になって前を通るたびにさりげなくも思いきり覗き込んでいく私なのである。

今日もそうやってショーウィンドウに飾られたふわふわシルエットの可憐な、親子お揃いのドレスをチェックしてきたところだった。




「あ、そうだ。こないだのプレゼント、ちゃんと渡しといたよ」


遠慮の欠片もなく店主を差し置いてズカズカ店に入り、店内の暖かさに息をつきつつ、私あてに預かったのだから一応報告しておくべきか、と顔を見ないまま告げる。

プレゼントというのは、クローの誕生日当日私あての手紙とともに託けられた例の薬のことだ。以前もらった時は一本だったが、今回はなんと三本も入っていた。

常習性もなく安全性も保障された品だというソレは、その効能からある特定の症状に悩まされる男性諸氏に、そしてあまり知られていない別の効能から一部の好事家に絶大な人気を誇る代物なのだ、というのは結婚披露宴が終わったあと、クローから聞いている。

だけど今回更にクローが教えてくれたところによると、その人気のあまり大半の商品が貴族のところへ流れるため常に品薄で、庶民には手に入りにくいことでも有名な薬らしい。

そして、どうしてクラウスがそんなに何本も手に入れられるのか不思議だ──と眉をひそめた彼は、小難しい顔で考え込んだ挙句、何故かそのまま棚の奥にしまい込んでしまったのである。

でもそのときの私は、ええそりゃあもう()()もいいとこだったからね、迂闊なことは言うまい聞くまいと見て見ぬふりをした結果、それっきりとなっているのだった。


私としてはさ、クローがどうしてもって言うなら別に飲んだって構わないんだけどさ。

でもアレってほら、自分からノリノリで使おうとは言い出しにくい大人な効果があるわけで。


──つまり、例の薬はまだ未使用で棚の中に眠ったままなのだ。



もちろんそんな微妙な薬に関するコメントを、私からクラウスに出す必要は全くないし、出したくもない。

そのため最低限度となった素っ気ない報告に、クラウスからは「おう、サンキュ」と軽い返事が返ってきた。

どうだった? みたいなセクハラ発言がなかったことにホッとしながら、奥のテーブル脇のツリーラックにショルダーバッグを引っ掛ける。

脱いだコートも同じところに引っ掛けつつ、「あんたこそ、さっき何してたの?」と聞くと、奴は先ほどの半ばまで破けた紙をため息混じりに差し出し、定位置の椅子にドカリと腰を下ろした。

私もその向かい側のいつもの椅子に腰掛け、テーブルの上で広げたそれの破れ目を合わせてみる。

すると『求人募集』と大きく書かれた下に『簡単なお仕事です』、『丁寧に教えます』等の文言がズラズラと書き連ねられていた。


「へー、とうとう募集する気になったんだ!」

ここは私にまで『働かないか』と声をかけてきたくらい、万年人手不足の店だもんな。

それなりの速さで読めるようになってきた文字を指先で辿りながら言うと、クラウスはまたもやため息をついた。

「二年ばかり前に募集したときにはろくなのが来なくてな。暫く募集かけるのはやめてたんだがやっぱりどうにもならんし、けどまたろくでもないのが来るかもと思うと踏ん切りがつかねえ」


そういえばクローが、なかなかいい人が見つからないらしいって言ってたっけか。


「ろくでもないのってどんなの?」


私が声をかけられたときはただ店番をしていればいいって話で、しかもどうせ暇だから魔石作りの内職をしていても可、という好条件だった。

貼り紙に『簡単なお仕事です』とあるからにはそのときと似たようなもんだろう。

私に出来ることなら大概の人には出来るんじゃないのか?


そう思って聞くと、クラウスは苦虫を噛み潰したような顔をした。

「一人目は要領の良さそうな奴でな。ざっと仕事を教えて一人で留守番させてみたら、ひと月も経たねえうちに店頭販売の売上をちょろまかされた」

「わあ……」

「なんでバレねぇと思うんだろうな、その日のうちに気付いたぞ」

「なんでバレたの?」

「売上の金額と在庫の数が合わなけりゃ一目瞭然だろ。追及したら白状したから即刻馘首にして役人に引渡した」


思わず雑多な商品が並ぶ店内を見回す。

ここにあるのは私の『小型家電』と『交換用魔石』を除けば、基本展示品ばかりのはずだ。二年前なら『小型家電』はまだないから、全ての在庫は裏の倉庫にあったと思われる。

まさか毎日倉庫の棚卸しをやってんのか?



「……えーっと、一人目ってことは二人目もいるの?」

「その次に雇ったやつは……」

クラウスはいい淀み、遠い目をした。

「返事はやたらいいやつだったな。やる気も見えたし……。けど、午前中いっぱいかけて一通り仕事教えて、次の日早速留守番を任せたら、俺が出かけた途端居眠りを決め込んでた」

「居眠り……。いつ誰が来るか分からない店の中で? ある意味強者だね」

「一週間ほど過ぎた頃に配達先で聞かされてな。まさかと思いつつ、翌日出かけたフリして戻ってみたら……」

「うん?」

そこで、とクラウスは大型の魔道具と魔道具の隙間を指さした。新型の業務用魔道具が展示されているその一角には高級感溢れる緋色の絨毯が敷かれている。

「枕使って毛布にくるまって寝てたから叩き起した」


「枕に毛布って……、それ居眠りじゃなくてガッツリ寝じゃん。つか、その装備は最初から寝る気満々だよね?」

「そいつ、他所での深夜勤務のあとここに来てたらしい。暇すぎて眠くて堪らなくなるとか巫山戯たことを吐かしたからその場で馘首にしたら、黙って枕と毛布を抱えて出ていった。けどな、いくらほとんど客が来ないといっても、それはやり過ぎだと思うだろ? せめてテーブルでうたた寝ぐらいにしとけってんだ」


仕事が出来るとか出来ないとかいう以前の問題だった。そしてうたた寝はセーフらしい。


「ちなみにその装備品(枕や毛布)は何処から出現したの?」

「店の予備の納品袋に隠してやがった」

クラウスが顎と視線で指した先にはクローがいつも使ってるのと似たような袋が二つぶら下がっている。

そうか、四次元袋は正式には納品袋っていうのか。

クラウスの前で迂闊なことを言わなくてよかった、笑われるとこだった。気をつけよう。

あとクローにはなんで教えてくれなかったのか抗議しよう。

私が内心密かに決意を固めていると、クラウスは鬱々とした声で言った。

「そんな有り得ねえのが二人も続いたら億劫にもなるだろうさ。──で、いっそギルドを通して斡旋してもらおうかとも考えたんだが、でもそれだと何かあったときギルドが責任を負ってくれる代わりに、斡旋料がバカにならん」


「ギルドって郵便の?」

前にリンダから手紙の出し方を教わったとき、確かギルドに依頼するとか言っていた。それを思い出したので聞いてみると、クラウスは呆れたように顔を顰める。

「郵便ギルドになんの関係があるんだよ、ギルドにも色々あるだろうが。俺が所属してるのは商業ギルドで、そこに加入してなきゃそもそも商売できない。ていうか、お前だってギルドには入ってるはずだぞ」

「え!? なにそれ初耳!」

「んなわけあるか、クローに聞いてみろよ。あの田舎町じゃあるまいし、サザナン(ここ)ではそういうとこきっちりしてるからな。無許可での商売は罰則対象だ」


なんてこったい。

帰ったらすぐさまクローに確認しよう。

そんな、モグリで商売してました、みたいな胡散臭い理由での罰則なんざくらいたくはない。

慌ててコクコクと頷く私に、クラウスは三度目のため息をついた。


推測するに、商業ギルドってのは日本でいう商工会議所のようなものなのかもしれない。加入必須って辺りはなんか違う気もするけど。



でもそれより何より気になることがひとつ──。


「あのさ、この店の求人募集ってさ、そんなに選り好み出来ないほど希望者が来ないの?」

元の世界の求人だと、応募者が何人もいてその中から一番条件に合う且つ良さそうな人を採用するってイメージだ。


「募集してるのは午前中だけの短時間だしな。仕事も留守番程度だからそんなに高給も出せねえし、一人前の仕事探してる奴なら論外だろ。しかも扱ってるもんが魔道具だから、その辺の店で売り子してるような姉ちゃんたちには専門知識がいるんじゃないかって敬遠されてる気がする」

「ふーん? でも人手が足りないのは午前中だけじゃないんだよね? それなら常勤で募集してさ、朝は店番してもらうにしても、昼からはあんたと手分けして外回りにも行ってもらえばいいんじゃないの?」


クラウスは昼に店を閉めたあと、配達に営業に魔石の交換にと走り回っている。それを知っているから言ってみると、やつは眉間に皺を寄せ、私を見た。

「お前はそれでいいのかよ」



「?」

何故そこで私が出てくるのかと首を傾げると、


「この店で扱う魔道具の魔石は、お前のを除けば全部クローが一手に担ってんだ。もしその誰かと二人で走り回った結果、魔道具の出荷量が格段に増えたとすると、あいつはこのままずっと魔石作りに忙殺される毎日が続くことになるぞ。お前、それでもいいのか?」

その言葉にこの数カ月、クローがいつもの倍の魔石を作り続けている姿が頭をよぎった。

私が鬼忙しかった二カ月はとうに過ぎ去っている。でもクローがクラウスのプロジェクトに付き合う形で二倍に増やしたあのノルマは、今やっと終わりが見えかけてきたところなのだ。

次の納品分が終わったらようやく元の生活に戻れるって楽しみにしてるのに、これが通常運転になるなんて絶対ダメ! ゆとり大事!


慌てて前言を撤回したら、やつは実に楽しそうに「売上が上がりゃあ俺は儲かるからそれでもいいけどな」と鼻で嗤いやがった。

だけど口を尖らせ膨れる私の前で、クラウスはたちまち憂鬱そうな顔に戻り、本日何度目かのため息がこぼれ落ちる。これは相当行き詰まってるのかもしれない。



クラウスは、店番さえ確保出来れば一日自由に動けるようになるから、あとは一人でどうにかなるのだと言う。その店は午前中だけ開けておけば充分。

そんなつもりで人を募集するのなら、やっぱり狙い目はしっかり一人前に働きたい男性よりも、そこそこ働ければいい女性だろう。

いや、でも女性には避けられてるのか。


不貞腐れたように椅子の背もたれにもたれかかったクラウスは、またしても大きなため息をついた。ため息の大安売りだ。

「もうあとふた月程で祭りの時期がくるだろ。それまでに何とか人手を確保したいとこなんだが……」

「あー、そういや一週間も続く大きなお祭りなんだってね」



近々、年に一度の大きな祭りがあると噂を聞いたのは最近のことだ。どうも商店街全体がざわついてる気がしたから馴染みのお店の奥さんに聞いたら教えてくれた。


学都として名高い王都、芸術の町モントアに続く第三の町サザナンは実は商の町として有名なのだという。

この国で手に入るものなら全てサザナンで手に入る、と言ったのはダイアナだったか。

そんな町で、祭りとは名ばかりの地味な建国祭を抜いてぶっちぎりで人気のあるこのお祭りは通称リボンフェスタと呼ばれ、百以上もある商店街が九つの地区に別れ、毎年それぞれがアイデアを振りしぼった企画で来客数を競い合うのだとか。


ただよく分からないのが、リンダに聞いたお祭りは見世物小屋(サーカス)あり、貴族が着るような豪奢な衣装をレンタルして(まとって)のファッションショーあり、吟遊詩人と劇団のコラボによる舞台だったりと華やかなイメージなのに対し、クローに聞いたお祭りは植木市とか骨董市、古本市といった、やや地味な印象のものだったことだ。

本当に同じお祭りの話をしてるのかな、ってくらい全然違う。


去年のお祭りは、私たちがサザナンで結婚の手続きをしたあとこちらへ引っ越してくるまでの、田舎町で暮らしていた二カ月程の間に終わってしまっていた。

だから私は今回のお祭りが初参加で、かなり楽しみにしているのである。


「そういえばさぁ、本当は『サザナン大商業祭』ってお祭りなんでしょ? なんでリボンフェスタっていうんだろ」

リンダもクローも、昔からそう呼んでるってだけで、その由来を知らなかった。

どうせクラウスも知らないだろう、と思いつつ問いかけてみると、やつは意外そうな顔をした。

「クローが知らないって? まさか……、いや、きっと、……そうだな。ただ単に興味がないんだろうな」

最後はため息混じりになったクラウスによると、商売人関係者なら誰でも知っていることらしい。




サザナンの百以上もある商店街には、一つずつ固有の名前がついている、とクラウスは言った。

例えば『朝焼けの足音』商店街だとか、『実りの露草』商店街だとかいう、ちょっと首を捻るような名前ばかりのそれは、実は全て色の名称だというのだ。


商店街に名前があるのは知ってたけど、それが色の名前だなんて今聞くまで考えもしなかった。

そもそも『実りの露草色』ってどんな色だよ。全く想像がつかない。


「さっきも言った、俺が所属してる商業ギルドの大ホールの壁に、サザナンのでかい地図が掲げられてるんだけどな、その商店街の部分がそれぞれの色で塗り分けられてるんだ。それを絡みあったカラフルなリボンになぞらえて、リボンフェスタと呼ばれるようになった」


「ああ、なるほどね、それでリボンなんだ。謎が解けてスッキリしたわ」

ちなみにうちのご近所の商店街は『若錆の燕の巣』商店街という。これまた、どんな色なのかさっぱり分からない。



「うちの近所でもやたら盛り上がってたみたいだけど、この店も何かやるの?」

「あ? お前祭りは初めてだったか。何かっつっても俺は基本裏方だからな。どちらかといえば前準備と終わったあとが忙しいが、期間中もそれなりにバタバタしてる。なのによりによって俺は今、空前絶後に忙しいんだよ。だから今年はいっそ、祭りの前後二週間くらい店を閉めちまおうかとも思うんだが、どのみち人手は要るんだし、出来ることなら誰か来てくれた方が有難いんだよなぁ」



一周まわって元の話題に戻ってきた途端、クラウスがまたしてもため息をこぼし、私にまでため息が伝染してしまった。

この条件で女性の応募がない、ってのがなんともつらいよね。


「……ここで店番するのに難しい専門知識なんていらないのにねぇ。わけわかんないこと聞かれたら、とりあえず連絡先と内容メモして『問い合わせ』って形で受けとけば、あとはあんたがやるんだしさ」

「お前はそうしてたもんな。けど、『あらむ』のときは数が多すぎて正直参ったが、もともと店まで来て商品の詳しい説明を聞きたがる客なんか一日一~二組がいいとこだし、そのやり方で充分なんだよ。あ、そういやちょっと前にお前の友だちが三人来てたぞ」

「ここに? 誰だろ」


友だちと言われれば心当たりは五人だ。その中の誰だろうと思っていると、クラウスが少し考え言った。

「子連れと活発そうなのとちまちましたの」

そりゃスージー&リサちゃんとカレンとミリアムで間違いないだろう。ダイアナは優等生タイプだし、リンダは見るからにおっとりしている。

「冷房箱と冷凍箱と掃除車に興味あるみたいだったな。展示品一通り全部見ていったが、その三つは値段とか性能とかもメモしてた。お前の友だちだから買うなら多少は値引きしてやるけど、もし型落ちとか展示品の処分物でいいならもっと安くするって伝えてやってくれ、そんとき言い忘れたから」

「あ、そんなのもあるんだ」

「店頭には出さねえけどな。年に一度くらい、ある程度まとまったらバザールで販売する。業者お断り一人一台の争奪戦で、直ぐに売り切れるから知る人ぞ知るってやつだ」

バザールといえば、この前私がいらない服を処分したあれか。古着から魔道具まで、本当になんでもありなんだな。

でもわざわざここまで見にきたくらいだし、そんな商品をもっと安く、しかも優先的に買えるなら喜ぶかもしれない。


「分かった、伝えとくね」

次のお茶会がもうすぐだな、と思いながら答えるとクラウスが更に言葉を継いだ。

「品揃えは毎回変わるから、そのとき欲しいものがあるかないかは運次第だけどな。あいにく今回の在庫に掃除車はなかったが、冷房箱と冷凍箱は展示処分品があるし、数は少ないが型落ちの新品も幾つか残ってた。まあ今年に限って言えば一番多いのが『あらむ』の付いてない洗濯箱だから、それをメインで捌くつもりで……」

と、そこでクラウスはやっと本来の用件を思い出したらしい。

「そうだ。今日はその『あらむ』の件で来てもらったんだった」



うんうん、予想通りですともさ。

ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

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