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タスけテ……

 美しく咲いている。白い白い、それは清純な花。


 また会いたい。僕は、僕は君だけを愛していたい。

 そんな想いをも、大きく僕は振り払う。そして僕は、孤独旅へ出た。

 もう会わない。君は、君だけは幸せになって欲しいんだ。

 でもいつか、いつか幸せに出来る日が来るならば。僕はまた、この場所へ帰って来るよ。


 ええ、再会を誓いましょうね。

 貴方が私の為に行きたいというのならば、私は止めたりしないわ。

 それは何年も育てて固めた貴方の想い。それは私のことを想ってくれる、貴方の優しさ。決して、そのどちらも無駄にはしない。

 それでも、永遠にさよならは寂しいでしょう? 何十年でも何百年でも、私は貴方を待っている。


 地獄花なんて、そんな呼び方しないで欲しい。

 恐れられていると嘆いてしまう。そしてその嘆きは、花を更なる血の色へと染めていく。

 死人花なんて、そんな呼び方しないで欲しい。

 よく傍で行われている、葬式。それを眺めて、ゆっくりと罪の花を咲かせていく。



 諦めたりしない。僕は、僕は君のところへ戻るからね。

 そんな想いが、溢れ出してしまいそう。それでも溢れないように胸に秘め、僕は孤独旅へ出た。

 諦めたい。これならばいっそ君に、君に嫌われることが出来たのならば。

 でも僕は、やっぱり君に嫌われたくなんてない。いつか強くなれたときに、僕はまた帰って来るよ。


 ええ、再会を誓いましょうね。

 たとえ貴方があの世へ行ってしまったとしても、私はきっと追い掛けるわ。

 溢れ出す私の想いが、溢れ出す私の欲望が、全く抑えられないよ。

 いつでも、私は貴方のことを想っている。


 地獄花なんて、そんな呼び方しないで欲しい。

 嫌われたくない。一途な想いが、悲しくも血の色へと染まりいく。

 死人花なんて、そんな呼び方しないで欲しい。

 偶然、遺体の隣に咲いていたと言うそれだけのことなの。


 地獄花なんて、そんな呼び方しないで欲しい。

 死人花なんて、そんな呼び方しないで欲しい。

 不吉な花なんて、そんなこと言わないで欲しい。

 天上の花。そう、めでたき花とお呼びなさい。

 恐れられるのが嫌で、そう繰り返した。その強い思いが、呪いの力を帯びていく。


 生まれ変わっても、いつか廻り会いたい。

 悲しい思い出なんかじゃないから。君と過ごしたものを、悲しい思い出になんかしたくないから。

 だからこそ、また逢う日を楽しみにすることが出来る。


 地獄花なんて、そんな呼び方しないで欲しい。

 恐れられている。それを嘆いて、幸せなことすら血の色に染めていく。

 死人花なんて、そんな呼び方しないで欲しい。

 花が殺した訳ではないんだ。そうじゃなくて、花に触れて死ぬ人が多いだけ。偶然なの。


 死なないでよ。もう、もう置いて逝かないでよ。

 願えば願うほどに、その強い想いが、呪いへと変わって行ってしまう。

 そうしてまた、そうして……まただ。同じ過ちを繰り返してしまうんだ。


 美しく咲いている。真っ赤な真っ赤な、それは罪の花。

 いつの間にかなくなってしまっている。あの清純な白は、どこへ行ってしまったのでしょう。


 ダれか、タスけテ……。


 繰り返される罪。嘆きの夜が、また訪れてしまった。

 大きく青く、怪しく輝く。とても綺麗な月夜。それは、真っ赤な花が咲き乱れるとき。


 タスけテ……。

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