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僕の最期

 君は楽しそうに海辺を翔ける。それを僕も楽しく追い掛ける。これは、楽しい楽しい鬼ごっこ。

 何のドラマで見たのやら。再現していくのは、なんだか楽しいものですね。

 必死になって、君は翔けていく。それを僕は笑顔で追い駆ける。これは、愉しい愉しい鬼ごっこだよ。

 ほら、どうしたの? 君も笑ってよ? 鬼ごっこはこんなにも楽しいんだからさ。


 なんて大きな太陽なんだろう。ゆっくりと沈んでいく、海が真っ赤に染まっている。なんて綺麗なんだろう。

 待っていてね? すぐに、君のことも紅く染めてあげるよ。ああ、愛おしいよ。


 どうして? ねえ、そんなに怖い顔をしないでよ。

 鬼ごっこくらいはしたことあるでしょ。幼い子供がするような、とても楽しい遊びさ。

 どうして? ねえ、そんなに嫌がるなんて酷いじゃん。別に、僕はどんな君でも愛しているよ。

 僕はこんなにも君が大好きなんだ。それなのに、ねえ、ねえ、どうして?



 君は真面目な顔をして未来を賭ける。その提案に僕は頷いた。これは、楽しい楽しい取引さ。

 一体、何の話を見たのやら。再現するというのは、予想以上に楽しいものですね。

 必死になって、君は悩んでいる。それを僕は笑顔で眺めている。これは、愉しい愉しい取引なのさ。

 ほら、どうしたの? 君も笑ってよ? こんなにも楽しい取引なんだからさ。


 いつの間にか満潮になっている。物凄い高波だね。まるで、海が機嫌を損ねているようだ。呑み込まれてしまいそうだよ。

 早くしてよ。いくら君でも、待ち切れないよ。僕も機嫌を損ねちゃいそうだ。飲み込んであげようか?


 どうして? ねえ、そんなに暗い顔をしないでよ。

 簡単な駆け引きじゃあないかい? 笑顔で楽しめばいいでしょ、楽しい遊びさ。

 どうして? ねえ、そんなに逃げるだなんてそんなの酷いじゃん。

 僕はこんなにも君を愛しているんだ。それなのに、ねえ、ねえ、どうして?


 あっはっはははあははあっはははあっはっは


 どうして? ねえ、そんなに怖い顔はしないでよ。

 苦しみから解放してあげるんだから、喜んで欲しいくらいなのに。

 どうして? ねえ、そんなに嫌がるなんて酷いじゃん。

 僕はこんなにも君が大好きなんだ。それなのに、ねえ、ねえ、どうしてなの?


 本当に大好きなんだよ。本当に愛しているんだよ。この気持ちは、確かなものなんだ。

 もう他の誰にも渡さない。誰も君に触れることは許さない。誰一人として、君を傷付けるものは許さない。君の紅い血を舐めてもいいのは、この僕だけなんだから。

 君は僕のものなんだよ。その代わりに、あの海もあの星も、全部全部君だけのものさ。

 笑顔で僕が君を眺めていると、君はなんだか鬱陶しそうな顔をした。そして美しい脚を、美しい脚に留まっていた蚊を叩く。君の手には、綺麗な血が付いていた。

 僕の最期。

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