青空の下
少しずつ少しずつ、蕾から花に変わって来る時期。ここでこの花を見るのは、もう六度目となるんだ。
大きな大きな桜の木が聳え立っている。あまりに大きくて、校庭を散った花びらで埋め尽くしてしまいそうなくらいだな。また日が経ち寂しさが募っていき、蕾があった日すら懐かしく思えるようになった。
少しずつ少しずつ、卒業の時が迫って来てるんだね。ここで君と話をするのは、もう最後となってしまうんだ。
小さな小さな僕の手。あまりにちっぽけで、君を追い掛けることすら出来ないよ。
六年前、あんなにもピカピカ輝いていたランドセル。今となっては、こんなに汚れちゃっていて。
六年前、あんなに純粋に輝いていた僕の瞳。今となっては、こんなに汚れちゃっていて。
毎年、先輩が去って行った。そして遂に、僕たちの番が来たんだね。
この時間は永遠に続く。と、幼い僕は信じていたけれど。
毎年、先輩に別れを告げた。別れを悲しむ姿を見て来た。そして遂に、僕たちにもお別れの時が来たんだね。
卒業後。離れ離れになってしまっても、僕は君のことをずっと応援してるよ。
一字ずつ一字ずつ、一枚の紙に文字を綴っていって。卒業文集。紡いできた思い出を、君と共有するんだ。
優しい優しい君の目。僕の大好きなその目が、終わりを告げるかのように、悲しく揺らいでいた。
六年間、あんなにもワクワクしていた毎日。それすら、今は地獄に感じられていて。
六年間、あんなに僕と一緒に明日を楽しみに待ってくれた僕の枕。それすら、今はこんなに濡らしちゃっていて。
毎年、先輩が去って行ったんだ……。そして遂に、僕たちの番が来たみたいだね。
この時間が永遠に続いたりはしない。頭では理解していた、知ってはいたんだけれど。
毎年、泣いて別れを惜しむ先輩を見て来た。そして遂に、僕たちにもお別れの時が来たみたいだね。
中学での新しい出会い。その中でも、僕は君をずっと応援してるから。
一つずつ一つずつ、歳を刻んで行って。想えば、もう十二にまでなっていたんだね。
幼い小さな頃の写真が、その笑顔が逆に今の僕には悲しく思えて。子供だった僕も、少しは大人になっているんだと思えた。
六年前から六年間、あんなにもキラキラ輝いていた切ない夢。今となっては、こんなに汚れちゃっていて。
六年前から六年間、あんなに純粋に輝いていた僕の瞳。今となっては、こんなに汚れちゃっていて。
毎年、先輩は去って行った。そして遂に、僕たちの番が来たんだね。
永遠に、この時間の終わりは訪れない。そんな儚い願いも、校舎にそっと置いて。
毎年、別れていく先輩の姿を見て来た。そして遂に、僕たちにもお別れの時が来たんだね。
どこかで君が立ち止ったときには、あの歌を思い出して。君は夢を追い続けて。
いつか、またどこかで会おう。別れを惜しみ泣きながらも、僕と君は約束を交わし合った。
いつか、またどこかで会える筈だから。なんとか無理矢理に微笑み合って、僕と君は約束を交わし合ったんだ。
どこまでも続く、どこまでも繋がっている。だから会えるよ。
青空の下。




