その日、少年は
「それじゃあ帰ったらヨシん家集合な!」
「じゃーなー!!!」
その日もいつもと変わらなかった。
暇な時間を友達と、皆が帰ったら家族と過ごす。
僕はそれが変わることを望んでいなかったし、正直何も考えてなかった。
でもその日、僕の住む世界は大きく変わってしまった。
「ねえ、なんだかうるさくね?工事でもやってんのかな。
「そんな話聞いてないけど・・・」
「でも言ってるよな。ゴゴゴゴゴって・・・」
「あれ?どんどん大きくなってる。」
「気のせいじゃね?」
「いや、絶対そうだ・・・なんか、近づいてきてるみたいな。」
そしてその時。僕等の目の前を、真っ白な光が覆った。
少し遅れて、耳を抉り取るような、とてつもない大きな音がする。
体が熱かった。痛くて痛くて、涙がこぼれそうだった。
地面が揺れている。あまりの衝撃に、思わず尻餅をつく。
しばらくして、光は消え、音は鳴り止んだ。
でもそんな物よりもっと怖いものを、その時僕は見た。
それはコンクリートの下敷きになった、僕の「友達だった物」。
「・・・ケンちゃん?」
呼びかけても、返事もしない。
当然だ。顔が潰れてるんだから。生きてる訳ない。
急に力が抜けた。そして、あることに気づいた。
周りにたくさんあった家が、どれもこれも壊れている。
それに所々から悲鳴が聞こえる。
まるで何処か違う世界に来たみたいだった。
そしてようやく、僕はこの後何をするべきかを考えた。
学校へ戻る?学校も壊れてる。
助けを求める?でも周りに人は居ない。
「・・・家に帰らなきゃ」
少し考えれば分かった筈だった。自分の家だって、多分壊れてる。
周りを見ても、1つも無事な建物なんて無いのだから。
でも何故か僕は淡い希望を持って、僅かに見える道路を辿って家まで帰った。
結果的に、その行為は僕をもっと苦しめる事となった。
「・・・何、これ」
僕の家は、見事なまでに壊されていた。
さらにその瓦礫の下からは、もう黒ずんでいる血が流れている。
血の元には・・・はみ出した手。
その指には冷酷にも、母がいつも大事に付けていた指輪がはめられていた。
「・・・お母さん!」
呼びかけるが返事は無い。
必死に瓦礫をどかそうとした。けれども非力な僕の力では、びくとも動かなかった。
その時初めて僕は自分の非力さを恨んだ。
「クソォォォォォォォ!!」
泣いた。今までで一番、これ以上無いくらいに泣いた。
それでも何も変わらない。母が助かる訳でもない。
とにかく混乱した僕は、必死に大声で助けてと叫んだ。
でもその声は、同じような人々の声に入り混じって、かき消されていくだけだった。
もう何も無い。
友達も失った。家も失った。母も失った。大事な思い出の本も、父が買ってくれたゲーム機も、全部。
その日、少年は全てを失った。