表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

トオルくんとメガネ

作者: 和乃きり


 僕には、トオルくんという友人がいます。トオルくんは、明るくて元気で楽しい人です。あまり友人が多い方ではない僕ですが、トオルくんは、そんな僕を何かと気にかけてくれます。

 休み時間になり、今日もトオルくんは僕の席に会話をしに来てくれました。


「なあ、メガネ」

「なに? トオルくん」

「俺、凄いことを思いついちゃったんだけど」

「ほんと? 凄いじゃん、トオルくん」

「え?」

「え?」


 凄いことを思いついたらしいトオルくんを褒めたら、トオルくんは案の定、疑問を浮かべています。

 なんで、自分が褒められたのかを分かっていないのでしょう。トオルくんは褒められて伸びるタイプです。どんな些細な事でも褒めておけば、そのポテンシャルを発揮します。


「まだ、何も言ってないけど……」

「あぁ、うん。トオルくん、凄いことを思いついたんでしょ? だから、それに対して凄いじゃんって言ったんだけど」

「え?」

「え?」


 ふふっ、ほら、段々とそのポテンシャルを発揮してきました。


「あ〜……」

「いや、だからね、トオルくんは、凄いことを思いついたんでしょ? それに対して、内容うんぬんじゃなくて、思いついたことに凄いねって言ったの」

「あ〜……うん、なるほど。ありがとう?」

「うん、どーいたしまして」


 恐らく、まだよく分かっていないのでしょう。お礼の言葉のトーンが少し右肩上がりです。

 トオルくんのなるほどは、なるほどではない。自分は分かっていますよ、という他者に対してのアピールと自己に対しての暗示をかけているのです。これまでの研究結果から導き出された暫定的な答え。


「…………」

「…………」


 そろそろ、良い頃合いですね。ここで、仕掛けてみましょう。最後の仕上げです。


「それで、どんな事を思いついたの?」

「え?」

「え?」


 食いつきましたね、恐らくですが。確認の意味も込めて、もう一度……。


「いや、だから、トオルくんは、凄いことを思いついたんだよね? それを教えてよ」

「あ〜……忘れた」


 美しい……。芸術の域に達しています。やはりトオルくんは興味深い存在です。まだまだ研究の余地ありですね。


「そっかー、じゃあ、しょうがないね」

「おぅ、だな」


 会話に一区切りがついた頃、休み時間の終了を告げるチャイムがなり、トオルくんは自分の席へと戻っていきました。

 今回も、とても良い結果が出せました。トオルくんのポテンシャルは、まだまだ底が知れないですね。トオルくん、いつも話しかけに来てくれてありがとう。君は僕にとって、かけがえのない友人だよ。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ