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シニアの戯れ95
馬鹿野郎、わしがボケてたまるかと、じいさんは言った。
私はじいさんに本を手渡した。
「何かつまらなそうな本じゃの?」
私は自虐的に笑い言った。
「うるさい。選別はつまらない物と相場が決まっているじゃないか?」
じいさんがまともに笑い言った。
「まあ、有り難く頂戴するわ。でもわし、ここのところ薬が強くてな。頭がボケてしまうんだ。でもその薬飲まねえとな、脳梗塞治らないし、困ったものじゃよ」
私は首を傾げ尋ねた。
「降圧剤か?」
じいさんが頷き言った。
「そうじゃが、まあおしっこをよく出す薬でもあるわけじゃが、わしには合わないな」
私はしきりと頷き言った。
「血圧が高いと、腎臓やられるからな。それは仕方ないよな」
じいさんが辛そうに顔をしかめ言った。
「まあ、そうじゃが、この薬飲むとボケ老人と間違われるから、わしは嫌なんじゃよ」
私は愉快そうに笑い言った。
「何だ、じいさん、薬でボケていたのか。本当にボケたんじゃなかったんだ?」
じいさんが微笑み言った。
「馬鹿野郎、わしがボケてたまるか」




