シニアの戯れ93
じいさんがまともな口調で、あんたから今度、こないだの子にお礼を言っちゃくれないかと言った。
じいさんに電話が繋がった。
「ひひひ、入院していたんじゃよ。まあ俺の事は心配するな。あんた今度病院でお茶でも飲むか?」
私は尋ね返した。
「じいさん、病院ではなく、喫茶店だろう?」
じいさんがひひひと笑い答えた。
「そうじゃそうじゃ。今度わし散髪に行くからな。その時喫茶店で口笛でも吹いてな、お茶しようか?」
私はいたたまれなくなり、言った。
「じいさん喫茶店ではお茶飲むのだろう。口笛吹くのじゃないだろうが?」
「そうじゃな。喫茶店ではお茶を飲むんだな。ひひひひ」
「じいさん、しっかりとしろよ!」
「わしはしっかりとしておるよ。ひひひひ」
「じいさん、本当に頼むから、そのひひひという笑い声止めてくれよ。頼むから?」
「わしはひひひとなんか言ってないよ。ひひひ」
私は涙を堪え言った。
「じいさん、しっかりとしてくれよ!」
じいさんはひひひと笑い電話を切った直後、電話を掛けて来た。
「もしもし、どうしたんだ、じいさん?」
じいさんがまともな口調で言った。
「こないだの子に楽しかったと、あんたからお礼を言ってくれないか?」




