シニアの戯れ76
半痴呆の福島じいさんがひひひと笑い、私の奨めに乗らない。うーん、困ったものだと私は天を仰ぐ。(*_*)
留守電に入れた後、次の電話にじいさんが出た。
私は用件を手短にまくし立てたのだが、じいさんは素っ頓狂な声で応じる。
「何だ、あんたの店の女は駄目だ。口笛もまともに吹けない女しかいないじゃないか、あーん?」
私は眉をひそめ尋ねた。
「何だ、その口笛と言うのは?」
じいさんが、ひひひと笑った後言った。
「あの時の声だよ、あの時のな」
「あの時とは何の時だ?」
「じゃから、最中の声じゃよ」
じいさんの言わんとしている意味が私はようやく閃き言った。
「よがり声の事か?」
「そうじゃよ」と言った後、じいさんが又ひひひと笑ったので、私はすかさず返した。
「よがり声はよがり声だろう。そんなの口笛とは言わないぞ、じいさん?」
「わしの田舎では口笛と言うのじゃよ。ひひひ」
私は少し腹を立てたのだが、それを我慢して尋ねた。
「そんな方言聞いた試しがないぞ。まあ、何でもいいから、とにかくいい子なんだ。遊んでくれよ、じいさん、頼むよ?」
じいさんが一度口笛を吹いた後答える。
「わしの田舎ではそういうのよ。ひひひ」
私は怒鳴った。
「じいさん、ボケていないで、遊ぶのか遊ばないのか、どっちなんだ?!」
「わしはボケてなんかいないぞ。わしを馬鹿にするなら遊ばない。金も無いしな」
そう言ってじいさんは素っ気なく電話を切った。




