シニアの戯れ118
今度の担当は目敏いからな、少し遊ぶの控えるよと、じいさんは言った。
じいさんが頑固一点張りに引っ越す作業に勤しんでいる最中、私とじいさんの交流は絶たれた。
私は電話するのも控え、成り行きを見守るべく沈黙を守った。
そしてその沈黙はじいさんの引っ越しの挨拶という形で破られた。
その第一声はと言うと(笑)
「あんたの小説つまらねえな。何を言いたいのかさっぱり分からねえぞ」
私はじいさんの毒舌に笑った。
「まあそんなものだろう。所詮俺はろくでなしだから、ろくでなしの事をテーマにしているんだ、じいさん」
電話の向こうで、じいさんが愉快そうに笑ってから言った。
「ろくでなしについて書いた割にはろくでなし感が出てねえぞ」
私は笑い受け流すように言った。
「じいさん、担当は変わったのか?」
「ああ、変わったよ。いい人だ」
「そりゃ良かったな。病院は?」
「病院は変わらないが、薬は変えて貰ったわ」
「ボケ出ないのか?」
「おお、出ないぞ」
「そりゃ良かったな。ところでじいさん今度はいつ遊ぶ?」
じいさんが言った。
「今度の担当は目敏いからな。あんたのところで遊んでいるのがばれたらまずいし、少し様子を見るよ」




