第一話 ウサギ生まれる
ハメで書いてたのが溜まってきたのでこっちにも流してみる。
感覚が繋がる。
五感が生まれる。
全身の神経が繋がったような錯覚すら覚え。
閉じられたマブタを開く。
瞬間、自身はそこに生まれた。
「おぎゃあ…………なーんて」
戯言を呟き、口元を歪ませる。
開かれた視界から差し込む光の眩さに数度瞬きし、すぐに順応した瞳が視界に入る光量を抑え、ようやく視界がクリアになる。
「は…………?」
そこは一面の荒野だった。
ぺんぺん草一本生えない不毛の大地とでも言うべきか。
でこぼことした岩場、暗い空、瞬く星々。
そして空の彼方。遠く遠くに見える青い星。
「なるほど…………月・か」
知識でなく、本能が理解した。
そして、それを理解した瞬間。
「がぁぁぁぁ!! ああああああぁぁぁぁぁ!!!」
焼け付くような痛みが自身の両目を襲う。
咄嗟に両手で目を抑え、その場で蹲る。
イタイイタイイタイイタイイタイ。
どうにもならない目の奥の痛みに、脳が焼き切れそうな思いすらする。
このまま目玉を刳り抜いてしまえたら楽だろうに…………そんな馬鹿な思考が一瞬脳裏を過ぎり。
十数秒ほどで痛みが治まる。
恐る恐ると目をゆっくりと開き…………驚嘆する。
歪んでいる。
世界が、視界が、目に見える全てが。
輪郭が歪んでいる。色は滲み、あらゆるものの境界線が混じる。
「っ!!」
咄嗟に目を閉じる。
黒に包まれる視界に、けれど先ほどの光景が見えないためほっとしてしまう。
何だ今のは!? そんな内心の呟き。
動揺する心中を鎮めようとするが、あまりもおかしな光景に胸の動悸は治まらない。
もう一度心を静めようと深く息を吸い、吐く。
何度か繰り返す内、少しだが冷静さが戻ってくる。
そんな時、ふと脳裏に浮かぶものがある。
狂気を操る程度の能力。
張り付いたように脳裏から離れないその言葉を心中で反芻し…………理解する。
今度は本能などと言う生易しいものではない。
心が、頭が、体が…………魂が知っている。
それが自身の存在だと、自身の全てが叫んでいる。
気づいてしまえば、あまりにも当たり前にそれは自身の中に馴染み、解けていく。
目を開く。
視界は…………正常だった。
「………………これで良い」
一つ呟き、空を見上げる。
さきほどとはまるで別物の空。
けれど全く同じ空。
なるほど、これは興味深い。
「ああ…………ところで」
さきほどから実はずっと疑問だったのだが。
「私は誰だ?」
Iわたしは誰だ?
何を持って Iわたしとする?
Iわたしがoneselfわたしであることの証明とは何だろうか?
我思うゆえに我あり…………素直に受け取るならば私がIわたしであると認識していることこそがoneselfわたしであることの証明になるのだろうか?
などと言っても、偉大なる哲学者様の残した言葉の意味は全く違うのだが。
「なんて…………戯言かな」
全く持って。言い訳のしようも無いくらいに。
端的に言うなら。
私には前世の記憶と言うものがある。
その前世の私を唯一の私とするのか?
けれど前世、と言い切ったように。以前の私が私であると言う意識は薄い。
だというのに前世の私を今の私とする、とはおかしな話ではないか。
だが完全に無関係であるか? と聞かれるとまた話は違う。
今の私は、以前の私の影響を多分に受けた人格パーソナリティを形成している。
だとするなら、前世など関係ない、と割り切るのもまた何か違う。
そう、例えるなら、前世の私を見て今の私が育った…………そんな感じだろうか?
だとするなら、私とは一体どこにあるのだろうか?
「うーん、なんて哲学」
フィロソフィーと言う言葉の響きが良い。
なんだかちょっぴり頭が良くなった気分。
と言うことで。
「私は私と言うことで決定」
一体何がどうなってそうなったのか。
さてはて、自分でも分からないのだから考える必要も無い。
顔にかかる髪をはらりと手で払い、不毛な月の大地を歩く。
歩いた…………はずだった。
一歩踏み出し、ふと気づく。
「私って一体何?」
前世の私は人間だった気がする。
特筆すべき人生でもなかったので割愛。けど私の人生はオンリーワン。えっへん。
私以外が私の人生を歩むことはできないのだから、私の人生がオンリーワンであることは明白である。
明白って言葉が格好良い。あとオンリーワンって言葉を使うとなんだか特別度指数が上がる気がする。
いいよね、特別度指数。でも特別度指数って何さ?
まあそんな思いつきワードは置いといて…………でもなんだか素敵なのでメモメモ。
話を戻すけどかんわきゅうだい。
前世の私は人間。でも今の私は人間ではないみたい。
そもそもなんで月にいるんだろう?
え? なんで人間じゃないって分かるかって?
勘。
いやいや、嘘々。
簡単だよ、とっても簡単。
だって、頭から兎の耳が垂れてるから。
そうそう、兎さん。ロップイヤー。可愛いよねロップイヤー。ところでロップイヤーってどんな姿してるの? いやいや、可愛いってのはつまりあれだよ、ロップイヤーって言葉からして可愛いよね、って話であって、私は見たこと無いよ。それと普通の耳もあるよ、ちゃんと。
そんなどうでもいいことは置いておいてかんわきゅうだい。
あと兎ちゃん尻尾ある。兎さーん。
もこもこだけどちょっと短い。っていうか、なんで上手い具合にスカートに尻尾出すところがあるんだろう?
ていうか、何故に私はブレザー?
ぐるぐる。思考中の擬音語。
ぐるぐるぐるぐる。昔グル○ルって漫画あったよね。ガン○ンで。
ぴこーん。電球点いた。いや、思いついた……じゃなかった、思い出した? 理解した?
まあ何でもいいや。
玉兎。私はそう呼ばれるものらしい。不思議と思い出せた。
玉兎って言うのは、なんと。月の兎らしい。
本当にいたんだね、月に兎って。
餅ついたりするのかな?
まあどうでもいいけど。
つまり私は兎さん。
「にゃー」
それは猫さん。
兎ってどんな鳴き声なんだろう?
その時、ふと何かが聞こえる。
「……………………ん?」
…………ァ。
……………………ェ。
声。そう、声だ。
………………♪
………………ッ!!
楽しそうな声と、怒るような声。
それが、近づいてくる。
さて…………どうしようか?
少し考え。
「~~~♪」
鼻歌交じりに歩き出す。
そうして彼女たちに出会うのは…………その後の話。
内容がカオスな理由? 作者が徹夜だからに決まってる。