まどろむ冬
普段と変わらないようにしていたのに
いつだって君は気が付いてしまう。
《まどろむ冬》
学校が冬休みに入り少ししてから、寒い日が続くようになった。
氷のように冷たい空気が、更に寒さを助長させる。
部屋は暖炉に火を入れているため、温かく過ごしやすい。しかし、一歩外に出れば、すぐに身体が冷えてしまう。
冬休みに入る前は元気だったアヤも、ここ数日は普段に比べたら静かで、大人しく温かい部屋でのんびり過ごしていることが多かった。
そんなアヤの様子が気になったタクトは、ソファーでくつろぐ彼女に声をかけた。
「大丈夫?」
「大丈夫だよ? どうして?」
「なんだか、元気がない気がしたから」
「そんなことないよ」
アヤはそう答えるが、その声にはいつものような覇気がないように感じられた。
「そう? ならいいんだ」
タクトは納得すると、アヤの傍を離れた。
せっかく近くまで来てくれたのに、すぐに離れられてしまい淋しさを感じる。強がらずに、素直に言えばよかった。そう思うが、もう遅い。
タクトは部屋を出ていってしまっている。
自分が招いたことではあるが、落ちこんだ。
先程の行動を後悔していると、タクトがマグカップを二つ持って戻ってきた。
アヤが遠ざけるような物言いをしたにもかかわらず、再び隣に来る。そして、手にしていたマグカップを一つ、アヤに手渡してソファーに腰かけた。
アヤは無言でそれを受け取ると、ゆっくりと一口だけ飲んだ。
丁度良い温かさで、ほんのりと甘い味わい。思わずほっと息が零れる。
タクトが淹れてきてくれたのは、ホットミルクだった。
アヤがゆっくりとホットミルクを飲んでいる間、タクトも隣で静かに自分の分を飲んでいた。
会話はないが、静かで穏やかな時間が流れていく。アヤがホットミルクを飲み終えて、マグカップをテーブルに置く。すると、タクトも空になったマグカップを横に並べ、後ろからアヤを抱きしめた。
「……何も聞かないの?」
小さな声で恐る恐る尋ねるアヤに、タクトは優しい声で答える。
「うん。話したかったら聞くよ?」
アヤは、ゆっくりと首を横に振った。
特に何かがあったわけではない。だから、何も話せないし、話すこともない。ただ、気持ちが不安定になって沈んでいるから、いつもより大人しくなってしまうだけ。今の心を言葉にするのは難しいから、タクトの対応に救われていた。
一人で静かにしていたいけれど、心を許した人のぬくもりは感じたいという矛盾。会話はいらないけれど、構ってほしい。そんな我儘を、タクトは察してくれているようだった。
タクトはアヤを抱きしめながら、優しい手つきで頭を撫でる。
それに安心したアヤは、そっと目を閉じた。
後ろから伝わる優しいぬくもりを感じていると、少しずつ意識が溶けていく。
うつらうつらし始めたアヤに、タクトはそっと声をかける。
「いいよ。寝ちゃいな」
うとうとと飛びかけの意識を邪魔しないように囁かれ、返事をしようと思っても、瞼が重くて口も開かない。温かな優しさに包まれたまま、夢の世界へと落ちていった。
まだ私が学生だった頃、冬になると気持ちが不安定になって、気分が沈む。そんな時に支えてくれたのは、友達で。その友達は、何も言わず私のそばに来て頭をぽんぽんと優しくたたいて去っていく、というのをしてくれていて、それが救いでもあった時期がありました。何も言っていないのに、私の状態を察してくれていることが嬉しくて、そんな友達がいることに幸せを感じていました。
そんなことを思い出していたら、書けた小話がこれです。
タイトルが思い浮かばなかったので、書き終えて考えて浮かんできた候補のうち、頭から離れなかった言葉をタイトルとして付けました(笑) 直感とも言います(笑)
またゆっくりと話を書いていきたいです。




