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side story  作者: 夜音沙月
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【理解者たちのティータイム】 大きな子ども

 冬休みに入って数日経ったある日、ハルルが城へ遊びに来ていた。

 ちょうどおやつ時でもあり、アヤとタクトとハルルの三人は応接間でお茶をしていた。

 しばらく談笑し、会話が落ちついて少ししたころ、アヤがうつらうつらし始めた。

 暖炉で程よく暖められた部屋は眠気を誘う。それに、アヤは夏に封印されていた魔力を取り戻したばかりでまだ時折ではあるが睡眠を必要とする日があった。心を許している二人と一緒にいるせいもあり、安心していたのだろう。緩やかに訪れた睡魔に身を委ねようとしていた。

 それに気付いた二人は、アヤをそっと見守るように何もせずただお茶を飲んだり茶菓子を食べたりと自由に過ごしていた。

 しかし、いつになってもアヤは眠ろうとしない。時間が過ぎていくにつれて、そわそわしだしてこのままじゃ眠れなさそうだなと思ったタクトは声をかけた。


「アヤ、そっちに行ってもいい?」


 いつもならタクトがアヤの隣に座ることが多いなか、この日は珍しく三人とも別のソファーに腰を掛けていた。

 眠たいのに眠れずにいるアヤは、自分でも苛ついて不機嫌なのを感じていた。だから、今タクトが隣に来たら当たってしまいそうで、迷惑をかけてしまうのが目に見えていた。本当は隣に来てほしいが、自分の行動で相手を困らせてしまう。迷惑だと思われたくないし、嫌われたくもない。そう思うと、タクトの問いに答えることができなかった。

 いつまでも返事をせずにいるわけにもいかないが、自分では答えを出せずに俯く。

 そんなアヤの気持ちを察したタクトは、一瞬だけ困ったような笑みを浮かべて行動に出た。


「隣、座るね」


 そう言って、タクトは自分のティーセットを持ち、アヤの隣に移動した。

 アヤのいるソファーにタクトが座ると、アヤは困った様子で隣を見上げる。

 迷惑をかけるかもしれないよ、と目で訴えられたタクトは、優しく笑う。


「大丈夫。迷惑だなんて思わないから。ほら、眠いんでしょう?」


 そう穏やかな声をかけると、アヤに横になるように促した。

 アヤは小さく頷くと、おずおずとタクトの足の上に頭を乗せて横たわる。タクトは傍にあったブランケットを引き寄せ、アヤの上にそっとかけた。

 今、声をかけてしまうとアヤが眠れなくなってしまうと思ったハルルは、お茶を飲みながら静かに二人の様子を見守っていた。

 横になっても落ちつかないのか、アヤはもぞもぞと何度も体勢を変える。眠れないのが苦しいのだろう、時折「んー」や「うぅ……」など言葉にならない声をあげてぐずついていた。

 タクトは、眠れずにぐずるアヤを優しく見守り、好きなようにさせていた。そして、アヤの動きが止まると眠れるように背中を一定のリズムで叩く。それでも落ちつけずアヤが再び動くと、手を止めて様子を見守り、体勢が決まると再度背中を優しく叩くというのを繰り返していた。

 数十分後、部屋が静かになり、一人分の寝息が聞こえる。


「……眠った?」


 静かにお茶を飲みながら二人の様子を見ていたハルルが、小さな声でタクトに尋ねる。


「はい」


 タクトも同じように小声で返事をした。

 アヤは完全に寝入っているのか、二人の小声の会話に反応することはなかった。


「手慣れてたね」


 ハルルは、優しい微笑みを浮かべながら言う。


「たまにあるんです」

「そうなんだ」

「眠いのになかなか眠れなくてイライラすることってありませんか?」

「稀にあるくらいかな」


 極稀にだが、ハルルも眠たいのにうまく眠ることができずに落ちつかなくなる時がある。何度も寝返りを打つが、それでも眠れないため次第に不快感だけが溜まり不機嫌になる。

 先程のアヤはそんな状態にあったのだと納得する。


「今のアヤは魔力が強すぎてたまに悪影響を受けることがあるみたいなんです。まだ魔力を取り戻してから半年くらいしか経ってないから、魔力が不安定になりやすいみたいで……」


 タクトは優しい手つきでアヤの背中を撫でながら小声でハルルに語る。


「それで、なかなか寝つけない不快感を助長させちゃうみたいなんです。さっきも、少しだけでしたけど、魔力が不安定になりかけてました」

「そうだったんだ」


 その話を聞いて、ハルルはなんとなくだがタクトがアヤの返事を待たずに行動した理由が判り始めた。


「だから、傍で魔力が安定するように少し手を加えてたんです。そうすれば、魔力の方で受ける不快感を軽減できるので。あとは、まぁ、子ども扱いではないですけど、眠りやすい脳に背中を叩いたんです。一定のリズムを感じてると眠くなってくるでしょう?」

「なるほどねー」


 タクトのアヤを寝かしつける裏技を聞き感心する。

 眠るアヤの背中を優しい手つきで撫でながら、タクトは少し困ったような笑みを浮かべて不満を零した。


「でも、当の本人が動いてくれないんですよね……。アヤも、さっきのをやってもらった方がすぐに眠れると知ってるはずなんですけど、なかなか教えてくれないんですよ」


 確かに、先程もタクトが進んで行動を起こしていた。


「それはちょっと困るね……」


 ハルルもタクトと同じように困ったような笑みを浮かべて言う。


「でも、仕方ないんじゃないかな?」


 アヤ自身が他人に迷惑をかけたくないと思っているため、他人に甘えようとすることは少ない。幼い頃の環境のせいもある。妹ができてから、母親に甘えることが少なくなってしまったのだ。その後に両親が行方不明になり、尚更他人へ甘えられなくなって甘え方を忘れてしまった。今は、タクトやハルルに甘えてくることはあるが、それでも頻度は少ない。二人は、どう甘えたらいいのか判らなくなっているのだろうと思い、なるべく甘やかし甘えやすいようにしていた。


「そうですよね。まだ甘えるのが苦手みたいですから。特に、今日みたいに人に迷惑をかけると判っている時は、尚更、一人でどうにかしようとしますし……」


 そう言いながら、タクトは少し辛そうな表情をする。


「そこは少しずつ慣れさせていくしかないよ」

「そうですね」


 今までと同じように甘えられるようにして、いつでも甘えていいことを伝えていくしかない。少しずつ甘えてくれるようになっているのだから。


「でも、そんなところも愛おしいなぁって思うんですよね」


 タクトが優しい表情でアヤを見つめて呟く。


「重症だね」


 ハルルは突然の気化された惚気に苦笑を浮かべる。


「自分でもそう思います」


 困ったような笑みを浮かべながらタクトは同意した。


「でも、こうして甘えてこられると嬉しいじゃないですか」

「まぁね。でも、アヤちゃんだってそれを受け入れてるんだから、いいんじゃないの?」

「ありがたいことに」


 話がひと段落するや否や、眠っているアヤの手が動き、タクトの服の裾を掴む。それを見た二人は、愛おしそうに表情を崩した。



――fin.

夜、寝ようとして、眠いのになかなか寝つけなくて何度も寝返りをうつのにそれでも眠れず、何とも言えない不快感がたまることがたまーにあります。そんなモヤモヤを今回アヤにもあったらいいなと思っていたら降ってきた話です。

話の中でタクトがやる背中ポンポンですが、大人にも効果があるそうです。調べていたらそう書いてある記事がいくつかありました。単調なリズムの中にいると眠るなってくるそうです。私がよく電車や車の中で眠ってしまう理由が漸く判ったような気がしました(笑)電車で座れた時に感じる一定のリズムは心地いいですよね。

今回も楽しく書かせてもらいました。毎回書いていると思いますが、趣味でやっていることは自分が楽しむのが一番だと思っているので、これからも楽しんで書いていこうと思います。

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