うたたね 2
夏休みが終わり、学校が始まる。
季節も少しずつ夏から秋へと移り変わる時期で、暑い日もあれば涼しい日もある。そして、夕方になれば日中が暑かったとしても肌寒さを感じるようになってきている。
そんなある日の放課後のことだった。
ハルルは、自分が担当するクラスの教室に足を運んだ。
もう、すべての生徒が帰っているはずの教室を覗くと、窓側の後ろの席に一人の生徒が残っていた。
「あれ?」
教室に残っていたのは、ハルルのお気に入りの生徒であるアヤだった。
アヤは、机に伏せて寝息をたてていた。
ハルルは静かに近寄り、アヤがいる前の机の椅子に腰をかけた。そして、夕陽に照らされているアヤの金色の髪を見ていた。
――疲れちゃったのかな?
この夏、アヤは封印されていた魔力を取り戻した。その影響で、気が付けば眠ってしまうようになっていた。大きすぎる魔力をもったことで、身体がついていかず、休息を必要とするようになったからだった。そのため、アヤは毎日眠気や疲労感を感じるようになった。そして、よくうたた寝をするようになったのだった。
しばらく静かに眠るアヤを見ていたハルルだったが、日が傾き始めたことに気付き声をかける。
「アヤちゃん」
「ん……」
ぴくりと反応があったが、アヤが起きる気配はない。
「アヤちゃん、起きて」
ハルルはもう一度名前を呼ぶ。
「んぅ……。はるるん?」
ふるりと瞼が震え、翡翠色の瞳が顔を出す。そして、まだ眠そうな声でハルルの愛称を口にした。
「眠そうだね」
「……うん」
ハルルが声をかけると、少し遅れて返事がある。放っておいたら再び夢の世界へ旅立ちそうだ。
「寝ちゃ駄目だよ」
アヤが眠い気持ちは判るが、ハルルにも教師としての立場がある。苦笑をもらしつつそう言えば、不満を訴える視線が飛んできた。
「不満そうにしてもダーメ。日が暮れちゃうから」
「…………」
それを聞いたアヤは、むすっと口をへの字に結ぶ。
さらに不満を表すアヤに、ハルルは内心可愛いなと思っていた。そして、どうやってアヤを帰途につかせようかと考え始める。
少しして、教室の入り口の方から少年の声が聞こえた。
「あれ? ハルル先生?」
それは、アヤと同じく城で暮らしている、元アクマのタクトだった。
「タクトくん」
ハルルは助かった、と心の中で喜びながらタクトの名前を呼んだ。
「困っていそうですね」
ハルルの横にいるアヤを見たタクトは、苦い笑みを浮かべて二人の方へ歩いてくる。
「そうなのよ」
二人の近くに来たタクトは、困り果てているハルルを見ると、アヤを軽く揺さぶった。
「アヤ、起きて」
「タ、クト……?」
再び眠りかけていたアヤが、うっすらと目を開けてタクトを見る。
「そ。迎えに来たよ」
「ん……」
アヤは眠そうに目をこすると、のそのそと帰りの支度を始めた。
「タクトくんの言うことならすぐに聞くのね」
「今日はたまたまですよ。この前なんて、帰るまでに三十分以上かかりましたから」
その日のことを思い出したのか、タクトは困ったような笑みを浮かべていた。
「アヤ、準備できた?」
ゆっくりと立ちあがったアヤに、タクトが声をかける。すると、こくんと小さな頷きが返ってくる。
「まだ眠い?」
「……うん」
「歩けそう?」
「だいじょぶ」
「じゃあ、帰ろうか。駄目そうだったらすぐに言うんだよ?」
「……ん」
アヤと向かい合い、短いやりとりをすると、タクトはハルルの方を見た。
「じゃあ、僕たちは帰りますね」
「気をつけてね」
「はい。また明日」
タクトはハルルに挨拶すると、アヤの手を引いて教室を出ていった。
Fin,
…ひとやすみ…
シリーズ化しちゃいました(笑)
そして、季節が少しだけ飛びました。次の話でまた夏の終わりに戻るのか、それともまた進んで冬になるのかは降ってくる話次第です(笑)
今回は放課後の教室でうたた寝してしまう話でした。ほのぼのとした話は、書いていると安心しますね。いつもシリアスっぽい話が多いので、というかシリアス系ばかり浮かんでくるので、ほのぼのはなかなか書けないんですよね。困ったことに。
ハルルとタクトは、アヤの過去や苦しみを知っているので、なんだかんだとアヤに甘いんです。そういう設定が好きです(笑)それが少しでも伝わっていたら嬉しいです。
今回も楽しく書くことができたのでよかったです。まずは私が楽しんで書くことが大切だと思っているので。趣味だし、ストレス発散の一つだし。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
執筆:H27 1/14~1/16




