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side story  作者: 夜音沙月
16/43

三度目の春に

もともと好きだった場所。

今は思い出の場所。

桜が降る並木道の中で、

迷子になった貴方と出会った。

貴方にとっては辛い思い出かもしれない。

当時の私にとっても、辛かったから。

それでも、この場所で貴方に出会えたことに

私は感謝している。

本当の貴方に会うことができたから。

(side:Aya)



気が付いたら足を運んでいた

昔からのお気に入りの場所。

まさか、君もここを知っているとは思っていなかった。

君の姿を見た時は、

流石に驚いた。

けれど、それ以上に嬉しかった、と思う。

辛い日々の中に差しこんだ光。

閉じ込められていた僕を見付けてくれた君に

ありったけの感謝の気持ちを。

(side:Takuto)




◆◇◆◇◆


 アヤとタクトの二人は、街から離れたところにある桜並木の中にいた。

 そこは、三年前にアヤが操られていない状態のタクトに出会った場所。

 本当のタクトと出会って三度目の春。今年もアヤは、タクトと邂逅を果たした桜並木に来ていた。

 しばらく桜を見つめていたアヤは、視線を桜から逸らすことなく言葉を紡いだ。


「去年も一昨年もタクトをここに連れてきた時、本当は謝ろうと思ってたの。ここに連れてきてごめんねって」


 タクトは少しだけ首をかしげると、黙ったまま続きが語られるのを待った。


「ここは、私にとっては思い出の場所であっても、タクトにとっては忘れてしまいたい記憶のある場所だと思ってた。だから、いつも迷ってた。ここに連れてきてもいいのかなって。本当は、辛いんじゃないかなって……」

「アヤ……」

「タクトはさ、いつも私に優しくしてくれるからさ、甘えてたんだ。自分の思いに気付かないふりをして」


 アヤは言葉を切ると、少し離れたところに立つタクトの方に向き直った。


「ごめんね」


 そして、泣きそうな顔で謝った。


「気付いてたよ」

「えっ?」


 しかしタクトから返ってきた言葉は、予想外のものだった。


「なんとなくだけれど、気付いてたよ」


 次はタクトが打ち明ける番だった。


「アヤが毎年、ここで僕と桜を見ている時、何か悩んでいること、知ってたよ。それが僕のことだろうってことも」


 驚きを隠せないアヤは、ただタクトを見つめることしかできない。


「でも、聞けなかった。ふっと辛い表情を浮かべることがあったけれど、それでもアヤが笑っていたから、言えなかったんだ。僕の方こそ、ごめんね」


 ――ずっと気付いていた。気付いていて、知らないふりをしていたのだから。


「……嬉しかったんだよ。出会った時から、ずっと」


 タクトは静かに語りだした。


「初めて本当の僕と会ってくれて、そのことに気付いてくれて、すごく嬉しかった。アヤは、僕を無理にここに連れてきていると思っているようだけれど、それは違うよ。去年も一昨年も、本当に嬉しかったんだ。アヤが、この桜並木を思い出の場所にしてくれていたから」

「タクト……」

「だから、ありがとう」


 ――毎年、この場所に連れてきてくれて。

 タクトが心からの笑顔を浮かべてお礼を言うと、アヤは一瞬目を見開いた。そして、すぐに花が咲くように笑ったのだった。

 出会ってから三度目の春。

 それは、ようやくお互いの想いを伝えられた、告白の季節。



Fin.




…ひとやすみ…

 ほのぼのを書くつもりでいたのですが、なんとなくシリアス風味になってしまいました。おかしいな……。

 『さくら咲く季節』は、ほのぼのを書こうとしてもシリアス風味になることが多い気がします(笑)理由は書いている私自体よく判っていませんが、アヤやタクトの本音を語りやすいからかもしれません。

 今回出てきた桜並木は、本編(「さくら咲く季節 1 」)でアヤとタクトが出会った場所です。アヤがハルルと桜を見に来た時の短い場面です。

 毎年桜が満開になったころに、アヤとタクトはこの場所に来ていたということです(*^^*)

 いつもと少し違う書き方をしましたが、二人のモノローグをいれたいと思ったからです。



相互サイト「*COSMOS HEART*」様

サイト開設三周年記念企画

お題:「三番目の○○」


初出:H26 4/2

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