A lonely Dr. and dog
あるところに一人の博士が住んでいた。
その博士は妻を戦争の時に亡くし、子供もいなかったので、今まで戦争のために研究に没頭して、その淋しさを忘れようとしてきた。だが、たくさんの人が死んだ戦争はあまりにも呆気なく幕を引いてしまった。今まで没頭していた研究も国から予算が打ち切られてしまい、研究に没頭することも出来なくなってしまい、家に帰っても身寄りのない博士の家には誰もおらず、このまま一人で淋しく死んでいくのかと博士は思いながら、一人で酒場に向かった。一人で呑んでいると昔、研究チームで一緒だった仲間にこんなこと言われたのを思い出した。
「そんなことなら動物でも飼ってみたらいいんじゃないか」
その時は博士は犬なんて飼っても面倒臭いだけだと思っていたが、最近は家の中で自分一人ということに耐え切れず、犬を飼うことにした。
博士は犬を飼い始めると、まるで自分の子供のように大切にした。
そのうち博士は人間みたいに服を着せたり、食事もドックフードではなく、人間が食べるものと同じものにして、犬を人間のように扱い始めた。
戦争の時に汚染されてしまった土地になってしまった汚染地域がある。住めるところと汚染地域を分けた「放射能の壁」という人が出入りできない大きな壁があるのだが、犬一匹通れるくらいの小さな穴があるところが何箇所かある。博士はだんだん犬がそこを通ってその向こうがわに行かないか、それに体調などが心配になってきて、戦争の時人間の体内に取り付けられて使われていたGPS付き体調管理システムを犬の体内に取り付けてやった。
「これでもう大丈夫だからな」
これで安心だと博士は喜んだ。
しかし、犬にそれを取り付けてから、犬はどんどんやつれていく。最初、博士は犬が何故こうなってしまったのか分からなかった。確かにGPS付き体調管理システムは人間なら大丈夫だ。しかし、犬は人間ではない。それは犬には負担が大きすぎる代物であった。それに博士が気づいた時にはもう手遅れだった。博士は良かれと思ってやったことだったが、逆に博士のもとから犬がいなくなってしまうことになってしまった。
そして博士はまた一人になってしまった。