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4.「お姉ちゃんはご不満です」


 おねえちゃんというのが居心地の悪いポジションになるのはこういうときだ。


「あんた、お姉ちゃんなんだから許してあげなさいよ」


 暫く由人と口を聞いてやらないと決心して2日。

 早くも私の決意はもろく崩れ去ることとなる。

 母親の”あんたお姉ちゃんなんだから”の決まり文句で。


 喧嘩の内容を聞かれても確かに困る。内容が内容なだけに。

 おとうとに下品なお誘いを頂きました、なんて親にいえない。

 でも、それでも!

 喧嘩の内容も聞かず、姉だから、という理由で譲歩を強いられるのはいかがなものかと思う。


(お母さん、でも、悪いのは由人なんだよ!!)


 乙女心および、姉心が母親の言葉を受け入れるのを拒む。

 あんな言い方されたら、身体を繋げる行為は由人にとっては所詮運動と同レベルであって、愛を確かめる行為ではないということかと思ってしまう。

 ちょっと、乙女思考入っているかもしれないけど、やっぱり私は好きな相手だからしたいと思うのだ。

 世の中には、別に相手に感情が無くても純粋に快楽の追求のために行為に及ぶ人間がいるのは知っている。

 でも、私は違う。

 由人は、気持ちいいからしたいだけなんだろうか?


 私と由人は3月生まれと4月生まれでほぼ一年違うけれど、学年は一緒だ。

 だから、学校もずっと同じ。

 クラスこそ違うことも多かったけれど、育った環境は殆ど同じはずなのに、由人と私のある間にある差はなんだろう。

 考え方の差、立場の差。

 由人は男の子だから違うのだろうか?それともおとうとだから?

 昔は優しくて可愛くて素直ないい子だったのに、という懐旧も手伝って、ぐっと口元を引き結んで、首を振る。


「あんた達が喧嘩してるのって、食事の時、雰囲気悪すぎなんだもの。どう見ても、あんたが一方的に怒っているように見えるし、もう2日でしょ?そろそろ許してあげなさいよ。お姉ちゃんでしょ」

「でも、由人が……」

 悪いのに、という言葉は私の口の中で消えた。

 冷えた視線で笑う母がいたから。

 ああ、由人が怒っているのに笑うのは、母譲りなのかもしれない……。

 黙りなさい、扶養家族! と笑顔で母は言い切った。

 伝家の宝刀、”扶養家族”を出されると痛い。食わせてもらってる上に、大学を通わせてもらってるのも親の金。

 逆らえるわけが無い切り札を持ち出されて、私はしぶしぶ頷いた。


 私がいもうとだったら、少なくとも”お姉ちゃんなんだから”なんては言われないはずなのに。

 不満が私の身のうちでくすぶり、行き所をなくす。

 

 ああ、理不尽だ。おねえちゃんなんて立場大嫌い。



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