表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/87

第八十一話 数奇な運命➂

「……てなわけで、彼は冤罪なんです」


 それまでのルピナの人生、ロデリックとの関係、そしてロランの罪を聞いたロータスは、深く頷いた。


「マジか。じゃあ、速く連れ戻してあげないとじゃねぇか!」


 ロランはベッドから降り、痛む脇腹を押さえながら服を着替える。


「おっと……もう大丈夫なのか?」


 ロータスが聞くと、ロランが首を縦に振る。


「大丈夫です。まだ少し傷が痛いですけど、これから真実を知るルピナよりは百倍マシですから」


 ロータスはそれを聞いて少し悲しそうに笑う。


「じゃぁ、行くぞ!緊急ルピナ奪還作戦だ」


 ロータスとロランが医務室を出て、まずオリバー班の作戦会議室へ行く。

 二人が部屋の扉を開けると、そこにはアロンとオリバーが座っていた。


「聞いて、二人共!」


 ロランが二人に呼び掛けたとき、アロンが急に席を立った。


「丁度来たよ。ギリギリだったねぇ」


 アロンがそう言うと、手にいつもの如意棒を持ち、それを伸ばしてロランの喉元に突きつけた。


「何してんだアロン!ロランは裏切り者じゃねぇ!暗号の解読も間違ってるんだ。話を聞け!」


 ロータスがそう叫ぶと、アロンはニヤリと笑ってロータスを見る。

 この行動には、オリバーも困惑していた。


「裏切り者はルピナだけだろう?……アロン?」


 オリバーが不安そうに彼を見つめたが、アロンそれに答えなかった。


 アロンが如意棒の先に付けてあるカバーを外すと、中から鋭利な先端が出て来た。

 如意棒は杭のような形になり、不殺の武器とは程遠くなる。


 刹那、アロンはそれを大きく振り被り、オリバーの掌に突き刺した。


「「……は?」」


「アアアアアア!!!」


 オリバーが悶える。

 アロンの槍はテーブルとオリバーの右手を貫通し、地面にまで突き刺さっていた。


 そこでロランが気づく。


――ルピナが裏切り者で鳩を飛ばしていたなら、あの刺客は誰からの刺客だったのか。


――どうしていつもなら自分の話を聞いてくれるアロンが、ルピナの冤罪の話を全く聞き入れてくれなかったのか。


「やめろ……やめてくれ……そんな真実……!」


 そして辿り着いてしまった一つの結論。


「君が、裏切り者だったのか」


 ロランが彼に言うと、アロンは満面の笑みで答えた。


「este deja prea târziu。だね」





「おい、ルーシー曰くクリスが牢獄に連れてかれたって言ってるぞ」


 若い黒髪の長身男は、ガラケーを耳に当てたまま近くの椅子に座る初老の男へ言った。


「そうか。坊主を行かせろ。そっちの方が信頼してくれるだろうからな」


 殺風景な部屋の中で初老男が答える。

 長身の男は電話越しの相手にその旨を伝えた。


 その後電話相手と少し話し、電話を切ってから彼の隣へ座る。


 暫くの沈黙の後、初老の男が喋った。


「ルーシーとは会えたか?アダム」


 アダムと呼ばれた長身の男が答える。


「いや。会おうと思ったけど、無理だったよ。まぁエマは無事守られているようだけど」


 アダムは煙草に火を点け、一口吸って煙を吐いた。


「刺客は?」


 初老の男が聞く。


「いた」


 アダムが答えた。


「どれくらい?」


「二、三人」


「全部やったのか?」


「あぁ」


 アダムが自慢気に答えた。


「たまげた。お前、強くなったな」


「はっ。アンタのおかげで強くならざるを得なかったんだよ。残念ながらね」


 アダムは笑って吐き捨て、そのまま続ける。


「そろそろ時が来ただろ?クリスを地獄に落とすときが。ハンスさんのおかげで手が出せないと思ってたが、まさかこっち側に来てしまうとは。まぁ、そういう運命なんだろうな」


「地獄とは人聞き悪いな。彼もどうやら私達と同じ目的らしいじゃないか。ウインウインの関係という奴だよ」


 初老の男がそう言ったとき、急にドアをノックする音が聞こえて来る。

 二人は、それが“坊主”だろう――と予想した。


コンコンコン


「あんたの目的は王室の復興だろ?俺達とは違う。あぁあ、クリスも可哀そうに」


 アダムはそう言って立ち上がると、玄関まで行ってドアを開ける。

 ドアの前には吸血族の男が一人。


 瞬時に、アダムは男の後ろへ目を向ける。

 まだ一人だけか――てことは、アジトの場所が分かっていたわけじゃない。


――場所だけ狙い撃ちして、周辺をしらみつぶしに探したのか……!


 初老の男がアダムに言う。


「お仲間さんの返り血の匂いをつけて来たんじゃないか?」


「んなこと言ってる場合じゃねぇ!どっちにしろここがバレてんだ!!」


 その瞬間、アダムは刺客のこめかみにリボルバーを向ける。


 吸血族はすかさずそれを躱し、アダムの腹に蹴りを入れた。

 強力な一撃にアダムは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。


 吸血鬼はそのままアダムへ近づいて首を掴もうとするが、伸ばされた手を逆にアダムが掴む。


 そのまま場所を入れ替わる形で吸血族を壁に押し付け、ダガーを左手に突き刺した。


「痛゛ぁあああああ」


 肉に刃が貫通しているため、吸血族の力で回復しようにも傷を治すことができない。


 アダムが蹴られた腹を押さえ、リバルバーを構える。


 一瞬で決着が決まったと思われたその時。

 初老の男にもアダムの耳にも、ドアの近くまで来ている、追加の刺客であろう吸血鬼達の足音が聞こえた。


「また逃亡生活が始まるぞ」


 初老の男が静かに言うと、アダムはやれやれという顔をした。


「まったく。ここには三日しかいなかったぞ」


 アダムはそう言うと、壁に押し付けられた吸血鬼へ向かって、ゆっくりと引き金を引いた。






 二人はこっそりと裏口から逃げ、真夜中の街を駆けていく。


 途中白シャツに血を浴びて真っ赤になった、いかにもスチームパンクなゴーグルを着けた少年とすれ違った。


――が、二人は気にすることなく闇夜の中へと消えていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ