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番外編➂ ロータスの日常

 ロータスが裏路地から大通りへ出ると、そこにはすでに敵の姿があった。


 夜の街、石畳の道にランプの灯りが揺れている。


 その中央に黒い外套を羽織った男たちが十数人。

 全員、同じ模様の腕章をつけていた。


 ステティア治安維持部隊の鷹が描かれている。


「……はぁ。俺はどっちかっつうと街の為になることしてんノ」


 ロータスは肩に担いでいた大斧を軽く持ち直す。


 刃渡りは腕ほどもある巨大な戦斧。

 柄には無数の傷が刻まれている。


「みんなだせェ服着てんな」


 黒外套の男たちは一斉に剣を抜いた。


「見つけたぞ!!賞金首ロータスだ!!」


「囲め!!逃がすな!!」


 石畳を蹴る音が一斉に鳴る。


 だがロータスは動かない。


 ただ斧の刃を軽く地面へ当て――ガン、と重い音を鳴らした。


「――来いよボケ共!」


 最初の男が剣を振り上げる。


 ロータスは一歩踏み込み、斧を横薙ぎに振った。

 風が鳴った次の瞬間、男の体が横へ吹き飛ぶ。


 石壁に叩きつけられ、崩れ落ちた。


「な――!?」


 男達が驚く暇もない。


 ロータスはそのまま柄を回転させ、斧の柄尻で別の男の顎を打ち上げた。

 骨が砕ける音がして、男の体が宙へ浮く。


「重い武器は遅いって?」


 ロータスが低く呟く。


「使い方を知らねぇだけだろうよ」


 振り下ろされた槍を斧の刃で弾き、肩口へ叩き込む。


 鈍い衝撃が走る。


 男はその場で崩れ落ちた。


 だが、敵はまだ十人以上いる。


「囲め!!一斉に行け!!」


 四方から刃が迫り、ロータスは舌打ちした。


「チッ……面倒くせぇなァおい」


 そう言った瞬間、彼は背を向けて走り出す。


「逃げたぞ!!追え!!」


 追跡の足音が響く。


 ロータスは細い路地を曲がり、人家に設置された大きな窓の前で止まった。


「悪いな」


 そう呟くと斧でガラスを叩き割り、そのまま家の中へ飛び込む。


「な、なに!?!?やめてくれ!!」


 台所にいた中年の男性が悲鳴を上げた。


「あれ?あんた歌手のマイコ―さんじゃない?握手しようぜ!」


「あ、あぁ。握手……」


「こんなとこであんたに会えるなんてな……んなことより俺は今逃げてんだ。邪魔だ退け」


「えぇ?」


 訳も変わらず脇に避けた男を横目に、ロータスは窓へ向かって突っ走る。


 その背後から追ってきた敵が家へなだれ込んできた。


「逃がすか!!」


 男の剣が振り下ろされる。


 ロータスは振り返りざまに斧を回転させた。


 刃ではなく、柄。


 それでも鉄の塊だ。


 男の腹にめり込み、家具ごと吹き飛ぶ。


 テーブルが砕け、椅子が転がった。


「い、い……家を壊すなァ!!!」


「ごめんって!!」


 ロータスは謝りながら窓を蹴破った。

 ガラスが夜空へ散り、着地したのは裏庭だった。


 だが――


「……待ってたぜ」


 そこには三人の敵がいた。

 すでに片手剣を構えている。


「袋のネズミだな」


 ロータスは首を鳴らした。


「そうでもねぇよ」


 斧を肩へ担いだ次の瞬間、地面を蹴った。


 ドンッ!!


 爆発のような踏み込み。

 最初の男の前へ一瞬で迫る。


「ロータスを――」


 言葉は最後まで出なかった。


 斧が振り下ろされると同時に男は吹き飛び、塀を破って消えた。


 残る二人が同時に斬りかかる。


 ロータスは身体を回転させ、斧を大きく振り回した。


 唸る風――地面を踏みしめる低音――高く響く金属音。

 鋼と鋼がぶつかる。


 次の瞬間、二人の剣がまとめて弾き飛ばされる。


「甘いぜ雑魚共!!」


「な……!?」


 ロータスの足が動いた。


 綺麗な前蹴りによって男の体が裏庭の井戸へ突っ込む。


 最後の一人、彼は震えていた。


「ば、化け物……」


 斧を突き出すと思われたロータスは、そのまま柄を地面へと突き立てた。


 ズン、と重い音が響く。


「帰れよ……今日の俺は機嫌がいい」


「ひぃいいいいい!!」


 最後の一人は尻尾を巻いて逃げる。


 一人になったロータスの周囲には、夜の静寂が訪れた。


 その時、無線機がざらついた音を立ててメッセージを喋り出す。


「ロータス君。君は何をしてるのかなぁ?約束していた時間に来ないのは何故かな?」


「……あっ……いや、今から行きます。カトレアさん。ホントすいません」


「今度の遠征について話し合うのは今日です。忘れてましたね?」


「んな……忘れるわけねェだろ」


「まぁ、待ってますね。早く来てください」


 無線機が静かになる。


「――忘れるかってんだよ」


「おいそこの君、窓ガラス代を払えぇ!!!!私の家がこんなにボロボ――」


「うるせぇ黙ってろ!!」





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