表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/84

第七十四話 吸血衝動

 クリスが廊下へ出ると、近未来調の幅広い廊下に、二十人弱の傭兵が迫っていた。


「――どいつもこいつも同じような格好しやがって」


 白シャツに重めのベスト、縞の入った黒いパンツ――いかにも量産型のスチームパンク紳士。

 頭には全員そろってトップハット。


 縁に付いたゴーグルだけが、かろうじて個体差と言える程度で、遠目にはほぼ同じシルエットに見える。

 手には剣や斧、二十人並ぶと流石に圧があった。


 皆、貴族に雇われているのであろう。

 吸血族ではあるが、強さよりも清潔感や美しさ、気品を求められたような出で立ちだった。


「来いよ。どうした……殺人鬼を見るのは初めてか?」


「あいつを捕らえろォォォォオオオオ!!」


 クリスの挑発と共に傭兵が襲い掛かってきた。


 一人目が剣を突き出すとともに、眉間へと銀製の弾が撃ち込まれる。

 

 そこに慈悲は無い。


 好きでしているわけでもない。

 気分も悪い。


 だが、これが彼の背負う十字架であり、役目なのだ。


「遠慮なんてラオで捨ててきたぜェ!!」


 最初の一人が崩れ落ちた。


 だが、クリスはもう次の標的へ向かっている。

 銅製の剣が振り下ろされると同時に前へ踏み込み、拳を叩き込んだ。


 骨が砕ける感触。

 そのまま敵の顎を蹴り上げ、宙へ跳ね上げる。


「ガフッ――!!!!!!」


 空中の男を無視して、クリスは横へ滑る。


 空振りとなった斧が地面を割る。

 その腕を掴み、ダガーナイフで一閃。


 鮮血が白い床を染めた。


「すごいね。オファク流武術は――」


 振り返りざまに銃を撃つ。

 跳ねた薬莢が床に散り、倒れる敵の数だけ、乾いた音が増えていく。


「て、敵は一人だぞ!!おらぁあああ!!」


 背後から迫る気配。


 クリスは振り向かない。

 後ろ蹴りのみで即座に沈めた。


 傭兵の口からは血が飛び散り、飛沫が彼らのスーツを赤く染める。


 さらに二人が同時に襲いかかる。


――剣と斧。


 しかしクリスはその間に飛び込み、

 片方の腹へ肘打ち、もう片方の喉へナイフの刃を叩き込んだ。


 圧倒的な無双。

 もはや彼に敵う者はいなかった。


「……次ぃ!!」


 クリスの叫び声と同時に奥から現れたのは、一人の獣人。


「俺の相手をしてもらおう」


 彼は黒いケモ耳を頭に載せ、長髪を靡かせていた。


 服は他の傭兵とは違い、東欧風の服を着ている。

 着物だろうか。


「俺はチベットオオカミの獣人。異国から来たんだけど、カシム様に俺の能力を買ってもらってね」


「自己紹介はいらねぇよ」


 クリスがダガーを突き出すと同時に彼が身を傾ける。

 空を切ったダガーナイフが隙を出し、クリスの脇腹に強烈な一撃が放たれる。


「……ッ!!」


 吐血し、壁に叩きつけられるクリス。


「自己紹介じゃないサ。俺に逆らうとどうなるのか、近くのボンボン共に教えてやってんの」


 彼はクリスの髪を掴むと、頬を思い切り殴る。

 鈍い音と共に体が吹き飛び、地面に倒れ込んだ。


「俺はラン。お前を殺す奴の名前だ。覚えとけ……俺は吸血族を何十人と殺してきた……テメェ一人くらいとるに足らねんだよォ!!」


 ランがクリスを殴る蹴る。

 身体中に痣ができ、血が噴き出す。


 だがクリスは体を動かすことは無かった。


「てめ、やる気あんのかよォ!!」


 ランが足を振り上げ、渾身の力で蹴ろうとしたその時。

 クリスが呟いた。


「殺しってのはそんなに楽しいかねぇ――俺はしたくねぇのによォ」


 むくりと起き上がった金髪の間から赤い瞳が覗き、ランを射すくめる。


「絶対に俺の行動は間違ってんだ。でもよ、可笑しんだ。イカれてんだ」


「――何言っテル」


「ラオで全員死んでからよ、拳に力がこもって仕方ねんダァぁぁああああ!!」


 ランの足が振り上がる――その刹那。

 クリスの拳が動いた。


「――ッ!?」


 鈍い衝撃音が廊下に響き、ランの体が弾かれるように後退する。

 蹴り上げるはずだった脚は地面を蹴り、狼の瞳が見開かれた。


 先ほどまでランがいた場所には円状のクレーターができ、白い床材は粉々に砕け散っている。


「なんつぅチカラだよ!!」


 クリスはゆらりと立ち上がった。

 脇腹から血が滴り、呼吸は荒い。


 その目だけが異様に冴えていた。

 赤い光が、獣人の本能を震わせる。


 ランは冷や汗を流しながら後ずさった。


「テメェ……血が足りてねぇゾ……暴走してるぞ」


 クリスは一歩踏み込む。

 それだけで床が砕けた。


「止まんねぇなァ、身体がァ!!」


 その瞬間、クリスの姿が掻き消える。

 ランの視界の外へ――


 そして狼の耳が反応するより早く、腹に衝撃が走った。


「ガッ……!!」


 クリスの拳がめり込み、爆音と共にランの体が折れ曲がる。


「あばよォ」


 ランはそのまま壁へ叩きつけられ、石壁に蜘蛛の巣状の亀裂が走った。





 チベットオオカミの獣人


 能力は――確認前に戦闘不能となったため、不明




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ