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第六十三話 宝剣アンブリエル



――同刻、ラオはオファク村にて。




「お願いします!あの時、ラオの屋敷で何があったんですか!百人近くもの人が死んだ虐殺、その真相を教えてください!」


「知らん。ワシに聞くな」


「では、列車爆破事件容疑者のクリスさんは今どこに!話によるとあの日ジィジさんと一緒に屋敷付近に居たと聞きました」


「知らんわい、死んだんじゃろ」


 ジィジがオファク村の門に着くと、青い民族衣装を着た門番が記者の行く手を止めた。


「ジィジ村長!ジィジ村長!」


 年老いた村長は一人村に入り、煩わしさから解放された気の緩みからか、屁をこいた。


「全く、最近の記者は滅茶苦茶しおるわ。ワシの目が見えんことを良いことに、さっきトイレまで入って来たからの。お蔭でワシは早よトイレに行きたいんじゃ」


 ジィジがそう言うと、側に来た村の若い戦士が笑った。


「それは酷いですね村長。そんな大変なところ申し訳ないんですが、客人が村長の間で待っております」


「誰じゃ」


「いや……それが、“もう行く。感謝を伝えに来た“と言えば伝わると。見慣れない顔で。オファクの、青い紋様が入ったフードの付いたロングコートを着ていたので、一応客間へ通しておきました」


 ジィジは無言で頷くと、一人で、村の会議室となっている洞窟へ入っていった。

 

 壁には以前と変わらずヒカリゴケが自生し、幻想的な雰囲気を作り出している。


 程なくして、彼が奥に広がる客間へ着く。

 真っ暗な中、そこに一人の男がフードを取って座っていることに気づいた。


 その男は長身で金髪、少し伸びた髪を後ろで一つに結んでいる。

 薄暗い部屋で目は赤く光り、犬歯は鋭く尖っていた。


「――もう行くのか?」


 ジィジが客間の入り口で立ったままそう言うと、その男は深く頭を下げて言った。


「ありがとうございました。感謝してもしきれません。や、ほんとありがとね」


「そうか」


 ジィジが悲しそうに頷く。


「お主に、この剣をやろう。本当はエアリアにやる予定じゃったが、ギリギリ渡せんやった。名は、”アンブリエル”じゃ」


 ジィジが腰に帯びていた、銀製の青い紋様の入った剣を男の前に差し出す。

 彼は両手でその剣を受け取ると、すぐに自身の腰へきつく帯びた。


「ありがとう。ジィジ。じゃぁ、待たせてるし、行くよ」


 男はゆっくりと立つと、ジィジと握手してから洞窟入口のドアに手を置く。


「ワシは毎度戦闘マシーンを送り出しているつもりは無い。死ぬなよ、クリス」


 ジィジ村長から最後の忠告を聞いて笑顔になった男は、ゆっくりとドアを押して開けた。

 扉の隙間からは、外に出る男を歓迎するかのように淡い光が零れてくる。


「うーん、何とかなるさ!行ってきます!!」


 男はその言葉を残して洞窟のドアを開け、希望を胸に外へと出て行った。

 

 大きな困難を乗り越え、様々な感情と出会う。

 数多の別れを経験し、新たな仲間達とも会った。


 そして、これからも同じ道が続く。 


 だが、それだけ成長もする。

 大人になっても、どれだけ辛い時でも。


 人生はそれの繰り返しだと、彼は知った。


「全く。大雑把なところをエアリアに似おって、クリス――!」

 

 一人洞窟に取り残されたジィジは、昔を懐かしむように呟いた。



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