『人は見た目が9割』と言いますが……
「レイナ・タールトール! お前との婚約をこの場で破棄とする!」
貴族学院内の大ホールにて行われていた卒業記念パーティーでいきなりリチャード・メイアール王太子様が宣言をした。
その隣にはブルブル震えながらもこちらを見てくる見た目可愛げなピンク髪の令嬢がいた。
「お前は公爵令嬢という立場を悪用しレイチェル・アサシール男爵令嬢を虐め、挙句の果てに階段から突き落とそうとし大怪我を負わそうとした! そんな悪女を将来の王妃として迎えるわけにはいかん!」
そう言ってこちらに指を突きつけてくるリチャード様。
はい、私がそのリチャード様の婚約者であるレイナ・タールトールでございます。
しかし、今言っていた言葉に私は心当たりが全く無い。
そもそもレイチェル男爵令嬢とは今日初めてお会いして『あぁ、この子が』という認識なのだ。
なるほど、リチャード様好みの可愛らしいお顔立ちをしている、そして何気にスタイルが良く立派に育った胸元をリチャード様の腕にくっつけている。
(完全に見た目にやられているわね……)
こうも見た目に騙さられているのは将来の王としてはどうか、と思う。
まぁ私は公爵令嬢らしく周囲に舐められないように金髪に縦ロールをいくつかつけメイクもキツめにしている、ハッキリ言うと可愛くはない。
でも、貴族令嬢にとって社交の場は戦場であり揚げ足取りが当たり前、髪型服装メイク全てが鎧であり武器なのだ。
つまり、隙を見せたら負け。
(ただ、今一番隙を見せているのはリチャード様なんですけどね……)
「レイナ!黙っていないで何か言ったらどうだっ!?」
ずっと黙っている私に対して何処か勝ち誇ったような顔をするリチャード様。
……いや、そもそも言ってる相手が違うんですよ。
だって、リチャード様が指を突きつけているの私じゃなくて隣にいる人物なんですもの。
しかも、絶対に間違えてはいけない相手なんですよ。
ずっと沈黙を保っていた私の隣にいる人物は顔をあげてニッコリ笑った。
「リチャード、貴方誰に向かって言ってるの?」
「えっ、誰って……ぐはぁっ!!」
情けない声と共にリチャード様は鉄扇で顔面を殴られ吹っ飛んでいった。
抱きついていたレイチェル嬢も巻き添えを喰らった。
「な、何を……、不敬だぞっ!?」
「あら、愚弟をぶん殴って不敬になるのかしら?」
「え……、ってあぁっ!! あ、姉上っ!?」
そう、リチャード様が私と間違えていたのはシェイル・メイアール第一王女、つまりリチャード様のお姉様です。
「漸く気づいたのね、この愚弟は」
「な、なんで姉上がここにっ……!?」
「あら、王家代表として卒業生にお祝いを言いに来たのよ、まさかこんな愚かな事をするわ、しかも私と自分の婚約者を間違えるわで情けなくて涙が出るわよ」
「えっ、それじゃあレイナは何処に……」
「ずっと私の隣にいるわよ」
そこで漸くリチャード様は私の方を見た、そして驚愕した。
「えっ……、レ、レイナなのか……?」
「はい、リチャード様の婚約者であるレイナでございます」
「えっ……、だっていつもと違うじゃないか……」
そう、今日の私は普段とは違う、いつもの縦ロールは止めてストレート、派手なメイクではなくすっぴんに近くド派手なドレスではなくシンプルなドレスにした。
「これが本来の私なのです、いつもは家の意思であのような格好をしておりました」
「うんうん、やっぱりレイナはこっちの方が良いわ、派手な格好していても違和感があったのよね〜、見た目と内面が釣り合ってないから」
本来の私は内向的で社交の場に出るのはあまり得意ではなくどちらかと言えば1人で本を読んでいるのが好きなのだ。
しかし、両親から『王太子の婚約者になるのだから釣り合わないとダメだ』と言われ無理して頑張っていた。
「そ、そんな……」
リチャード様は愕然としてレイチェル嬢は『嘘……、私より可愛いなんて……』とショックを受けていた。
「さて、リチャード、貴方がレイナを見た目だけしか判断していなかった事は明らかになったし疑いも無く一方的な意見しか聞かないのも明らかになった、今後の事についてゆっくりと話し合いましょうか?」
「ヒィッ!? あ、姉上許してくださいっ!!」
襟元を掴まれズルズルと引きずられていくリチャード様。
シェイル様は女性でありながら騎士団長を務めている、多分これからリチャード様は心身共に叩き直される事になるでしょう。
いつの間にか来ていた警備兵によりレイチェル嬢も捕縛され退場していきパーティー会場はざわついていたけどとりあえず最後まで行われた。
その後、私は王家から謝罪を受け正式にリチャード様有責で婚約は解消となった。
リチャード様は王太子の座を剥奪され1兵士としてシェイル様の下でこき使われるようになった。
レイチェル嬢は取り調べを受けた後、修道院に送られた。
両親からは謝罪を受け『レイナの好きな様に生きなさい』と言われ私は国立図書館の司書になった。
大好きな本に囲まれ私は幸せな日々を過ごしている。




