2.全自動チート
しばらく呆然としていた俺だったが、美少女たちのキラキラした視線と、ファンタジーな景色に、やっと現実感……いや、非現実感がこみ上げてくる。
(これ、本当に全部自動なのか? 俺、何しなくていいのか?)
すると、再びメッセージウィンドウが表示される。
『すべて自動的に進行します。
勇者ユウキ様が魔王を倒したくなくても
自動的に魔王討伐まで進行します
※すべて自動進行・完全勝利補正付きです』
「うわ、びっくりした!」
「どうなさいましたか、勇者様」
「いや、こっちの話。そういえば、君たちの名前って……」
俺がそう尋ねると、美少女たちは目をきらきらと輝かせて顔を見合わせた。
最初に口を開いたのは、そこはかとない色気を醸す銀髪エルフだった。
「私の名前はリィナ=エルフィーナと申します。エルフ族の王女であり、勇者様のお世話役を任されております」
リィナは翡翠色の瞳を真っ直ぐに俺に向け、綺麗にお辞儀をした。
続いて、元気いっぱいの猫耳少女がぴょんと跳ねながら自己紹介する。
「わたしはミカ・ニャルル! 獣人族代表、みんなの橋渡し役なんだよ!」
ミカは猫のように両手を前に揃え、尻尾をふりふりしてアピールする。
その笑顔につられて、ついつい俺の頬も緩む。
最後に、ローブ姿の魔女が前に出てきて、杖を胸に当てながら柔らかく微笑んだ。
「私はマーヤ・クロム。王立魔法学園の主席魔女です。勇者様の生活が快適であるよう、全力でサポートさせていただきますね」
それぞれが個性的な挨拶をしてくれて、少しだけ、この不思議な異世界での実感が湧いてきた。
「ああ、よろしく……うん、本当によろしく頼むよ」
俺がそう答えると、三人は一斉に「はいっ!」と元気よく返事をした。
(……まさか、こんなハーレムじみた展開になるなんて。しかも、全部自動進行って……)
頬をつねってみても、やっぱり夢じゃない。
目の前には新たなメッセージウィンドウ。
『次のスケジュール:リィナ姫による勇者様おもてなし開始――。自動進行』
「勇者様、どうぞ、まずは城へご案内しますね」
リィナが微笑み、ミカとマーヤも俺の両脇を固めるように寄り添ってくる。
……こうして俺の、全自動チート(?)異世界生活が、静かに動き出したのだった。
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