宇宙奴隷商人
「社長! 知的生命体がいる青い星を見つけました!」
社長室に、部下からの通信が入ってきた。
「よし! 銀河連邦には登録されていない星だな?」
「はい。未発見の星です」
「では奴隷取り放題だ!」
最近は、奴隷の規制が厳しくなった。昔ほど好き勝手に拉致できない。だから、新しい調達先を探しに、辺境まで手を伸ばしているのだ。
「この青い星を調査して、また報告します。」
「うむ。」
数日後、部下から通信が入ってきた。
「報告します。この星の知的生命体は、「人間」と呼ばれるカーボン製の生物です。AIと呼ばれる電子知能を使い、完全管理社会を実現しています。」
「高度な管理社会か。拉致するには最適だな。社会構造はどうなっている?」
「まず、一握りの管理都市に住む人間と、大量の都市に入れない野蛮人に分かれています。機械にほとんどの仕事をさせているので、都市にはあまり多くの人間が必要とはされていないようですね。」
「野蛮人は、奴隷には不向きだ。あいつら本能的だからな。管理都市内の社会構造はどうだ?」
「少数の支配階級と、それ以外の管理対象となる被支配階級です。」
「最高じゃないか! 技術による管理社会が達成されると、階級は半永久的に固定化する。管理された被支配階級は、遺伝的にも学習的にも従順だ。星によっては、外科的に従順に改造されている場合もある。」
「おっしゃる通りです。しかも素晴らしいことに、被支配階級は常に感情をモニタリングされる機械を、脳に埋め込まれています。」
「完璧だ! まさに奴隷になるために生まれた個体たち! これは売れるぞ! その被支配階級の人間を、ありったけ拉致ってこい!」
「承知しました!」
社長は、ウキウキで、次々と営業電話をし始めた。
「管理社会まで発展しているのに、まだ奴隷取り放題な星を発見したのですよ! ええ、もちろん御社には優先的におろさせて頂きますよ! はい、ええ、ありがとうございます!」
「はい、何千年も管理された血筋です! 命令に従うことに、喜びすら感じている頃ですよ! いえ、家畜でなく、ちゃんと知的生命体です。はい、…ありがとうございます!」
社長は、数十の顧客と商談を取り付けた。
「よーし! これで大儲けだ!」
しかし、後日、社長は大量のクレームを受けてしまった。
社長は、部下を怒りをぶつけた。
「どうなっているんだ! 今週、謝罪してばっかりだ! あの売った人間たち、卑屈で不満だらけで、反抗的で、役に立たないらしいじゃないか! お前の報告間違っていたのか!? それか、間違えて支配階級を拉致ってしまったのか!?」
「いえ、拉致ったのは、間違いなく被支配階級です。」
「じゃあおかしいじゃないか! 何千年も管理されて、感情のモニタリングまでされて育った生物が、なんで従順になっていない!? 不満を感じる遺伝子が残っているわけないだろ!」
「申し訳ありません。私も何がなんだか……」
「再調査してこい!!」
数日後、再調査を終えた部下から、通信が入ってきた。
「・・・社長。あの、大変申し上げにくいのですが、原因がわかりました。」
「説明しろ。」
「あのですね・・・あの星の社会では、機械やAIが全ての仕事を実行するのです。支配階級に対して、従順さを提供しているのは、AIです。」
「じゃあ、被支配階級たちは何のためにいるんだ? 支配階級とAIだけで十分じゃないか。」
「被支配階級に求められているのは、支配階級の感情を満たすことです。」
「感情を満たす?」
「人間の支配欲や優越感は、AI相手では満たされないのです。AI相手に自慢したり怒ったりしても、何もすっきりしませんから。だから、そのためだけに、下々の人間がいて管理されています。見下していい気分になったり、AIがミスをおかしたら代わりに責任を取らせたりするのが、被支配階級の存在価値です。」
「見下す対象として飼われているということか。でも、感情をモニタリングまでされてたら、不満や反乱の意志はすぐバレてしまうじゃないか。」
「実は・・・それでよかったんです。」
「それでいい?」
「見下す相手の不満、くやしさ、無力感など、そういうネガティブな感情が、支配階級の好物なのです。喜んで従順に従う人間相手じゃ何も面白くない。くやしさで苦しんでいる人間相手の方が、優越感に浸れるのです。」
「じゃあ、感情をモニタリングしているのも、そういう感情を見て楽しむためか?」
「はい。だから被支配階級は、何千年もかけて、ネガティブな感情を抱きやすい遺伝子が濃くなっていっています。労働奴隷としては全く向いていません。」
「なんて悪趣味な生物だ。」
社長はドン引きして、その青い星からは手を引いた。