13:帝都への帰還
1年半ぶりの帰省です。
帝都へは、馬を駆けさせれば1日半ほどだ。
「えっ、往復5日で帝都に帰るの?こんな寒いのに?護衛なら、騎士科の二人がいれば僕は必要ないんじゃない?父上には、出発前夜に高熱で倒れたって伝えておいてよ」
ガウェインが、帰るのを渋り縋るように頼むため、3人で帝都に向かうことになった。
雪深い道中ではあったが、吹雪に見舞われることもなく、早朝に出発して翌日の夕方には無事に帝都に到着した。久しぶりに戻った我が家は、何となく寒々しく感じられ、学院での恵まれた生活にすっかり慣れていた自分に呆れてしまった。
使用人のメイサによれば、祖父ガイアスは裏の工房にいるとのこと。レオノーラは開いたままの小さな工房のドアを叩いた。
「お祖父様、今、帰りました 」
「レオ、早かったな。明日になるかと思っていた 」
祖父は馬の腹帯に何やらあて布を施していた。
「擦れないように工夫しているんですか?」
「ああ、まあ、それもあるが、腹帯の補強にもなるからな 」
工房はろうそくの明かりだけで、吐く息が白く浮かんだ。
「もうすぐ終わるから、家で待っていなさい。メイサが夕飯を準備してくれているだろう 」
工房を出て、ふと建物の向こうに見える城を見つめた。以前は何とも思わなかったその姿が、今はまるでおとぎ話の中の絵のように、自分とは別の世界のものに感じられた。
祖父と二人きりで食べる夕飯はとても静かで、昨日までの学院での生活が遥か随分と遠くへ離れてしまったような感覚に襲われた。
翌朝、訓練場へ顔を出し、懐かしい仲間たちと久しぶりに剣を交えた。知らない顔もちらほら見かけ、中には十四歳の少女もいた。
「レオさんのことは兄から聞いていました。話を聞いて、私も剣を握ってみたくなったんです。そしたら兄が、筋がいいって褒めてくれて、それで、今はここで皆さんに教えてもらっています。」
ジョセリン=クロトワと名乗ったその少女は、かつて一緒に訓練をしたドノバン=クロトワの妹だった。ドノバンはすでに騎士団に入隊し、今は城郭の警護に当たっている。
「私はジョセリンさんと歳もほとんど変わらないので、気軽にレオと呼んでください。良ければ、この後、一緒に手合わせしてみませんか?」
「いいんですか!嬉しいです 」
軽く手合わせをしてみると、たしかに筋が良い。まだ経験が足りず隙は多いが、将来性が感じられた。
「レオさんは、全然体の軸がぶれませんね。私は剣を振ると、どうしても重さで振り回されてしまうんですが、どうしたらいいでしょうか?」
ジョセリンは膝に手をついて、肩で息をしながら尋ねてきた。
「それは、剣の重みを頼りに振っているからじゃないかな。剣の先まで意識して、重さに頼らないように振ると、少しは改善するかもしれないよ 」
そう言って、彼女の腰を支え、腕と剣をまっすぐにして、肩から振るように指示した。
「わぁ、なるほど!なんだか分かる気がします。もっと練習して‥‥って、あ、あの、えっと、レオさんってすごく美人ですね 」
ジョセリンの顔がちょうどレオノーラの顎の下にあり、彼女の顔が真っ赤になっているのが見えた。
「え、ありがとう。でも、私は女だから大丈夫よ、変なことしないからね 」
「いや、そういう問題じゃない気がします 」
ジョセリンは、顔を赤くして、目を泳がしながら答えた。その後も「破壊力が‥‥色気が‥‥」とモゴモゴと何やら言っていたが、それでも素直に腕を取られていた。
「なんか、レオ絡みのこんな光景、久しぶりに見たな。懐かしいわ 」
その様子に、他の仲間たちが笑った。しばらくしてアルフレッドもやってきて、学院での鍛錬について皆に話した。
帝都に到着してから再び学院へ出発するまで、アビエルには会うことがなかった。
学院へ帰る道中、表情には出さなかったが、アビエルはどこか苛立ち、言葉少なく上の空だった。学院に着くと、次第にその雰囲気が和らぎ、いつもの軽口も聞かれるようになった。『帝都での用事は愉快なものではなかったのかもしれない』そう感じたが、アビエルが語らないことについて、深く追及するのは避けた。
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