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Little kabotya’s story  作者: 富田林喜志
コンポタが好きな君
3/17

入学式ってそれコンポタの缶より美味しいですか

◯ 幼稚園前の道・夕     


     通る今永と真希、幼稚園の砂場を見ている佐々木 ひろ子(16)を見る。

     今永に気がついてひろ子が振り返り目が合う。


今 永「工藤、ちょっとこのバッグ持っててくれ。今警察に電話する」


真 希「わかりました」


ひろ子「ちょっと待って。ただ見てるだけで何かしてるわけじゃないから」


今 永「犯罪者というものは計画的に進めるものだからな。あっもしもし」


真 希「これはサスペンスの匂いがしますね。(自分のバッグを漁り)ああっカメラが今あれば」


ひろ子「ちょっと待ってって」

     今永の電話を取ろうとする浩子。

     砂場から浩子を見つける幼稚園児の高橋 宏人(4)と入江 浩子(4)。


浩 子「(指を刺して)見てみて宏人、ひろ子お姉ちゃんだよ」


     ひろ子を見る宏人、顔を赤らめる。


宏 人「何だよ、あのババアかよ」


ひろ子「ババアって何よ、まだピッチピチの16歳よ。肌のケアも欠かしてないし、いや最近ちょっと太った

   から?どうして?」


宏 人「そういうとこがババアなんだよ」


ひろ子「さっきからババア、ババアって私がババアなら宏人はジジイよ」


宏 人「ふっ」


     宏人、絆創膏をしているほっぺをかくと砂で遊び始める。


ひろ子「まあこういうことだし、私は変な人ではありません。知り合いです」


真 希「なんでこの人は幼稚園児の名前を知っているんでしょうか。やはりサスペンスの匂いがします。今永

   さん」


今 永「やっぱり通報しよう」


ひろ子「だから私は怪しいもんじゃないから」


真 希「なので警察に通報されたくなかったら」


     バッグから入部届を出す真希。

ひろ子「何よ、あなたまで私をどうする気?どっかに売ろうとしたってそうはいかないんだから。やるわよ、ひ

   ろ子やるわよ、私」


真 希「(入部届を渡しながら)映画部です。入部してください。あなた、その制服は浅高ですよね」


今 永「おい、工藤。そんな簡単に」


     紙を見ているひろ子。


ひろ子「ええ、いいじゃん。入るわよ。まさか私がこんな年でスターになるチャンスが来るなんてね」


今 永「お前まじかよ」


真 希「言ったじゃないですか。彼女からはヒッチさんの匂いがします」


ひろ子「私は浅高2年3組佐々木ひろ子、よろしくね。でっヒッチさんって?」


真 希「アルフレッド・ヒッチコックです。だいたい有名ですが名作と言ったらサイコとか鳥とかですかね」


ひろ子「ああなんか10年前、いや数年前に見たことがある気がするわ。アルミ缶をヒッチハイクね」


真 希「アルフレッドヒッチコックです」


今 永「多分こいつもばかだ。やめとけ真希。高橋よりも馬鹿だぞ。こいつ」


真 希「いいえ決めました。殺人鬼役はこの人にします」


今 永「お前、そんな物騒なものを作ろうとしてたのか」


真 希「はい、今永さんは殺される方です」


今 永「やだよ、そんな役やりたく・・・」


ひろ子「私は殺してないわ」


今 永「えっ」


真 希「やはり、サスペンスの話ですか」


     楽しそうな真希の表情。


ひろ子「ごめんなさい。何でもないわ。私は今日は帰ります。(紙にペンで書いて)入部届とこっちが私のメー

   ルです。部活がある日は連絡してください」


     走り去るひろ子。

 ×  ×  ×

     二人で歩いている今永と真希。


真 希「それでは私はこっちなので」


今 永「あっわかった。それじゃあ」


     数メートル歩いて止まり振り返る真希。


真 希「明日は13時に学校で、では」

     手を振ると振り返り歩き出す真希。

     後ろ姿を見ている今永、振り返り歩き出す。


◯ 今永家・外観・夜


     ドアを開ける音。


今永の声「ただいま」


京子の声「おかえり」


◯ 今永家・リビング・夜


夕ご飯を食べている今永の父親の今永 孝司(50)。作業着姿。

キッチンにいる今永の母親の今永 京子(50)。


孝 司「帰ってきた、帰ってきた。息子よ一杯といこうじゃないか。ビール、京子もってこい」


京 子「私は京子じゃありません。それに昇太はまだ未成年です」


孝 司「チッ」


    味噌汁から何かを持ち上げる孝司。不思議そうに見た後口の中に入れて咀嚼する。


京 子「おかえり。今日遅かったわね」


今 永「ああ、なんか色々あってさ、大変だったわ」


京 子「そういうことね。サンドイッチの年って言ってね・・・」


孝 司「(箸で味噌汁からパンを取り出しながら)おい京子、これお麩か?美味しいな」


今 永「ああっ、その話今日聞いた。ご飯は朝食うわ。今日はもう寝ることにするよ」


     部屋を出ていく今永。


京 子「あら食べないの、今日は自信作の食パンの味噌汁だったのに」


孝 司「げっ」


     急いで食べる孝司。


孝 司「ご馳走様」


京 子「あらまだ味噌汁たくさんあるわよ」


孝 司「いや、今日は早く寝ないと明日早いからな」

     

     急いで部屋から出ていく孝司。

     鍋を持って追いかける京子。

     京子部屋から出る。


◯ 同・階段・夜


     階段を登る今永。

     急いで部屋へ行く孝司の足音。

京子の声「昇太、ちゃんとお風呂入るのよ」


今 永「わかってるよ」


     孝司の後ろをおう京子の足音。


孝司の声「ぎゃー」

京子の声「あなた・・・ちゃんと食べなさい」

孝司の声「助けてくれ、昇太」


     2階の廊下に出て自分の部屋に入る。


◯ 同・今永の部屋・夜


     電気をつける今永。ベッドに横になりスマホを見る。


◯ 幼稚園前の道・夕・回想


     ひろ子の表情。


ひろ子「私は殺してないわ」


真 希「やはりサスペンスの話ですか」


     楽しそうな真希の表情。


◯ 今永の家・今永の部屋・夜


     ため息をつく今永。


今 永(あいつ、俺が気をつけてやらないとな)


◯旅館「月見荘」前・道


     走っている今永。


今 永(やべ、寝坊しちまった。入学式の終わりとバッティングしなければいいが)


     ホテルの前でホテルの制服で一息をついている達子。走っている今永に気がつく。


達 子「ああ、昇太。今からご飯なんだけど一緒に食べない?ホタテたくさん剥いちゃって」


今 永「おう、ごめん俺急いでるんだ。また今度」


達 子「(悲しそうに)わかった」

 

◯ 浅虫高校・玄関


     下駄箱へ行く今永。

     急いで靴を脱ぐ今永。

     玄関で座って缶のお汁粉を飲んでいる井納 ソラ(15)。

     ソラの胸元のリボンを見る今永。


ソ ラ「これもまた美味」


今 永(新入生か)


今 永「入学おめでとう。もう入学式は終わったのか」


ソ ラ「入学式ですか?」


今 永「そうだ。恥ずかしいだろ。今日入学生でもない生徒がいると」


ソ ラ「入学式ってそれコンポタの缶より美味しいですか?」


今 永「はっ?わかんないけど一生に一回の入学式だ。それはいい思い出になるんじゃないか」


ソ ラ「そうなのか。わかった。行ってみる」


     玄関を後にするソラ。


今 永(変な奴がいるもんだな。お汁粉飲みながら入学式なんて前代未聞だぞ)


     ソラの走る後ろ姿を見た後廊下を別方向に歩く今永。


◯ 同・廊下


     廊下を走っている今永。

     息が上がっている。


今 永(これは工藤に怒られるかな)

     

     横で走っているソラお汁粉を飲んでいる。


ソ ラ「すみません、入学式という缶はどこの自販機で売られていますか」


今 永「おっお前いつから」


ソ ラ「さっきです。瞬間移動してきました」


今 永「ああ、ああ。そうか、そうか」


ソ ラ「信じていないんですね。まあいいでしょう。ですが入学式を教えてくれたお礼として教えておきます。

   私は地球を滅ぼしにきた宇宙人です」


今 永「わかった、わかった。(指を刺して)入学式はこの廊下をあっちに行ったところだ。近くにいる人に遅

   れましたと静かに伝えてこっそり入ればいい」


ソ ラ「わかった。ありがとう」


     今永の指差した方向に行くソラ。

     ソラの後ろ姿を見ている今永。


今 永「やっべ。工藤に怒られる。早くいかないと」


     廊下を走る今永。


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