愉快じゃないから不愉快なんです
◯ 草原・夜
壁越しに自分で書いた物語を見せている少年とめぐみ。
ページを捲るように指示する少年。
めぐみN「それからも熊さんに隠れて男の子と会うようになった」
再び読み始めるめぐみ。
めぐみN「男の子は小説というものを書いていてそれを毎日読んだ」
めぐみ「今日はここまで」
本を閉じる少年。
めぐみ「面白かった。この「こいびと」って何?」
顔を赤らめる少年。
本に書き始めて、書いた後めぐみに見せる少年。
めぐみ「付き合ってる好きな人?さっきのともだちとは違うの?」
めぐみN「初めての言葉が多かった。「ともだち」や「こいびと」初めてみる料理いろいろなものを教えてもらった」
書いて本を見せる少年。
その文字を読むめぐみ。
めぐみ「うーん少し違う、そっか・・・。ああいっけない。もうこんな時間、じゃあね」
走るめぐみ、後ろをチラッと見る。
めぐみN「少年は私が去るといつも悲しそうな顔をする」
◯ 熊原家
寝ている熊原を起こす恵。
起きる熊原。
恵 「昨日はどうでした?」
熊 原「まだ、全然」
頭をかく熊原。
熊 原「なんか、ごめん」
恵 「どうして謝るんですか」
恵を見る熊原。
恵 「早く終わらせてください。私との物語を」
熊原の表情。
恵 「早くしないと私、飛び降りますよ」
熊 原「それは・・・」
恵 「そうですね、何もあなたのためになりませんね」
熊 原「不愉快だったら出てってもいいよ」
恵 「いいえ、出ていきません。愉快じゃないから不愉快なんです。不愉快じゃないのは愉快なわけではありません」
熊 原「そうだね」
熊原の表情。
恵 「早く起きてご飯食べるよ」
部屋から出ていく恵。
◯ 熊原家・リビング
リビングに入ってくる熊原。
熊 原「いい匂いだね」
恵 「パンを焼いたの」
パンやサラダを持ってくる恵。
熊 原「すごく幸せな匂い、ありがとう」
恵 「そうでしょ」
カーテンの外を見る恵。
パンを食べる熊原。
熊 原「美味しい」
恵 「食べて準備したら出かけましょ」
熊 原「何か欲しいものがあるの」
恵 「何も、ただのデート」
熊 原「わかった」
パンを食べる熊原。