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Little kabotya’s story  作者: 富田林喜志
梅雨の嘘つきな少女
15/17

ホタテ・・・

◯ 草原・朝


     熊さんに怒られている恵。


熊さん「外には行っては行けないと言っただろ!」


めぐみ「だって行ってみたかったんだもん」


     むすっとするめぐみ。

     

熊さん「外は危ないんだ」


めぐみ「なんでさ、熊さんだけ知っててずるい」


     熊さんから離れていくめぐみ。

     めぐみを見ている熊さん。

      ×  ×  ×

     夜になっている。

     寝たふりをしているめぐみ。

     めぐみを見ている熊さん、寝ているのを確認すると離れていく。

     熊さんが見えなくなると起き上がり走っていくめぐみ。

      ×  ×  ×

     壁の近く、少年を探しているめぐみ。

     少年を見つけるめぐみ。

     少年は分厚い本にペンで何か書いている。


めぐみ「あっ」


     少年に近づいていくめぐみ。


めぐみ「こんばんは」


     気がついて手を振る少年。

     少年は文章を書いている。

     それを壁の外から見ているめぐみ。


めぐみ「何書いているの」


     少年、ページをめくって白紙を探すとそこに文章を書き始め「小説だよ」と書く。


めぐみ(どうやら外には私の声はちょっとは聞こえるらしい)


めぐみ「私も君の声が聞いてみたいな」


     少年、キョトンとした顔をしている。

     声に出ていたことに驚く少女。


めぐみ「良いから小説の続き書いて!」


     壁の外に雨が降っていることに気がつくめぐみ。

     

めぐみ「それ、何?」


     本に「雨っていうんだよ、ずっと降っているんだ」


めぐみ(そこには雨というものが降っているらしい)


めぐみ「私のいるところには降ったことがないよ」


     本に「そうなんだ」と書く少年。


めぐみ「あっそろそろ帰らないと熊さんに怒られちゃう、じゃあね」


     いなくなるめぐみ。

     少年の本の表表紙には熊さんが書いてある。


◯ 熊原家・玄関


     学校に行く準備をしている熊原。


熊 原「行ってきます」


 恵 「行ってらっしゃい」


熊 原「ちゃんとくる時は連絡してね」


 恵 「昨日みたいなことはしません」


     外に出る熊原。


◯ 熊原家・外


     雨が降っているのを確認する熊原。

     ため息をつく熊原。

     かばんから原稿用紙を出す熊原。


◯ 道


     歩いている今永。

     鼻歌を歌っている達子が家から出てきてばったり会う。

     

今 永「おう、達子」


達 子「あ、おはよう」


今 永「一緒に学校行くか」


達 子「仕方ないわね。ついてってあげる」


      歩く今永と達子。


達 子「そうだ、今度うちのホテルおいでよ。ホタテが採れ始めたのよ」


今 永「そうか」


達 子「嫌いになった?ホタテ」


今 永「もう食べ物ひとつではしゃぐ年でもないだろ。お前はまだそんなんではしゃいでるのか」


達 子「そんなことないわよ。良いから今度来なさい」


今 永「そっか・・・。じゃあ今日行くわ」


達 子「えっ?今日」


今 永「ダメだったか?」


達 子「いや、別に」


今 永「今日部活がないんだ。真希が実家に用があるとかでな」


達 子「そういうことね・・・。わかったわ。学校終わったら行くわよ」


今 永「おう、刺身と焼きもいいな」


達 子「意外と楽しみにしてるみたいじゃない」


今 永「まあ、好物だからな」


     後ろからやってくる熊原。


熊 原「おはよう、2人とも」


達 子「おはよ」


今 永「おはよう」


     並んで歩く3人。


今 永「ああ、そうだ。お前もくるか」


熊 原「何に?」


     動揺する達子。


今 永「今日、達子んとこのホテルにホタテを食べに行くんだ」


     達子の表情を見る熊原。


熊 原「ああ、僕は恵の面倒を見なきゃないから。2人で食べてよ」


達 子「それなら仕方ないわね」


今 永「もったいないな。今度また食いに行こうぜ」


熊 原「うん、そうするよ」


     校門につく3人。


◯ 浅虫高校・教室


     ホームルームが終わり席を立つ生徒たち。

     今永の元へくる達子。


達 子「行くわよ、昇太」


今 永「おう」


◯ ホテル「凪」・キッチン


     エプロン姿の達子、ホタテを剥いた後、切って盛り付ける。

     今永の前にホタテを出す達子。

     ホタテを食べる今永。


今 永「(大きな声で)うめえ!」


達 子「今、焼いてるのもあるからゆっくり食べなさい」


今 永「うめえ、うめえよ」


達 子「時期じゃないけどマグロモスクしつけたから」


     マグロを食べる今永。


今 永「マグロもうまい」


     どんどん食べ進める今永。

     キッチンへ入ってくる達子の母親の優香(48)。


優 香「あら今永くん。来てたの。ホタテね。達子ちっちゃい頃今永くんに食べさせるために練習したものね」


達 子「お母さん、その話は毎年聞いてるから、もう良いって」


今 永「そうなのか」


達 子「あんたも毎年聞いてるんだから、茶化すな」


優 香「今永くんは今年も夏ちゃんと手伝いに来るの」

 

今 永「はい、こんな毎日美味しいもの食えるんだったら手伝いにきますよ」


優 香「よかったわね達子」


達 子「お母さんはもう良いから」


優 香「はいはい」


     出ていく優香。


達 子「ほら、焼いたのもできたから、こっちも食べなさい」


今 永「おう!(食べた後)こっちもうめえ!」


◯ 今永家・夜


     帰ってくる今永。


今 永「母さん、ただいま。達子んとこからホタテももらってきたから」


孝 司「助けてくれ、我が息子よ」


今 永「今日はなんだ」


孝 司「今日はパンの中に味噌汁が」


今 永「それはまだ美味しそうじゃねえか」


孝 司「確かにな。よし飯にするぞ」


     リビングに戻る孝司と今永。


京 子「おかえり」


今 永「ただいま、今日達子んとこからホタテもらってきたわ。ギリギリらしいから早めに食べてくれって」


京 子「じゃあ、明日はホタテの味噌汁ね」


孝 司「刺身でいいだろ、なあ昇太」


今 永「俺はたくさん食ってきたから味噌汁でもいいぞ」


孝 司「裏切ったな我が息子よ」


今 永「裏切ってなんかないさ。俺は母さんの味噌汁が好物だからな」


京 子「今日も昇太はお利口さんね」


孝 司「くそ、俺はのけものか。明日こそは味噌の拘束具を、しかし味噌を拘束しても第2第3の味噌が」


今 永「いただきます」


京 子「そうねこういう時は無視をするのが一番ね。いただきます」


孝 司「くそっくそ!」


◯ 熊原家・夜


     机に向かっている熊原。

     棚にある本の数々と綺麗にファイリングされている原稿用紙。

     原稿用紙をビリビリに破く熊原。

     ご飯が載ったお盆を持って入ってくる恵、机に置くと原稿用紙を拾う。


 恵 「商売道具なんだからこんなことしないの」


熊 原「ごめん」


 恵 「ごめんって言われるより一言ありがとうの方が嬉しいのよ」


熊 原「ありがとう」


 恵 「先にご飯食べなさい」


熊 原「ありがとう」


     ご飯に箸をつけようとする熊原、ホタテを見つける。


熊 原「ホタテ・・・」


 恵 「食べたかったんでしょ、本当は」


熊 原「恵にはやっぱり敵わないな」


 恵 「そりゃ、私はあなたの理想の女の子ですから」



     




 




     

      




     


     

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