歌が好きだった君
◯ 旧浅虫高校・校庭
今は使われていない浅草高校の校庭。
地面にはスコアボードのように書かれていて高橋の名前とソラの横に◯や×が書かれている。
息を荒げている高橋。
余裕そうなソラ。
ソ ラ「次の勝負は何ですか。高橋さん」
高 橋「ちょっと待て、一週間夜通しだぞ」
ソ ラ「いやです」
高 橋「そんなに楽しいか」
ソ ラ「はい」
高 橋「次はそうだな。ここで一つ絵でも描くのはどうだろう」
ソ ラ「うーん、スポーツがいいです」
高 橋「今の疲れているときに体を動かしてギブアップさせる作戦か」
ソ ラ「はい!そうして宇宙に連れて行きます」
満面の笑みのソラ。
高 橋「そうだな、受けてたとう。次はサッカーで行こう。今は4対5でソラの優勢ここからは折り返しだ。ルールは一緒楽しんだほうが負け。感動したほうが負け、よし後半戦だ」
サッカーのPK戦をしている高橋とソラ。ゴールはなく地面にはゴールらいんがある。
蹴る高橋、高くて止められないソラ。
ソ ラ「今のは入ってません」
高 橋「そうか?入ってただろ」
ソ ラ「そういうのはずるいです」
高 橋「勝負の世界はそんなに甘くないぞ」
むすっとするソラ。
高 橋「わかった、わかったごめん、ごめん。でもお前の反応速度があまりにもいいもんだからな」
ソ ラ「許します、ですが次からは本気で行きます」
高 橋「お前、まだ本気じゃないのかよ」
攻守変わる髙橋とソラ。
ソ ラ「行きますよ」
髙 橋「よっしや、こい」
蹴るソラ、取れない髙橋。
ソ ラ「入りました!」
髙 橋「今のはポールがあったら弾き返されてただろ」
ソ ラ「今のはポールがあったらこう当たってパン、パーンってゴールに入ってましたよ」
笑うソラ。
髙 橋「そうか、そうか」
走ってボールを取りに行く髙橋。
ソ ラ「(小さな声でしみじみと)楽しいな、あっ!」
髙 橋「(遠くから大きな声で)お前今、楽しいって言っただろ!」
ソ ラ「つい声に出てしまいました」
髙 橋「よし、俺の勝ちな」
ボールを片付けてベンチに戻る2人。
髙 橋「はあっ、疲れた」
むすっとしているソラ。
髙 橋「どうした」
ソ ラ「これじゃまるで私だけが楽しいみたいです。そんなに私と部活するのが楽しくないですか?」
髙 橋「俺は部活なんてちゃんとやったことないただの手伝いだからな」
ソラの表情。
髙 橋「何をやってても勝って俺に頼んだ奴が楽しそうにしている、それを見て自分も楽しかったと実感する。昔色々あってな、自分じゃ楽しめなくなってしまったのさ」
ソ ラ「それは勿体無いですね。こんないい星なのに・・・」
ソラを見る髙橋。
髙 橋「よし次こそは美術だ!まずは互いの似顔絵を描くところからスタートだ!」
× × ×
絵を見せ合う髙橋とソラ。
写実的なソラの肖像画と子供が描いたような高橋の肖像画。
笑う髙橋とむすっとするソラ。
ソ ラ「なんでそんなに笑うんですか。それにこの絵も私はもっと可愛いです」
髙 橋「すまん、すまん。弟たちが昔描いてくれた絵にそっくりだったもんでな。昔描いてくれたんだ。4人全員合計4枚、名前を隠しても今もどれが誰のかがすぐにわかる」
ソ ラ「絵で人を楽しくさせる何本当にできるんですか」
絵をしみじみと見ている髙橋。
髙 橋「ああ、とても簡単さ。この勝負、俺の負けでいい」
何かを思い出す髙橋。
◯ 旧高橋家・居間・回想
部屋に飾られている4枚の似顔絵。
ギターを弾いている髙橋。
それを見ている公平、洋平、甚平、五平、高橋のそばに来る4人。
洋 平「にいちゃん、何やってるの?」
高 橋「ああこれか?にいちゃんな、ギター始めたんだよ」
◯ 旧浅虫高校・校庭
喜んでいるソラ。
ソ ラ「やった!」
高 橋(何だ?この記憶?)
ソ ラ「高橋さんの代わりに◯書いときました」
高 橋「ああ、ありがとう」
ソ ラ「次は何します?あと7戦です」
高 橋「次はそうだな・・・武道とかどうだ?柔道とか弓道、剣道なんてのは」
ソ ラ「剣や弓はいやです・・・」
高 橋「そうだったな、じゃあ、テーブルゲームなんてのはどうだろう、カードに将棋、ボードゲームいろんなものがあるぞ」
ソ ラ「それで行きましょう」
高 橋「よし、わかった」
地面に書いたスコアボードを木の棒を使って三つ斜線で埋める高橋。
高 橋「でも、まずは飯の時間だ」
◯ KFC
頼んでいる高橋。
テーブルで待ってるソラ。
ソ ラ「コンポタージュ・・・」
戻ってくる高橋。
高 橋「お待たせ、ほら」
コーンサラダがたくさんお盆に乗っている。
ソ ラ「これは?」
高 橋「コーンサラダだ。コンポタが好きならこれもと思ってな」
スプーンで突いた後食べるソラ。
ソ ラ「美味しいです」
高 橋「だろ?」
見て微笑む高橋。
勢いよく食べるソラ。
高 橋「ゆっくり食え」
ソラを見ている高橋。
◯ 旧高橋家・夕・回想
テーブルに座っている高橋と美沙希。
帰ってくる央平。
高 橋「おかえり」
央 平「ただいま、今日はケンタッキーだぞ」
高 橋「やった!」
央平のそばに行く高橋、KFCの袋をもらうと中を漁りコーンサラダを出す。
高 橋「コーンサラダ!」
◯ KFC
ぼーっとしている高橋。
高 橋(俺がコーンが好きだったから・・・)
ソ ラ「高橋さん、高橋さん」
ソラを見る高橋。
ソ ラ「一緒に食べましょ」
コーンサラダをもらう高橋。
高 橋「そうだな」
食べ始める高橋。
高 橋「美味しいな」
高 橋(あれ俺なんで)
涙がボロボロ落ちてくる高橋。
高 橋(涙が)
ソ ラ「あれ?感動してるんですか?高橋さん。それでは私の勝ちですね」
涙を拭う高橋。
高 橋「泣いてなんか、ねえよ」
コーンサラダにむしゃぶりつく高橋。
◯ 浅虫高校・部室棟前・夕
部室棟前で聞き込みをしている真希と今永。
真 希「ありがとうございました」
いなくなる生徒。
真 希「やはりサッカー部もそうでした。一週間前に高橋さんは全部の部活からものを2人分ずつ借りています。今永さん、この辺で何でもできる広場をどんどん探しましょう」
今 永「おう」
走り去る真希と今永。
◯ 旧浅虫高校・校庭・夕
シートの上に正座をしている高橋とソラ。
高 橋「俺の勝ちだ」
ソ ラ「ずるいです。お茶の勝負だと言っていたのにコンポタを入れるなんてずるいです」
高 橋「勝ちは勝ちだ」
地面の上のスコアボードに◯をつける高橋。
空欄は後一つ。
高 橋「次は・・・吹奏楽か」
ソ ラ「何ですか、それは」
高 橋「楽器で演奏する部活だ。俺が教えてあげよう」
ソ ラ「それは嬉しいです。私の星を助ける手立てになりそうです」
◯ 道・夕
走っている今永と真希。
今 永「次は、遠いが県立運動公園にいこう。あのバス停だ」
真 希「わかりました」
◯ 旧浅虫高校・校庭・夜
ギターを弾いている髙橋。
弾けないソラ。
ソ ラ「やはりそんな1日でできるほど簡単ではありませんね」
髙 橋「そうだな、明日もやってみるか」
ソ ラ「そんな時間は・・・そうだ。私、歌が歌ってみたいです」
髙 橋「歌か・・・わかった。カラオケ行ってみるか」
ソ ラ「はい!」
◯ 道・夜
歩いている髙橋とソラ。
ソ ラ「やはり、地球はいい星です」
髙 橋「そうか?」
ソ ラ「はい、私の星にないものがたくさんあります。娯楽や芸術。楽しいものがたくさんです」
髙 橋「逆に地球になくてソラの星にあるものとかないのか」
ソ ラ「ありますよ。人を10億人は一気に殺せる爆弾やある種のDNAを持っている生き物を絶滅することができる毒ガスとかなら」
髙 橋「ああ、そんなもの残してかないでくれよ」
ソ ラ「そんなことはしませんよ。こんな綺麗な星を汚すわけにはいきません」
髙 橋「この星だってあるところでは今も戦争が行われている。そんな綺麗なところばかりじゃない」
ソ ラ「ですが地球では戦争を終わらせた歴史があります。歌や絵、そしてスポーツによる人の命を取らない戦い。それを学ぶために私はきたんです。前も言いましたが私の星では1万年も戦争が続いています。戦争を終わらせた歴史のない、娯楽や芸術がない星です」
髙 橋「俺がそこに行ってどうするんだ?」
ソ ラ「髙橋さんにみんなに娯楽を教えてもらうんです」
髙 橋「そんなんで本当に終わるのか」
ソ ラ「はい、前も言いましたが、あの高橋さんとあった日、私は落ちていた音楽プレーヤで流れていた音楽と高橋さんにもらったコンポタに救われました。みんな感動してくれるはずです。それに、髙橋さんはオールラウンダーですから」
高 橋「お前、本当にその曲の人好きだよな」
ソ ラ「はい、初恋です。今は高橋さんの方が好きですけどね」
笑顔のソラ。
◯ 県立運動公園・夜
歩いていている今永と真希。
真 希「ここもハズレでしたね」
今 永「ああ、そうだな」
地図を見ている真希。
真 希「今永さん、ここって何があるところですか」
今 永「そこは今は空き地になってる」
真 希「昔は何があったんですか」
今 永「浅虫高校と合併した浅虫工業高校があった場所だ」
真 希「そこです!そこに行ってみましょう」
今 永「いいが、もう着くのは8時半頃になるぞ」
真 希「そこで無理だったら諦めましょう」
◯ カラオケ・夜
入る髙橋とソラ。
電気をつける髙橋。
座る髙橋とその隣に座るソラ。
デンモクをとる髙橋。
ソ ラ「なんですか、それは」
高 橋「これで打ち込むと曲が流れるんだ。ほら打ち込んでみろ」
ソラ、打ち込み決定を押すと曲「わくわくディザスター」が流れる。
驚く髙橋。
ソ ラ「髙橋さん知ってるんですか?髙橋さん?」
◯ 髙橋家・回想
髙橋と央平。
髙橋はノートに何か書いている。
央 平「何を書いているんだ?純平」
髙 橋「歌を書いてるの」
央 平「そんなに歌が好きか?」
高 橋「うん!大好き!僕ね大きくなったらスターになるんだ!」
◯ カラオケ・夜
涙を流している髙橋。
曲を止めるソラ。
ソ ラ「どうかしました?」
高 橋「いや」
高 橋(そうだった、音楽だってコンポタだって)
高 橋「一緒に歌おう、ソラ、マイクをとってくれ」
ソ ラ「わかりました」
流れる曲。
画面には 「わくわくディザスター 作詞 高橋純平 作曲 高橋央平」の文字。
歌い出す高橋とソラ。
高 橋(全部好きだったのは俺だったんだ、この曲は俺の作詞にとうさんが曲をつけてくれた平成5デビュー曲わくわくディザスター)
♪ わくわくディザスター ♪
目が覚めると 今日も何か思いつき 始まる研究
これとそれをああやってできる船体 どう思う?
君を乗せたらどこまでも行ける夢の船
風神も驚くどこまででも行ける 無敵艦隊
僕は 天才 (天災) ディザスター
僕の発明もみんなにとっては
(天災) 天才 ディザスター
やりたいことはたくさんあるけど
夜になったら歯磨いて 寝るよ
弟たちが笑ってる ママもそれを見て笑ってる
どろんこだらけの僕を見て
災い転じて福となすだね
いつもは怒ってる雷親父も 驚く僕は雷神さ
僕は 天才 (天災) ディザスター
暑さには麦茶 寒さなんてまやかし
天才 (天災) ディザスター
バカと天才は紙一重っていうけど
熱が上がったら 薬飲んで 寝込むよ
みんな僕の研究を見て
バカは風邪引かないっていうけれど
僕はちゃんと風邪引けるよ
それでも 元気に歌うよ
だから 僕は
天才 (天災) ディザスター
僕の発明も みんなにとっては
(天災) 天才 ディザスター
いつか 空だって飛べる
天才 天才 ディザスター
お酒は飲めないよ 梅干しも食べれないよ!
それでもみんなをわくわくさせる
僕は 子供な this is the star
途中で歌うのをやめるソラ。
ずっと泣きながら歌っている高橋を見ているソラ。
◯ 旧浅虫高校・校庭
スコアボードに高橋の横に×を書く高橋。
高 橋「俺の負けだな」
イヤホンをしているソラ、高橋の木の棒を手からとるソラの横にも×をかく。
ソ ラ「いえ、引き分けです。あなただったんですね。この地球に来て最初に学ぶことは孤独だと聞いていました。でもこの音楽を歌ってくれた人のおかげで私が最初に知ったのは暖かさ、そして電源が切れた時に孤独を知りました」
校庭に着く今永と真希。
真 希「今永さん、静かに」
ソ ラ「あなただったんです。最初に私を助けてくれたのも、次に私を助けてくれたのも、今助けてくれたのも、昔好きだったのも、今好きなのも、コンポタを教えてくれたのも全部全部。だから。私の星に」
高 橋「俺もお前が好きだ。だがそれはできない」
ソ ラ「どうしてですか」
高 橋「俺はもう一度歌わなきゃない」
ソ ラ「私の星で歌えばいいじゃないですか」
高 橋「俺が歌を教えた弟たちと、それから俺をスターにしてくれた優しい父親と」
ソ ラ「・・・。やはり兄弟には敵いませんね」
高 橋「すまない」
ソ ラ「じゃあ、一生懸命歌ってスターになってください。私の星にも聞こえるほど大きな大きなスターになってください。満足しました。私はフラれたので、星帰ります。女の子に土産ひとつもくれない高橋さんなんて大っ嫌いです。
今永さんの方が優しかったです」
音楽プレーヤーを握るソラ。
高 橋「すまない」
ソ ラ「また勝負しにきます。次は私の星の歌とあなたの星の歌で」
消えるソラ。
高橋の元にくる今永と真希。
泣いている高橋。
高 橋「今永、真希、3ヶ月ほど東京に行ってくる」
今 永「何をしに」
高 橋「俺の好きな音楽と父さんを連れ戻しにだ」
真 希「ちょっと待ってください」
真希、高橋にフィルムを渡す。
真 希「確かに、ソラさんは浅虫にいました。これがその証です」
フィルムには野球で勝った後マウンドで嬉しそうなソラとハイタッチしている嬉しそうな高橋が映っている。
◯ とある星
ソラの声「ただいま」
ドアの開く音がする。
ソラの姉のカナタが出てくる。
カナタ「ソラ?」
ソ ラ「お姉ちゃん!」
勢いよく抱きつき押し倒すソラ。
ソ ラ「何から教えてほしい?野球?コンポタ?それとも歌?何でも教えてあげるよ。私はオールラウンダーだから・・・」
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