第8話 ノットイセカイチート
馬鹿野郎!! 向うには人質ならぬ猫質がいるんだぞ!!
俺は倉庫のドアから内部の様子をそっと伺う。
倉庫内には薄暗く荷物が山積しており視界は最悪だ。
誘拐犯が何処に潜んでいるかもわからない。
ミニチュア・モンスター・メーカーで小さくデフォルメされたケイブバッドを創り出し倉庫内に放つ。
閉鎖空間における音波を利用したケイブバッドの索敵能力から隠れられる者などいないだろう。
ノディールは馬鹿正直に少し開けた見通しの良い場所で仁王立ちしている。
そんな的を狙わない誘拐犯などいないだろう。
ノディールの死角に移動する誘拐犯をケイブバットが捕捉する。
『ボウガンで狙ワレテイルワ。急イデ!!』
無我夢中で走り出す。
走り出している最中に何で走り出してんだろうと考えたりした。
ただ目の前にいるノディールの腰に手を回し……誘拐犯の凶弾ならぬ凶矢からノディールを守りたかった。
「きゃぁぁぁっ!? あぁぁぁん♥」
全身性感帯状態なのか驚きの声が淫声に変わった。
「ば、馬鹿にゃ!! 触るなっていったにゃ!? って、何でお前……矢が……背中に!? ス、スレンダーキャットは、物音にも敏感にゃ、お前に助けられなくても矢なんか……余裕で避けられるにゃ!!」
おろおろしたノディールは、矢を握り……抜こうかどうか混乱している。
「忠告してやる。矢を抜くと血がドバーッと出ちまうぞ? くっくっく。それに、この子猫の命が欲しかったら諦めて降伏しろ」
誘拐犯が子猫にナイフを突き立て現れた。
「降伏するから、こいつを……た、助けてにゃ!! このままじゃ、死んじゃうにゃ!!」
猫娘の太ももにうつ伏せになっている人物の顔を見て誘拐犯達は青ざめる。
「こ、こいつは……。アンナ・ハーリンとこの性奴隷じゃねーか!! や、やばいぞ!? どうする!?」
「や、やっちまうか、今なら目撃者もいねー」
「馬鹿言うな! こいつら冒険者ギルドから依頼されて来たんだぞ!? バレちまう!!」
「に、逃げるか!?」
「あぁ、逃げるしかねーだろ!! だが、その前に……ボスに、ボスに確認を!!」
ケージとノディールは両手両足を縛られ子猫と一緒に大きな木箱の中に閉じ込められてしまった。
ノディールはケージに寄り添いながら泣き続けた。
「私、無力にゃ……。こんなに普通に話せる奴と出会ったのに……。私が、もっとちゃんとしてれば…ケージは怪我しなかったのにゃ!!」
そのとき、木箱が開けられた。
「おい、大丈夫か? まだ生きているか?」
フード付きの外套で素顔を隠しているが、声や背格好から少女だとノディールは思った。
「た、助けてくれるにゃ!?」
「そうだ。この兄ちゃんには借りがあるからな。あいつらが戻ってくる前に逃げるぞ」
そう言って縛られていた両手両足の縄をナイフで切った。