第6話 所詮は猫、ボールが大好き
「これ、これにするにゃ!」
ノディールさんが選んだ初級クエストは、迷子の子猫探しだった。
「な、何よ、その顔は!?」
「いや、猫が猫を探すって……ちょっとおもしろいなって」
「わ、私は猫じゃないにゃ!! スレンダーキャット族にゃ!!」
ポカポカじゃなくドガドガと俺のお腹に猫パンチが入る。
一発、一発が重くて強い!?
おいおい、力加減ってのを知らないのか!?
HPバーがあったら、六割ほど減ってるぞ!?
「止めろ!! な、内臓が口から出る!!」
「何それ、気持ち悪いにゃ!?」
「ほら、ケージ、戯れてないで行ってらっしゃい!」とご主人様。
「ケージくん、ノディールさん、がんばってね」
ソフィアさんも応援してくれている。
俺とノディールさんは、手を振りながら冒険者ギルドを後にして、子猫が行方不明になった依頼主の家の近くへ移動する。
今までノディールさんに釘付けだった冒険者ギルドの酔っ払い共は、豊満な果実を持つソフィアさんの存在に気が付いたらしく、ロリ好き殺しのノディール派と爆乳好き殺しのソフィア派に別れ、どちらが優れた女性なのかという議論を一日中繰り広げていたことは俺の知らない話だった。
「なぁ、子猫探しを選んだということは、何か勝算でもあるのか? 意外とペット探しは難しいらしいぞ?」
「ふっ。スレンダーキャット族は、猫語と猫探知の能力を持っているにゃ」
「猫語!? 猫探知!? 使いどころが難しそうな能力だな……」
「お前こそ、どんな特技があるにゃ?」
「えっ? 性技?」
「ば、バカ者!! そ、そういう事を聞いてるんじゃにゃい!!」とまた赤面した。
くっ。こいつ面白いな。からかい甲斐があるぞ!?
「もしかして処女なのか?」
「あっ! 当たり前にゃ!! まだ14歳!!」
「何だよ、年下かよ。じゃ、ノディールでいいな」
「くっ? 性奴隷のくせに何か偉そうにゃ……」
「おい、ノディール! ほれ!!」
ミニチュア・モンスター・メーカーで小さくデフォルメされたスライムを創り出す。
『怒ラレテモ知ラナイデスワ!?』
基本的にフォルムが変わるだけで、核となる部分はアラクネのときと同じだ。
また創り出した時点で意識を共有するため、俺が何をするかも理解っているのだ。
まん丸に丸めたスライムを地面に転がす。
「ニャン♥」
ノディールは、丸まったスライムボールを目掛けて飛びかかる。
人目をはばからず、スライムボールとじゃれ合うノディールを温かい目で見守る俺と周囲の通行人。
「ハッ!? お、お前、なんて事を!? は、恥ずかしいじゃにゃいか!!」
ボカッとスネを蹴られる!?
いやいや、ち、力加減!!! 足の骨が折れる!!
「馬鹿力すぎるだろ……」
しゃがんで涙目で訴える俺にノディールは腕を組んで見下ろす。
「ふんっ! スレンダーキャット族は戦闘民族にゃ。本来、お前なんぞに護衛されるまでもニャイ!!」
あーっ、確かに冒険者ギルドで魔物と戦っていたって言ってたな。
しかし、護衛の意味は戦闘力を指しているんじゃないんだよな。
ノディールが俺、つまりご主人様の関係者であることを示すために、一緒にいるんだよな……、多分。
つまり、ご主人様の庇護下に置いておくほど、ノディールは重要人物ってことなのか?
本日は、ここまでです。
再就職のために勉強するので……。
というかストックがありません。