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最弱勇者の成り上がり〜最強スキルは使いません〜  作者: 水無月かえで
第一章 異世界勇者
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第五話 攻撃は最大の何とやら


 市場には、防具や武器などを取り扱うお店や、食料や道具を取り扱うお店。また、外れには酒場など娯楽の施設もあった。そして、丁度中央に位置する場所には噴水広場があり、ティアが言うにはそこで仲間探しをするのが定石らしい。

 店内で飛び交う言葉は、聴き慣れた日本語だった。異世界だし、言葉が通じないなんて事はあっても仕方ないだろうと思っていたが、杞憂だった様だ。


ーーそんな市場に俺は今一人でいる。


 ティアは、途中まで一緒にいたのだが、市場に着くなり顔色が悪くなった。

 具合でも悪いのか?と言うと、ティアは昔から人混みが苦手なんだと告げた。

 だが、苦手だからと言ってこの世界に来たばかりの俺を一人で行かせるのは出来ない。と、俺に小さいピアスを渡してきた。

 人混みにいる間はこのピアスに入る?そうだ。

 そんなに、多才ならティアが倒したらいいんじゃないか?と言うと、彼女は静かに首を振った。

 曰く、女神は殺戮を行う事は出来ないらしい。


ーー初耳だった。

 だが、一般人を召喚出来たり異世界に干渉できるんだから不思議では無い。

 むしろ、女神と言われて腑に落ちた。

 彼女の自由奔放な性格や口調はまさに俺の中の女神像そのものだったからだ。

 

 それにしても、中学時代に友人とノリで穴を開けていたから良かったものの、もし俺が開けていなかったらどうするつもりだったのだろうか。


 そんな事を思いながら、一人で市場をぶらつく。

 店前を通ると客引きや店主に声をかけられた。見るからに無知そうな俺を一から冒険者仕様にコーディネートしたいのだろうか。

 まあ要するに、明らかに初心者な俺は良いカモなのだろう。

 俺はのらりくらりと声かけを交わし進んで行った。ふと気付くと先程の賑やかな雰囲気とは打って変わり静かな雰囲気の通りまで来ていた。

 

「外れまで来ちゃったのか…。」


 そう呟き、来た道を戻ろうと振り返ったその時。


ーーここに入るべきだ。


 と、俺の直感が告げた。

 何故だかは分からない。気のせいかもしれない。だが、こういった冒険に置いて直感というのは時として凄まじく頼りになったりする。

 めぼしいものが無かったら戻ればいい。

 そんな軽い気持ちで俺はドアを開けた。


 中にいたのは、赤い髪をポニーテールにしている眼鏡を掛けた女性だった。

 黒のコートを羽織り、黒いブーツを履いている。まさに、知的なクールお姉さんといった印象を受けた。


「綺麗なピアスだね。」


 第一声がそれだった。

 低めの声だが、何故か耳が心地良かった。

 俺は、ハハッと照れ笑いとも愛想笑いとも取れる反応をした。


 周りを見渡す。

 が、店というにはおかしかった。

 何故なら、品物が一つもないからだ。


「すみません。ここは何を売っているんですか?」


「あぁ?アンタ何も知らずにここに来たのかい?そりゃ幸運と言って良いのやら何と言ったら良いのか…。」


 どうゆう意味か分からなかった。困惑する俺に女性は続ける。


「アタシはシェリル。んで、この店はオーダーメイドで武器を作ってる。アンタもてっきり作って欲しいのかと思ったが違う様だね。」


ーー俺の勘は外れたらしい。

 

 序盤も序盤にオーダーメイドで武器を作るなんて聞いた事がない。そもそもはじまりの街と言われるこの場所でそんな商売成り立つのだろうか。

 ともかく、今の俺はここに用は無い。


「武器屋だったんですね。ただ俺、防具も何も無くて、オーダーメイドって高いだろうし予算が…」


 そう言って、店を出ようとしたのだが、


「いくらだ?」


 シェリルが言った。

 カモられる!そう思った。だが、いきなりだったせいで俺は予算を伝えてしまった。

 それを聞くとシェリルのレンズの奥が一瞬光った。様に見えた。


「10000円か…。それにアンタまさか…。よし!じゃあ特別だ。この剣を売ってやる。」


 聞き間違いかと思った。

 俺はその予算で武器だけじゃ無く防具も買うと告げたのに、武器だけで10000円?冗談じゃ無い。


 と思ったが、攻撃は最大の何とやらという様に、良い武器を最初に買うのは別段悪いと言う訳ではない。

 序盤の敵は攻撃力も弱いし動きも遅い。それなら高い攻撃力で倒してしまった方が効率が良い。

 だが、騙されてる可能性も大いにある。

 何せ俺は、見るからに弱い。

 そんな奴が大金(と言えるかは分からない)を持って現れたら、騙そうとする奴がいても不思議じゃない。それにオーダーメイドの店なのに何故いきなり武器を売ってくれるんだ。

 そんな疑念が俺の中に生まれた。


「まぁ、そう疑わないで。一回手に取ってごらん。」


 差し出してきたのは一本の剣。

 ただの普通の剣に見える。本当に、10000円もするとは思えない。

 そう思いながらも、言われた通り手に取ってみた。

 途端、ただの剣だったものが青白い光を帯び始めた。それだけじゃ無い。初めて持った筈なのにまるでオーダーメイドで作ったかの様に手に馴染んだ。

 

「アタシの目に狂いは無かった様だね。どうだい?買うかい?」


「……買います!」


 脳みそより先に口が動いていた。気のせいだったらそれでも良い。この店を見つけた時の直勘といい、今日はきっとそれに従うが吉だと思う。



 そうゆう訳で、ティナからもらった10000円は剣へと変わった。


 会計を済ませ、シェリルに御礼を言い店を出ようとしたその時。

 シェリルが思い出した様に、


「あ、そうだ。その剣の光が違う色になったらもう一度持っておいで。」


 と言った。その後、「オマケだよ。」と回復薬をくれた。



 俺は、ほんのさっきまで疑ってしまっていた事を心の中で謝り店を後にした。




 

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