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4話



さて、第二階層に降りてきたが様相は第一階層と何ら変わりはない。

相変わらずダンジョン内なのにまるで昼のように明るいのには違和感を感じざるを得ないが、それ以外は至って純ダンジョン風である。我々日本人のイメージするダンジョンと変わらない。


第二層に降りて暫く探索を続けていると、第二層では初めての魔物とエンカウントした。

魔物の姿は完全に狼である。


[ダンジョンオオカミ]:ダンジョン産のオオカミ。基本的に群れで行動する。


説明文にもある通り、本当に群れで行動している。眼の前のオオカミも一匹や二匹ではなく5匹も居る。レベルは5とそこまで高くはないが、いかんせん数が多いので、その難易度はウサギの比ではないだろう。


だけど、少なくとも僕の敵では無かった。スキルに全任せでゴリ押しすれば何ということもない。それに、知力が低いせいか殆ど連携も取れずにバラバラに攻撃してくるので対処もしやすい。これが連携が取れていたならば強さは一段と増すだろう。


まあ、だからといって侮っていいというわけではない。数が多いので一匹に集中し過ぎていると別の個体から攻撃はくらうし、なんと言ってもオオカミだ。普通の生活をしていれば殺意剥き出しのオオカミと出会うことはまず無い。その殺意を克服しなければ思わず逃げ出しそうだ。

だが、向かってくるオオカミをロングソードで斬り倒す。次から次へと斬り倒す。

スキルの補正のおかげか、次にどの様なステップを取ればよいのかよく分かる。


『スキル気配察知をインストールしました』


そしてまた新たなスキルがインストールされた。この気配察知のスキルは対オオカミ戦において絶大な効果を発揮した。

例えば一匹のオオカミに集中していても、何となく他の狼の居場所も分かるようになった。これに気を払ってさえいればわざわざ全体に目を向けなくても良いようになる。

それは攻撃に集中できるという点ではとてもメリットだろう。


「····ふぅ」


ある程度オオカミと戦ったので一息ついていた。

徐に腕時計を見る。


「もうこんな時間か····」


針は午後10時を指していた。朝の9時くらいからダンジョンに居るのでかれこれ13時間もダンジョンに居ることになる。


「次からは直接来れるし、今日はここまでにしようか」


千里眼ではダンジョン内部までは見通せないので、転移できるようにするには直接この目で見なければならない。今日のところは二層目まで来れたので、次からも二層目から探索を再開することができる。


なので後顧の憂いもなく転移を発動させて自宅に帰った。


「ただいま····」


家には僕一人しか住んでないので勿論誰の声も帰ってこない。

僕は冷蔵庫を開いて、いくつかの食材を取り出して簡単に料理する。


そうして出来上がったのはパスタだ。麺を茹でて出来合いのミートソースを掛けただけの非常にシンプルなものだ。


「いただきます」


こうして独り寂しくご飯を食べるのももう慣れたことだ。


「ごちそうさまでした」


ものの数分で食べ終わると食器を洗って片付けて、すぐに風呂に入った。というのも、なれるまでは魔物の返り血を浴びまくったので髪や皮膚に血が付着しているためだ。

今日着ていた服はもう着られないぐらいに返り血で真っ黒になっている。


お風呂でさっぱりしたあとはお茶を片手にパソコンでニュースを開く。


「ふーん、また新しくダンジョン発見か····」


記事には更に新たなダンジョン(洞窟)が発見されたこと。

日本政府が近々自衛隊を用いてのダンジョン調査を公式に行うこと。

魔法に関する法律の施行が検討されていることなど、ダンジョンやスキル関連についてこれでもかというほど載せられていた。


更には自身のスキルをネット上に動画としてアップしている者もいた。たいていは魔法に関するものが多く、中には失敗して酷い惨状になっている動画もあったのでじきに削除されるだろう。


こうした社会の変革はニュースを見るだけでも急速なのが分かるし、僕は実際にダンジョンに行って体感してきた。

ダンジョンから有益な資源(魔核)が産出される以上は国にとってダンジョンは必要不可欠になるし、そのうち民間開放に向けての動きも活発になってくるだろう。


もちろんその時は僕もダンジョンに入るための資格なり許可なりは取りたいし、これからもダンジョン探索は継続していくつもりだ。

特に若者にはその傾向は多いのでは無いだろうか?


この閉塞的で息苦しく、生き辛い現代社会の中で、新たな潮流――――革命として、ダンジョンはその中核を担うだろう。


「んと····何々、首相が緊急記者会見を決定····日時は9月1日の午後1時から。各局は特番を組んで放送予定と」


一体何を発表するのだろうか?まだダンジョンのことについてはなにも公式には発表されていないが、ダンジョンということはともかく、例の洞窟がただの洞窟ではない事は既に周知の事実となりつつある。

ネットの考察スレなどではネット民達によってダンジョンではないかとの予測が立ちつつある。


では今更何を発表するのか。少なくともダンジョンに関して正式に認めるとかそういう感じではなさそうだ。いや、政府が認知するという意味ではそうなのかも知れないが、やはり何かあるように感じられる。


まあ、その時まで待つしかないだろう。


気付いたら0時を回っていたのでパソコンをシャットダウンして、歯を磨いて寝た。



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