3話
一通り探索を終えたので少し休息を挟んで再びボス部屋の前へとやって来た。
「ボス、どんなのだろう····?」
このフロア、ウサギだらけだったし、もしかすると大きなウサギがフロアボスとか?
いや、それはあまりにも単純すぎるのか?
「まあ、入ってみれば分かることだよね」
意を決して歩みを進めると、ダンジョンの入口の扉の時と同じく、巨大なその扉はひとりでに音も立てずにゆっくりと開いた。
「····でかいウサギだし」
その部屋の中央にでんと鎮座していたボスはどう見ても大きなウサギだった。
いや、ウサギにしては大きすぎるので巨大というのが正しいのか。目測でも全長で2メートル以上はありそうだ。
見た目はどうしょうもなくウサギだったが、これまでのウサギとは明らかに放っているプレッシャーは桁違いに感じられる。
どうやら僕が近付くまで無反応らしいので今のうちに鑑定してボスの戦力を測っておくことにする。
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名前:ジャイアントダンジョンウサギ
性別:♂
レベル:10
体力:80
力:50
速度:200
魔力:30
知力:20
HP:800/800
MP:250/250
保有スキル
[脚力強化Ⅱ(等級:ノーマル)][ウサギの王Ⅲ(等級:種族専用)]
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[脚力強化]:保有者の速度に補正。
[ウサギの王]:配下の種族ダンジョンウサギの全能力値を10%強化する。
総合的なステータスは僕よりも圧倒的に下だが、その速度だけが厄介だ。単純計算で僕の2倍の速度に対応しなければならないのだから。
『スキル疾風走破をインストールしました』
····もう何も言うまい。
[疾風走破]:保有者の速度に補正×200%
これで数値上では僕の速度があのボスウサギよりも100上回った筈だ。
「何か台無しだけど····行くか!」
僕はその場を蹴って走り出す。その速度は今までの比ではなく、体感で新幹線くらいのスピードは出ている。これでも軽くなので、下手すれば時速1000キロは超えるのではないか。そう思った。
数瞬の間にボスウサギとの間合いを完全に詰めた僕は、予め握っていたロングソードを吸い込むようにウサギの首めがけてすれ違いざまに振り抜く。
「っ流石に一撃はいかないか····」
手応えは感じたが、ウサギは少し血を流しただけでまだまだ元気そうだ。
鑑定でもう一度HPを確認しても残り750/800とある。
「今の一撃で50ダメージか···きついな」
これでは単純計算でこれと同じ威力の攻撃をあと15回当てる必要があることになる。それは体力的にはともかく、精神的に大変だ。なにか手っ取り早くダメージを与える手段は無いかと考える。
「····そうだっ!」
咄嗟のアイデアが思い付き、手を照準器代わりに突き出す。
「ファイヤーアロー!」
頭の中で火の矢をイメージし、ウサギに向けて飛ばす。
すると、実際に照準を向けている掌の先に火でできた矢が生成され、それは寸分違わずウサギへ飛んでいき、見事命中した。
「よしっ!」
今使用したのは[魔法想像]のスキルの能力だ。このスキルは名前の通り、自分の頭の中でイメージしたものをそのまま魔法として発動できる。その代わり明確なイメージと、魔法の規模に応じたMPが必要だ。
本来は詠唱する必要もなかったが、詠唱したほうがより具体的にイメージできるため、魔法の完成度も上がる。····とはもっぱら鑑定による説明文様々だ。
またHPを確認する。
650/800
「おおっ!やっぱり魔法のほうが減ってる!」
ついでに自分のMPも確認する。
950/1000
一発50MPかぁ····これが多いか少ないかはまだまだ分からないけど、少なくとも今ウサギを倒す分には十分足りていた。
「ファイヤーアロー!」
もう一発、見事命中した。
「ファイヤーアロー!」
そこからはかなり単調で一方的だった。
僕がウサギの攻撃を躱す→無防備な背中にファイヤーアロー
という工程で戦闘を続けたらものの数分でボスウサギ····ジャイアントダンジョンウサギを倒すことに成功した。
ボスウサギの討伐報酬は、先ずはボスウサギから直接ドロップした飴玉くらいの魔核。
そしてボスウサギを倒したあとに出現した木製の宝箱からは先程のウサギの素材で出来ていそうな見た目のローブだった。
[ウサギのローブ]:装着者の速度+50
そして何か、また例のよく分からない声が聞こえて
『世界初のボス討伐報酬として位階を付与』
とか言われた。
位階がなんの事かは全く分からなかったが、何となくステータス関連の事だと思ったのでステータスを開いてみたらドンピシャだった。
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名前:間宮藍華
性別:男
年齢:19
レベル:11
体力:120
力:120
速度:360(+50)
魔力:120
知力:120
HP:1200/1200
MP:1200/1200
保有スキル
[御都合主義(等級:ユニーク)][鑑定(等級:ノーマル)][黄金律(等級:神話)][魔法適正(等級:希少)][魔法想像(等級:幻想)][千里眼(等級:伝説)][転移(等級:伝説)][疲労回復(等級:ノーマル)][剣術(等級:ノーマル)][経験値効率化(等級:神話)][疾風走破(等級:聖遺物)]
位階:2(聖人)
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聖人····キリスト教の例のアレ。何か列聖された人の称号じゃなかったっけ?
このステータスが他人に知れたら色々とマズい部分が増えてきた····
しかも位階に数値があるということはまだまだこれ以上になってくるって事だよね?
取り敢えず鑑定で聖人を調べてみると
[聖人]:位階の一つ。ステータス上昇幅が2倍になる
[位階]:通常の生物の枠を外すもの。神に至るまでの段階的な進化補助。上げる方法は不明。
····いや、ツッコミどころしかないけど。聖人はチート。位階は····最早バグでは?
僕はどうなっちゃうんだろうか?