列車2両目
あなたは人を殺めたら悪としますか?どんな理由だとしても。
私は今電車に揺られている。このままどこかに行こうと思うがまだ行先を決めていない。だからこそ誰かに決めてもらい、旅をしたいと思う。
車内はなぜか私しか乗っていない。旅にしては少し寂しい。外はなんだか懐かしい雰囲気漂う風景で、今の日本人が忘れているような時間の流れである。具体的なことを言うのであれば、いつもより時間の流れが遅い気がするという事だ。私の人生の分岐の時よりも遅い気がする。急ではあるが昔のことを少し語ろう。
私は、皆も知っていると思われる車の大手会社で働いていた。ひとたび玄関から外を出て目の前の道路を見渡せば必ずわが社の車を見かけることができる。そんな会社の私は製造部にいる。工場のおじさんだ。自慢ではないが、いずれ製造部のトップに立つのではと言われている。しかし言われ続けて早や数年。もう噂が消えかけて、トップに立つこともないのだろう思う。高校を卒業して、今の会社に就職し、今の製造部に入って、二十数年。今の課の副課長を任されて、数年。もうそろそろ一個位が上がってもいいのではと思っても、お偉いさんの親戚の大卒が入ってきて五年で課長になり、私の上司になった。
「おーい!副課長さん、これやっといてもらえる。」
「しかし、これは課長の仕事では。」
「はぁ何言っての上司のいう事聞けないの?」
こんなやり取りが毎日のようにやってきて、挙句の果てに、自分でやってもないのに担当の名前のところは自分の名前を書きやがる姑息な奴だ。それだからわざと数値をいじってクビになるほどのことをやったら上は何と言ったか「こんなこともあるよね。今度から気を付けるんだよ」と声を掛けられおしまい。当の私は裏に連れていかれ、ボコ殴りにされた。ばれないように服で隠れるところを数十発殴られ、挙句の果てには「お前よく間違えたな、俺の出世がかかっているんだよ。今度同じようなことをしたら殺すからな。」と怒鳴られた。正直疲れていた。それから、また仕事を丸投げされて、一年がたった。辞令が発表され、奴は部長になり、私はやっとの思いで課長になり、これからも変わらない上司と部下の関係なのだと思った瞬間だった。
こんな人生を送っていたのかと思うと悲しく思えてきた。涙溢れそうな目で電車の窓にそれを送ると、そこには今の日本にないであろう、きれいという言葉では語るに足りないくらいのきれいな川が流れていた。周りには桃色の桜が咲いていて、花びらが散り、桃色の雨が降っている。その花びらが川に乗り所々きれいな桃色の川になっている。私は少し想像に浸っていた。秋には紅色の川があってまたきれいなのだろうと。また見に来たいと思っている。
さてここからが私が旅に出てきた訳を語ろう。私はあの辞令が出た後も、部長になった、あの課長の罵倒が続いていた。私はもう狂い始めていた。狂い始めて、少し月日が流れたころの夜の時の話だ。
その夜は皮肉にも、雲一つない、満月の夜で、いつもよりあたりが明るくて、神様がよく人の行いが見えるそんな夜の時であった。居酒屋が数多く並ぶ商店街の一つの店の前で一人のロングの一つ結びの髪型で、スタイルもモデルと思わせるような感じの女性がある男性に無理やり飲みに誘われていた。私も酒を飲んでいたが一瞬で、酔いがさめた。「助けよう」そう思い男性の肩に手をかけ、「ちょっと嫌がっているじゃないか。」そう優しくけれども少し強めで、声をかけた。しかし、振り返った男性は、酔っていた部長であった。「はぁあん」と部長はこっちを向いたときに「あぁぁ!お前使えねぇ課長じゃねえかぁ。俺にくちだしするなぁー!」と言いながら部長の右手で私の右目を強く殴った。その時だ。プチンと何かが頭の中で切れたような音がした。頭の中での何かをはなく、精神的な何かだろう。私もそこからの記憶は何もない。しかし次の日から部長は無断欠勤していた。それもそうだろうその日の昼に警察が会社に訪れ部長の話をして帰り、部長が死んでいたという噂が流れていた。その噂が私の耳に入った時、忘れていた。いや、忘れようとしていた何かが温泉のように湧いてくるような感覚であった。詳しく言うのであれば光がない空間にいきなり強い光が入ってきたようなパット明るくなったような感覚だ。
「そうだあの時、俺はあいつを殺したんだ。」
そう誰かに話すわけでもなくいった。しかし周りはそうではなかったみたいだ。私の噂は瞬く間に広がり、会社にいれなくなった。クビとかではなく、精神的にだ。そして今に至る。というわけだ。
「次は、三途駅、三途駅。終点です。お忘れ物なさいませんようご注意ください。」
そう放送が入る。寝かけていた私を起こすかのように。降りる準備を済ませ、寝ないように席を立ち、ドアの前に人は俺だけだが、陣取る。それから直ぐに駅に着き、ドアが開く。そこには駅員が一人、青いブレザーの制服を着ていた。
「お客様、長旅ご苦労様です。あなたは天国に行かれますか?地獄に行かれますか?」
「はい?」
私は驚いた。ついて一言目がそれかよ。つまり私は死んでいるということか?
「あなたは家から出てすぐの道路を歩こうとしたとき車が来ていることを気づかずに跳ねられ死んでいますよね。」
私の疑問を察したように顔色一つ変えずに答えてくれた。
「そういえばそうだったような。私は地獄に行くのですか。天国ですか。」
と少し怖がりながら聞いた。
「うぅん、そうですね。あなたは人を殺しています。それはどんな理由であろうとも、犯してはならないことでしょう。そしてあなたは殺した瞬間に、あの部長から解放されることで喜びにあふれたでしょう。特にあの罵倒される日々からの解放の喜び。あなたは人を殺して喜んだ。それこそ最も犯してはいけないことだろう。それだけ見ると地獄に行くのがふさわしいと思います。」
駅員は私の現世の記憶を話して、ひと呼吸おき、続ける。
「だから地獄に行け、とは私は言えません。なぜならば行先を決めるのは私ではないからです。どうします駅長、どちらにします?」
と駅員は貴方に尋ねた。「天国にします?地獄にします?」と付け加えて。
列車2両目完
読んでいただきありがとうございます。どうでしたか?楽しんで聞けましたか?
なたはこの男性にどんな結果を下しましたか?考えていただけたり、感想で教えていただけるとと幸いです。
誤字や文章が分かりずらかったら申し訳ありません。
では、また。




