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きらきらぼしのヘアピン

作者: 友利りた

ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデートゥーユー、ハッピーバースデーディアゆきちゃん、ハッピーバースデートゥーユー

 ゆきちゃんはまた同じ夢を見ていました。一ヶ月前の、ゆきちゃんの五回目の誕生日の日の夢です。たくさんのお友達と一緒にお祝いをして、ゆきちゃんは顔が真っ赤になる程幸せだったのです。その日貰ったたくさんの誕生日プレゼントも、ひとつひとつがとっても素敵で、全部がゆきちゃんの宝物になっていたのです。

 その中でも一番気に入っていたのは、ママから貰った、きらきらの星の飾りが付いたヘアピンでした。かわいくて綺麗で、貰った日からずっと、頭につけたり、ポケットに入れて一緒にお出かけしたりして大事にしていました。

 その、きらきらぼしのヘアピンを渡すとき、ママはこう言っていました。「ゆきちゃんはまだ小さくて、いつもすぐ迷子になっちゃうけど、このヘアピンをつけてれば、みんながゆきちゃんを見つけてくれるからね」と。

 だから今日も、ゆきちゃんはきらきらぼしのヘアピンをつけて幼稚園へ行きます。

「いってきます、ママ」

「はい、いってらっしゃい」

ぶろろろろ、ぶろろろろろ

 ゆきちゃんの幼稚園バスはとても古くて、走るときにいっつも、大きな大きな音を出します。幼稚園の先生より、そのバスの方が年上なので、「バスさん」と呼んで、みんなで大事にしているのでした。運転手のよこやまさんは、バスさんと一番長い付き合いで、「バスさんはどこにでも行けるんだよ、宇宙にだって行ったことあるんだよ」といつもバスさん自慢をしています。

 幼稚園が終わって、帰る時間になりました。

「ゆきちゃんバイバイ」

「また明日ね」

バスさんに乗っていた子達が、ひとりひとり降りて、最後は、一番おうちが遠いゆきちゃんだけになります。そういう時は、ゆきちゃんはいつも一番前の席に座って、よこやまさんのバスさん自慢を聞かせてもらうことにしています。バスさんが生まれた時の話や、食パンの国に行った時のお話や、魔法の世界に行った時の話なんかもあります。今日はなんのお話かなって、ゆきちゃんは毎日楽しみにしています。

「今日は、カエルの国に行った時の話をしようかな」よこやまさんがそう言って話し始めようとしたその時…

 ききーががががが

すごく大きな音がして、前からトラックが走ってきました。

あっ、ぶつかる

ゆきちゃんは怖くなって目を閉じました。

 ききーがががががが…

「ゆきちゃん、大丈夫?」

よこやまさんの声が聞こえて、ゆきちゃんは目を開けました。

「トラックは?」

ゆきちゃんが聞くと、よこやまさんはにっこり笑って、「それくらい、バスさんならちょちょいのちょいさ」と言いました。

ちょちょいのちょい?

ゆきちゃんにはちょっと意味がわからなかったけれど、よこやまさんの笑顔でゆきちゃんは安心することができました。

「でも大変なんだ。ガソリンがなくなっちゃってなぁ、この世界からどうやって帰ればいいんだろう」

この世界?

ゆきちゃんはハッとして、バスさんの窓の外を見ました。

 おはなおはなおーはなさん

 かわいいかわいいおーはなさん

 今日はバスさんもこんにちは

 ここは妖精の国ですーよー

窓の外は、一面のお花畑で、その周りを、小さな葉っぱのドレスを着た妖精さん達が歌を歌っています。

 まいごのまいごのゆーきちゃん

 かわいそうなゆーきちゃん

 もう帰れないゆーきちゃん

 星のヘアピンきらきらだけど

 かわいそうなゆーきちゃん


そうだ、星のヘアピンだ

ゆきちゃんはバスさんの外に出て、頭につけていたきらきらぼしのヘアピンを右手に持って言いました。

「私はここだよ、ママ、ママ!見つけてくれるって言ったよね!」


 ゆきちゃんはここだよ、ママ、ママ

 星のヘアピン輝いて

 小さな大きなひかりだよ

 ゆきちゃんはここだよ、ママ、ママ


ゆきちゃんの為に妖精さんたちが歌いだすと、空に浮かぶ雲さん達が端の方に体をよけて、大きな大きな太陽さんが顔を出しました。太陽さんがむむむと力を込めると、強い光がさしてきて、きらきらぼしのヘアピンにその光が突き刺さり、きらきらぼしのきらきらが、目の前いっぱいに拡がりました。

「ゆきちゃん、ここにいたのね」

ママの声が聞こえて、ゆきちゃんは安心して、なんだか眠くなってきました。

あれ?

目が覚めると、ゆきちゃんはベッドの上でひとりで寝ていました。あれは夢だったのかなあと思って少しがっかりしています。かわいい妖精さんや、ママに見つけてもらえたこと、そしてバスさんの冒険にゆきちゃんも連れて行ってもらえたことが、とても嬉しかったのに。

手の中に握っていたきらきらぼしのヘアピンに聞いてみます。

あれは夢だったの?

ヘアピンは、きらっ、きらっと輝いて、ゆきちゃんに何か話しかけたみたいでした。

そうだね、明日よこやまさんとバスさんに聞いてみよう

ゆきちゃんは明日を楽しみにして、布団の中でふふふっと笑いました。


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