電脳神の苦悩
新参神様視点です。
「ーー顔を上げて。」
そう声をかけられ、僕はゆっくりと顔を上げる。
ーー息を呑む。
そこに座するのはまさしく全ての最上位。
この空間の全てを支配する存在感。
言葉を発することすら許されないほどの威圧感。
この世のものとは思えない美貌。
その全てに。
心の底から恐怖を感じた。
顔を上げただけなのに、それすらも畏れ多く感じてしまう。
冷や汗が僕の額を流れる。
息をするのも忘れて、ただ固まる僕に、その存在はまた声かけた。
「ーー名は?」
一瞬、何を聞かれているかわからなかった。
なは?なわ?縄?
ーーダメだ、頭が混乱してわからない。
軽くパニックを起こしている僕に助け船を出すように、僕の側にいる男は目の前の存在に声をかける。
「ーー輝夜様。お目覚めになられたばかりで大変恐縮でございますが、少し、お力を抑えられた方がよろしいかと。でなければ、この新参の神は輝夜様の威圧感にあてられ、言葉を発することすら困難にございます。」
ーー輝夜様。
そう呼ばれた目の前の神はその男を一瞥した後、
無表情のまま頷いた。
ーーふと、力が抜ける。
僕にかかっていた威圧感が幾分か軽くなったようだ。
忘れていた呼吸を再開させる。
まぁ、ともあれ。
あたりの状況を確認するだけの余裕はでできた。
とりあえずは、今の状況を確認するために、今この瞬間までの僕のことを思い出してみようか。