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First world〜Devil side〜  作者: カイト
8/10

エクセリアVSダンダルド

今回すこし長めです。

タイトル通りですが戦う描写は少なめだと思います。

 私は急いで城へと戻っていた。

 ギリン村へ戻ると、クジャル軍の進軍が始まったとの情報を得たからだ。

 湖の魔物を討伐したことだけ伝えるとすぐさま城へと引き返す。

 城へと帰る警告付近に差し掛かった時にいつもの渓谷ろ雰囲気が違っていたのでふと足を止める。

 渓谷なのに谷がなくなっていているような印象を受けて気にかかる。

 近づいて確認すると、渓谷の塞がっていない部分にはクジャルの旗を持った軍勢が見える。

 警戒しながら辺りに目を配っているとなんとなく状況判断がついた。


(ダンダルド殿が一肌脱いでくれたのだな....)


 ダンダルドがつまらなそうの顔に手を置いて空を見上げているのに気づいたエクセリアはダンダルドに近づいて行く。

 一定の距離まで近づくとダンダルドはエクセリアに気づいて笑顔で迎える。


「エクセリア殿下、すこし遅かったですな、このダンダルドがもう全て終わらせておきましたぞ」


 ダンダルドの丁寧な言葉に笑いそうになるエクセリアだが、ここは自分も魔王としてしかるべき言葉を選ぶ。


「よくやった、ダンダルド殿、そなたには後で褒美を与える、してこのものがギリン村を占めるクジャル国の領主か....」


 塞がった穴の上からエクセリアがクジャル国の王、リュネスを見下ろす。

 ダンダルドに命じて同じ位置に地形を浮上させる。

 エクセリアの姿を見てリュネスは驚きの表情を見せた、幼い容姿の中にある気迫のようなものを感じる。

 エクセリアの前に跪いて頭をたれる。

 出せる賭け札を考えるが、出た答えはこれだった。


「...、エクセリア殿下....、この命はどうなっても構いません...、残りの兵達は生きて帰らせてやってください...」


 虫のいい話をしているのはわかっている。

 だが、今一番必要なのは残りの兵士達に生きて帰ってもらうことだ。

 残りの兵まで失えばもう我がクジャル国には防衛力すらほぼ皆無となる、それだけは避けたい。

 もともとこの進軍も大量の国土が必要になったので役人と秘密裏に考えた作戦だった。

 それも潰えた今となってはより多くの兵士達の命の方が重要だとリュネスは考えた。

 しばらくの沈黙。

 嫌な汗が額から流れ落ちるのを感じる。

 すっと出された小さい手が私の前に出される。


「何を言うかクジャルの王よ、そなたにはやるべきことがあるだろう?、飢えたギリンの民の援助や支援、そのほかにもいろいろと問題は山積みだ!、そんな時代に汝がいなくては民衆が混乱するだろう?、これを気に我が国と友好関係を築きより良い時代にしていこうではないか!」


 前に出されたか細い手は小さいが、たしかな暖かさを感じる。

 リュネスは涙を流しながらその手を握り返す。


「勿体無きお言葉、ありがたく頂戴致す....」


 リュネスは震えた手でしっかりとエクセリアの小さくて大きい手を握りしめる。

 ここに長年話さえしてこなかった国同士が繋がったのである。

 そしてリュネスは語り始める、この進軍の理由を。

 クジャル国はもう限界付近まで来ていたのだった。

 ギリン村だけではない、それ以外の小さい村や町などにも強力な魔物が現れはこびりもう国として機能するかも怪しい状態だったのだ。

 これは最後の賭けだった、2万の兵もクジャルの民最後の抵抗と言えた。

 ここで魔王城を攻め滅ぼせなければクジャルの民行き場を失う。

 その恐怖との戦いは想像を絶するものだったのだろう。

 エクセリアはリュネスに約束をする。

 必ずその魔物達を駆除してクジャル国に平穏を与えることを。

 しかしその前の問題を解決しなければいけない。

 エクセリアはもう一つ約束を付け足す。

 これから先クジャル国と我が国は同盟国として同列の扱いにすると言うことを。

 決して下には見ずに上にすることもない、そう同列だ。

 エクセリアの目指す王とは一人で全てを支配するものではない。

 皆が助け合い幸福な国を作ること、それがエクセリアの目指す王。

 それが絶対王者である魔王の役目だとエクセリアは考えている。

 もちろんこれはエクセリアの考え方だ、父上や母上が同じ考えかはわからない、だが今はエクセリアが王として城を管理している。

 ならばエクセリアのとる行動は一つ。

 自分の理想とする王道を貫く、ただそれだけだ。

 ダンダルドはそんなエクセリアの堂々とした立ち振る舞いに好意抱く。


「必ず横暴を働く魔物は駆除してみせるが、その前に民への食料配布が先だな、先にそれを急ぐが良いか?クジャルの王よ」


 エクセリアはリュネスに尋ねる。

 リュネスは口を震わせながら「かたじけない」と呟いた。

 だがその会話が終わると不意にダンダルドがエクセリアに話かけてくる。


「何か用か?ダンダルド殿」


「ああ、エクセリア殿下、今欲しい褒美が決まった、今この場でそなたと刃を交えて見たくなった!」


 ダンダルドが戦闘態勢に入る。

 ダンダルドの急変ぶりにエクセリアはすこし戸惑ったが、実際のところ今の自分がどこまでダンダルドと渡り合えるのかは興味がある。


「すまないクジャルの王よ、民への食料配布がすこし遅れるがこの勝負の見届け人になってはくれまいか?」


 リュネスは頷いて結末を見る見届け人となる。

 エクセリアとダンダルドは空に戦いの舞台を移す。

 地上は二人の戦いの舞台にしては狭すぎる。

 お互いに睨み合いの硬直状態が続く。

 先に動いたのはエクセリアであった。

 ダンダルドに近づいて上級の魔法を二回ほど当てるがダメージはほとんどない。

 ダンダルドは真正面から受け切りエクセリアに殴りかかる。

 ダンダルドの剛腕がしなり、空を切る音とともにエクセリアに被弾する。

 巨体に似合わず素早い動きだ、小柄なエクセリアとほぼ同速度の素早さに地を割くほどの怪力。

 それを受けたエクセリアは空中で飛ばされた方向とは逆方向に風魔法を連発して威力を極限まで弱める。

 とはいえ殴られたことに変わりはない、かなりの衝撃が体を走り抜ける。


「今のを耐えきるか、成長しましたなエクセリア殿下」


 ダンダルドは自分の拳を耐えて見せたエクセリアに敬意を表すかのように喋る。

 エクセリアも口をぬぐいダンダルドに向かって語る。


「私もいつまでも子供ではない、ダンダルド殿に教えてもらった力の使い方もしっかり覚えている」


 二人は笑いあう。

 過去を思い出してエクセリアの成長具合に胸を馳せるダンダルドは追撃を行う。

 豪腕を振るいその衝撃波でエクセリアを攻撃してくる。

 衝撃波だけでもエクセリアの上級風邪魔法と同程度の威力だ。


(相変わらずデタラメな強さだな...、じーじ...)


 だが、エクセリアの顔から笑顔が消えることはない、むしろこの戦いを楽しんでいるように見える。

 魔力を込めて水の盾を作り出して衝撃波を吸収する。

 ダンダルドはそれを見ると戦法を変える、土魔法で生成された大岩をエクセリアに投げつけてくる。

 巨大な体積をもつ大岩にダンダルドの怪力が組み合わさった豪快な技だ。

 流石に水の盾程度では守れない。

 回避に専念して風属性の魔法で緊急回避を行う。

 しかしこの時にエクセリアはミスを犯した。

 一瞬ダンダルドから大岩の方に注意を向けてしまったのだ。

 その隙を突かれたエクセリアは背後を取られて首に手を置かれた。


「チェックメイト...ですな....」


 ダンダルドは静かに呟いた。

 エクセリアも目を瞑り静かに敗北を認めた。


「やっぱり強いな....じーじは.....」


 うっかり本音が漏れ出てしまったので口を覆う。

 それを聞いたダンダルドは大声で笑う。


「エクセリアも強くなったな、退屈な試合ではなかったのう」


 本名呼び捨てで呼ばれたエクセリアはふっと笑いダンダルド抱きしめる。


「じーじ....」


 静かにダンダルドの暖かさを感じながら今だけは魔王ではなく子供のように甘えるエクセリアだった....。




本気の殺しあいではないですがダンダルドとエクセリアにははっきりとした実力差があります。

これは戦場を経験したことのあるダンダルドとまだそこまでの場数を踏んでないエクセリアとの差です。

とはいえエクセリアの魔法のセンスはピカイチで受け身を取るために工夫していたりする部分も見られましたのでこれから先が楽しみです。

まだ10歳でここまで戦えているので実際エクセリアはチートです。

でも二人とも実は本気では相手をしていません。

お互いに専用の武器を持っているのですがそれを使わない試合でした。

次の回はすこし羽休み回になると思います。

次回、エクセリアの入浴


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