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ニュクスの灯ビザーファイル・黒蝶の羽撃きは、異世界の煌めき。  作者: 七枝 繁
イスー連続少女殺人事件編
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第八話 気が付けば金色で伝説のスーパーな大猿戦

第八話 気が付けば金色で伝説のスーパーな大猿戦




二人と別れた私は、折角なので依頼の一つでも受けてみようかと探すことにした。

ついでに他の冒険者がどんな行動をするのかコッソリ観察する。ギルドの様子を見ていると思ったよりオシャレな感じではなかった。

なんていうか、もっとファンタジー感あふれるドラマがあるようなイメージを勝手に思っていたが、なんていうか表現するなら日雇いの職安みたいな感じだ。

大概の人が疲れ切った感じで仕事を探して、どうにかこうにか依頼をこなして報酬を取りにくる。

魔物を相手にする外仕事だ、装備はそれなりに使い古され小奇麗なハズはなく命がけで依頼をこなす。見れば見るほど労働感あふれる場所でもあることに気が付く。

ただ少ないがそうではない人もみられる。恐らくランクの高い冒険者なのかもしれない。

装備の性能やスキルや能力、知識の高さが余計な労力を抑えているのだろう。小奇麗で疲弊してる感じがない。

そんな疲労感を感じさせない中に個人的に興味をそそる人物がいる。大きな猫がそのまま服を着て剣をもっている感じの冒険者だ。

猫のアニマワイルディだと思われる。なんていうか今日一のファンタジーだろう。ついガン見してしまったので気が付かれてしまったのかこちらに振り向いた。

慌てて目を逸らしてごまかすが多分バレてるな。ついでに言えばあれは強いぞ多分。

猫なんで所作なんかは判断しずらいが、なんか漂ってるオーラみたいなもんの格が周りと違う。

ごまかす為に掲示板に掲げられている依頼書を適当に取るだけとってみる。

おや?たまたま取った依頼書だがこれは中々いいんじゃないか?エビルエイプの頭3つ。

荒野で迷子の時にひたすらお世話になった魔物ハザードマップを出して確認する。歩いていくには距離があるが、少し飛んで行けば日帰りで行けそうだ。

ただ残念な事に報酬はちょっと一日分の宿屋の料金には届かないな。他の依頼と比べて楽そうな割に残ってるのは料金が低いのかもしれない。

エビルエイプを瞬殺できる実力なら他にもっといい値段の物があるだろう。かといって、実力が足りない者が命を賭けるには安すぎるって感じか。

お金にはまだまだ余裕があるし、試したいことも色々増えたからこのくらいの依頼を適当に受けておくことにした。

そんな分けでたまたま手に取った依頼書から、初めてのお仕事が始まるのだった。

ちなみに原因となった長靴を履いた猫|(仮)は既にいなくなっていた。

それから冒険者ギルドで依頼を受けると、依頼品を入れる土嚢袋のような物を貰う。

ギルド内ショップで便利そうな魔法の掛かった雑貨をいくつか買ってギルドを後にすると街をそのまま通り抜けて初めて入った時とは反対側の出入り口から街を出る。

さて、ここから10㎞あたり東にいるらしい。飛んで行けばすぐなのだが気になるのは、いままで飛んでいる人間を見たことがない。

ここでうかつに飛んでへんな目立ち方もしたくない。うーむ、レゲメトンを開いてデフォルトのデータに隠匿系魔術が登録されていないか確認してみる。

確かあった記憶があるが使わないので覚えていない。

姿が隠匿出来ても魔力を使用してる分、向こうの世界じゃ魔力感知系に簡単にひっかかてしまうので余り役に立たなかった。

幸いにも基本魔術セットの中を検索する見つけられたので空いているスロットにセットする。


「アイム・ストーン」


魔力を展開して元々設定されていた音声入力をすると魔術を発動させる。っていうかどんだけ適当なワードを設定をデフォルトにしてんだ。

まぁ地球ではそれだけ使えない魔術だったからな。

この魔術は見られるだけなら、ただの石ころの様に思われて存在を一切疑問にも思わないという状態だ。

魔力感知には引っかかるが微弱な魔力なのでこの世界の高い魔素率と魔法の普及率を考えれば、そうそう簡単に特定される事はないだろう。


「フライト」


ふわりと私は浮くと低空飛行で飛び立つ。いくら隠匿魔術を使っているとはいえ、高い所を飛べば人目につきやすく発見されるリスクが上がるので低めに飛ぶ。

途中、他の魔物がうろついているが気にせず飛ぶ。隠匿魔術が聞いているのか向こうも全く気付く気配がない。

15分くらい飛ぶとそれっぽい場所が見えてきたので減速する。

本で見た通りのエビルエイプを一匹発見すると、ポシェットから愛刀 "光切兼忠" を取り出す。

飛んだまま近づき、そのまま刀を鞘から抜く動きと切る動作を一つで行う、"抜き打ち" で首を刀身でなで、そのまま宙返りしながら少し離れた所に着地する。

すると、少し時間差で頭が血圧で突然飛び跳ねる。

結構なスプラッタシーンになってしまったが、切られた事も気が付かずに痛みを感じる事もなく死ねたはずだ。

すると予想通りに耳鳴りがする。


  "飛翔魔法・エアロウイング"

  "潜伏術・イグノアハイド" 

  "剣技・ブリンクソード" 

  "刀技・刻乱落とし"


脳内に4つの魔法とスキルが浮かび上がる。

なるほど、やはり魔術や技を使うだけでは、この世界の魔法やスキルにはならないようだ。それらを使って魔物を倒すことが条件らしい。

さて、覚えたスキルはどう使うのだろうか?イメージして、それっぽい動きをすればいいのかね?

とりあえず、ブリンクソードとイメージして抜き打ちをしてみる。何も起きずただの"抜き打ち"だった。

クリスティアがスキルを使ってたのを思い出す。


「ブリンクソード!」


イメージしてから声に出すと、勝手に体が動く。しかも、何か普通の"抜き打ち"とは違う気がする。

もしかしてと思い、近くにある茂みに向かってさっきよりも集中してスキル名を口にする。

茂みの草木がバッサリ斬れた。刀の刃が明らかに届いてない部分まで切れている。おおよそ50㎝は伸びている。

ついでに感覚だけではあるが抜刀速度が上がっている気がする。

なるほど、肉体の技術だけでやるよりも付加効果がつくのか。面白い。

さて、そろそろエビルエイプの血もある程度は抜けたころだろう。エビルエイプの遺体に近づく。

血が滴ったまま回収するのは嫌なので切り口を火炎魔術で軽く焼いてからギルドから貰った回収用土嚢袋に入れてポシェットにいれる。

のこったエビルエイプの体は少し実験に付き合ってもらうことにする。

どのみち頭のない猿の死体が転がっているのは景観上も衛生上もよろしくない。

気になっているのは、同系統の魔術と魔法を同時にできるか?である。ちょっと難しそうだができなくはないだろう。多分。

とりあえず試しにこちらの世界の魔法。"餓喰の黒蝶" を使用する。イメージして魔法名を言葉にするだけで発動する。

オリジナルとほぼ同じで5匹の蝶が舞う。一旦そのまま何もない空中で蝶を破裂させる。

次は、そのイメージを維持したまま声を出しながら、続けてレメゲトンにも意識を傾け詠唱を短くした起動用の言葉を口にする。


「餓喰の黒蝶」


「餓喰の魂塊・改」


今度は10匹の黒蝶が舞う。

魔法の "餓喰の黒蝶" と魔術の "餓喰の魂塊・改" 両方が発動することに成功。

魔法の蝶を3匹、魔術の蝶を2匹をコモンオークの遺体に飛ばして消し飛ばす。

これも成功だ。個別に制御できるようだ。意識をかなりそちらに向けるので他に何もできなくなる欠点はあるが。

残りの蝶をどこまで遠くに飛ばせるかを試してみる。

両方とも視認しずらくなる距離で魔力のリンクが切れた。有効範囲から外れて自然に消失したようだ。

ちなみに、"餓喰の黒蝶" は全ての蝶が消えるまで再使用は出来なかった。 "餓喰の魂塊・改" の方は二重起動するにはレメゲトンのリソースが足りない。

やはり全てが消えるまで再使用は不可能である。

魔法と魔術、効果は同じでも発動方法が違うので上手く使えばかなり便利かもしれない。逆に間違って扱うと、出来るはずのことが出来なくなりそうだ。

こんどは、魔法 "エアロウイング" で空を飛んでみる。魔術の"フライト"とは少し違うようだ。背中に羽が生えたかのような不思議な風の感覚がある。

背中なのではっきり見えないが羽という物体自体は生えてはいないようだ。そのまま飛びながら "イグノアハイド" を使って二匹目のコモンオークを探す。

ちなみにこの "イグノアハイド" 潜伏術と出ただけあって 魔法ではないようだ。魔力は消費してはいるようだが魔法陣もないし何かが確かに違う。

既存のスキルや魔法がある場合はそちらに置換され、オリジナルで近しいスキルが存在しない時は新しく設定されるといった感じなのだろうか?

そうこうしているうちに2匹目のエビルエイプを見つけたので別のを試してみる。

今度は魔術で刀に炎を付与して無駄に血が出ないように首を焼き切る。

するとやはり耳鳴りがする。


  "魔法剣・ヒートブレード"

  "火炎魔法・フレイムショット"


二つの魔法とスキルが脳内に浮かび上がった。

ほほぅ?これはヒートブレードに必要な魔法ということでフレイムショットも覚えたと見てよさそうだ。

試しにフレイムショットをエビルエイプの死体に放ってみる。

火種の様な物が走ると目標に着火して勢いよく燃え出した。だが、燃やし尽くすことなく表面の肉がこんがり焼けたくらいで消えてしまった。

火の初期魔法みたいな物かな?ちょっと気になっていたので更に実験することにした。

レメゲトンにある魔力増幅魔法陣、魔力圧縮魔法陣、魔力高流動魔法陣の三つを展開して

何となくの今までの感覚でフレイムショットに混ぜ合わせて先ほどのこんがり肉に向かって放ってみる。

野球ボールくらいの光の玉が高速で着弾したと思ったら轟音を立てて肉片も残さず爆風と共に地面ごと消し飛ばしてしまっていた。


「・・・」


これは・・・。想定外の威力だな。

魔法陣の特性上、時間を対価にした効率アップなので通常のフレイムショットに比べて発動にタイムラグが僅かにあるのが欠点だが、威力は別次元の魔法かもしれないな。

これで、魔物を倒せば何か別の魔法になるのだろうか?そう考えているとさっきの爆音に反応したのか、3匹ほどイビルエイプがやってきた。

イグノアハイドで気配を消すと爆心地に集まって来たので強化されたフレイムショットを叩き込む。

激しい爆音と共にイビルエイプは消し飛ぶ。

あと一つ頭が欲しかったのでできる限り地面を狙ったのが功を奏したのか一匹分だけ頭は何とか残った。ただ、そこそこ毛は焦げてしまっている。

それを確認するとお馴染みの耳鳴りと共にイメージが沸く。


  "火炎魔法・フレイムストーム"

  "火炎魔法・メテオフレイム"

  "爆炎魔法・ブレイジングエクスプロージョン"


おお、3つも覚えた。しかも最後は火炎魔法でなくなった。

手にした魔法は試したくなるもの。ほら、やっぱりいきなり実戦で使うにはやっぱりあぶないよね?

というわけでブレイジングエクスプロージョン使ってみる。

うん?・・・起動はするんだけれども発動までに至らない。

なんていうか魔法というよりこちら側に問題っぽい。

うーん、感覚的ではあるが、魔力圧が必要な臨界点まで上り詰められてない感じがする。

ふむふむ、こちらの魔法もある程度向こうの魔術と同じ法則で何でもかんでも覚えれば使える訳ではなさそうだ。

逆に言えばこういう事か?ブレイジングエクスプロージョンは魔力圧を重視するようだから、魔力圧の魔法陣を限界の5重展開して放てば・・・。

レゲメトンから魔法陣を引き出しブレイジングエクスプロージョンを起動する。一気に魔力圧は臨界点突破し過負荷状態に陥った火球がかなりの高速で飛び出す。

突然の高速と高威力の為、狙いが外れて20m程の先の地面に着弾してしまった。

一瞬でまぶしいくらいの光のドームを造ると直ぐに爆風が来て吹き飛ばされそうになる。


「ぬぁ!!」


なんとか踏ん張り、爆風が止んだのを確認して眼を開く。

・・・やっちまったかもしれない。爆心地に向かってみると案の定クレーターが出来ていた。深さ3m直径10m程の穴だ。

範囲を絞った感じでクレーターの外には爆風以外の影響はあまり見られない。高圧力だったので狭い範囲に強い威力を及ぼした可能性がある。

しかし・・・これはー・・・。無暗に全力でブーストは使わない方がいいな。時と場合で少しづつ調整しながら使うのがいいだろう。

というか本来それが当たり前なんだが、少しはっちゃけすぎたか。

滅導士ヴァニッシャーってジョブが出たのを思い起こされる。なるほど・・・よくわかってらっしゃる。

まぁそれは置いておいて、とりあえず頭は3つ確保したからこれでいいだろう。

のんびり頭を回収してると、エビルエイプを大きくしたような金色の大猿が走ってやってくる。

金の大猿はこちらを見て怒り狂ってる様だ。まさに黄金の様な立派な毛だった。

売ったら高く売れるのかねぇ?とか考えていると地面を両手で叩き飛び跳ね、こちらに咆哮を放ってくる。

咆哮自体は、煩いだけで私には何の効果もなかった。ただ、さっきより大猿の頭部の毛がトサカの様に逆立ったように見える。


「―――――!」


一瞬、猿が消えたと思うと黄金の疾風が舞う。条件反射的に躱す。あれは思った以上に速いらしい。

今回の依頼も終わったし魔法の検証も出来たので適当にあしらおうと思ったが向こうは殺るきマンマンだ。

丁度いいだろう。ここで一つ喰うか喰われるかの真剣勝負としよう。

間合いを測って、一気に殺意を圧縮し臨界点まで上げてから黄金の猿を睨む。

一瞬、猿はひるむと後ろに一回飛び跳ね間合いをさらにとる。

私は一瞬で殺意を霧散させると今度は心を真逆の無にする。正確に言うと無ではなく周囲の自然に溶け込む感じだ。

湖の水が空を映すように、心に張った水が相手の心を映す。或いはこれを人は明鏡止水というのかもしれない。

そうして、体は、目は薄く閉じ "半眼" とし、全身の力は必要最低限までに抜く。

構えは 只の人だった頃に得意とした "切り隠しの構え" 。他の流派でなんというかはしらないが、素直に使えば突きに特化した構えである。

完全に相手と半身になり、腰は低めの中腰、重心は6割相手側に向いた左足重心に置き、刀を持った両手は額の拳一個分より少し斜め上あたりにあり

剣先はそこからまっすぐ相手に向く。隙はただ一つ、右の小手。そしてそれは逆に相手に攻撃の場所を誘う "誘いの小手"。


挿絵(By みてみん)


かつての古武術好きの青年が得意とした後手から先手を取る技術にして相手との駆け引き戦。

身体のサイズも恵まれているわけではなく、力は道場内では言うほど強くなく、体を操る能力も高いわけではなかった。

そんな青年が見つけた稀有な才能。自らの心を操り、相手の心に波長を合わせ "後の先" を取るための感覚。

一番最初の師匠曰く、それこそが "心技" であり、自在に使えれば圧倒的に身体能力が劣ったとしても勝利を生み出す妙技だと言っていた。

その感覚を引き延ばす。

あらゆることを忘れる。

例えば、失敗すれば死ぬかもしれない "恐怖" を

例えば、早く倒してこの場を終わらせたいという "焦り" を

例えば、金色の毛皮は値段がつきそうだから、一突きで殺せば儲かるかもしれないという "欲望" を

そして、今、この次の瞬間カウンターで突きを放つという "固定概念" すらも。

ただただ、心を開放して、相手の心を感じ取る。

相手の恐怖を、迷いを、怒りを、焦りを、そしてその移り変わる心に生まれる精神的な隙を。

後は一瞬。

金の大猿が攻撃しようと間合い詰め、攻撃しようと "心が動いた瞬間" を感じ取り相手の懐に間合いを詰める。

すると金の大猿は一瞬、何が起きたのかを認識し切れず肉体的に隙ができたその時、あばら骨の隙間をすり抜けるように水平にひねられた刀が心の蔵を貫ぬく。

そしてトドメめとばかりに、ヒートブレードで心臓を焼き切り一瞬で絶命させる。


「ぬお、やっべ!」


声も立てれずに絶命した金の大猿はこちらに倒れだす。この小さくなった少女の体ではコイツを正面から受け止めるの厳しく下敷きにされそうだ。

一瞬の判断で刀から手を放し、近くの金の大猿の手をつかむと柔術の容量で倒れるという力のベクトルを利用して仰向けになるように横に転がすように地面に倒す。

金の大猿が倒れると同時に耳鳴りがやはりする。


  "魔眼・フラトゥンアイ"

  "剣技・デマイスカウンター"


2つがが浮かび上がる。

覚えたスキルを確認すると、倒れた金の大猿から刀を引き抜こうとする。だが刀周りの肉が強く引き締まってしまって中々抜けない。

仕方がないので今一度ヒートブレードを使い刀身の温度を瞬間的に上げて焦がす。するとなんとか抜けた。

刀身に異常がないか確認してポシェットから布きれを取り出し拭いてからから納刀をしポシェットに刀をしまう。

ついでにポシェットの中からギルド内で買った納品用大型土嚢袋を取り出す。

金の大猿の上に袋を伸ばし綺麗に乗せて取り扱い説明書に書いてある通りに魔力を込めると一瞬で金の大猿が袋の中に入った状態になった。

なんと便利な道具であろうか。サイズは変わらないものの外にあるものを中に入った状態にする魔法があらかじめセットされた袋。

ちょっと予想斜め上な品物だったが、大きな物を袋に入れるのは予想以上に重労働なのでかなり実用性は高いだろう。

しかもこの袋のすごいのは、中の死骸がちゃんと折りたたまれていてコンパクトになって入っている所だ。

あとはポシェットを身体から外して上からかぶせるようにしてから土嚢袋を無理やり入れれば終了。

いろいろ面倒な解体はギルドの方でやってくれるサービスがあるので全てやってもらうことに決めていた。

解体なんて手間がかかった挙句、汚れたりするし変な寄生虫なんかウヨウヨ出てきたら洒落にならないしな。想像しただけで寒気がする。

そもそも外での解体なんて魔物に襲われる可能性もあって思った以上に面倒だし、持ち運びはポシェットが在る現状では特に外で行うメリットがない。

ポシェット任せの強引な収納をしてから、また腰にポシェットを装備するが重さに変化はない。

そんな恩恵を有り難く思いながら魔物の処理を終わらして、来た道を飛んで帰る。

それから門の手前で徒歩に切り替えてから門を管理している守衛のトカゲ型アニマワイルディに軽く挨拶をして冒険者ギルドに戻る。

受付を見ると有り難いことにギルドカード発行をしてくれた時の受付嬢イーニャがいた。

未解体の魔物を売りたいので何処に置けばよいか確認すると快く案内してくれた。

彼女の仕事は素早く丁寧な手続きから査定、支払いまでを行い、そう待たせずに終わらしてくれた。

ただ、ポシェットの中からあり得ないサイズの土嚢袋が出てきた時のイーニャの絶句した顔は今思い出しても面白い。

ついでに中身を見てからの彼女のクールそうな顔がさらに崩れるのも中々良かった。

金色の大猿は、ゴールデンエビルエイプという名前でエビルエイプのボスが一定の力をつけてゴールデンに進化した漫画の様な奴だった。

そして予想通りに黄金に輝く毛皮は高級品で突きの一撃で即死させたのは正解だったようだ。

身体能力が高く毒にも強い為、捕獲出来たとしてもその際に傷だらけにしてしまうことが多く傷が少ない素材は相当希少らしい。

最初は、本当に自分で倒したのか聞かれてごまかそうとしたが、貰ったギルドカードはかなりの高性能で所持した状態で魔物を倒すと記録していた。

専用のクリスタルに接触させると内容を表示するという向こうの現代魔術も科学もびっくりの性能だ。

おかげで私が倒したことが良くも悪くも証明できてしまった。

しかも、時空が色々狂ってそうなポシェットに入れていてもカウントされている。

試しに彼女に、このシステムがどういう物なのか聞いたが冒険者ギルドの機密事項なので教えてはくれなかった。

もしかすると冒険者ギルドもはっきり理解していないのかもしれない。

そんなこんなで、ゴールデンエビルエイプの価格は30万ゴールドとなった。ちなみに今、泊まっている宿代が一泊3500ゴールドなのでかなりの高額だ。

宿屋代だけを基準に合わせれば、1ゴールド=1円 ぐらいと単純に考えてもいいかもしれない。まぁ物価や価値観は色々なので謎ではあるが。

ちなみに、エビルエイプの頭3つの報酬は3000ゴールドで、金の欠片を侯爵に引き取ってもらったときは5万ゴールドだった。

全ての精算が終わり冒険者ギルドを後にする頃には日もそこそこ落ちかけていた。

結局、色々ありすぎた濃厚な一日であったが、最終的に予定外の収入が出来たちょっと贅沢なバケーションを満喫できそうな幸先の良い一日となった。




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