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ニュクスの灯ビザーファイル・黒蝶の羽撃きは、異世界の煌めき。  作者: 七枝 繁
ルーガス王国と胡蝶の歌姫編
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第四十六話 剣術稽古

第四十六話 剣術稽古



新環騎士団(ノーヴスサキュラス)の詰所は冒険者ギルドから徒歩5分と言う近い場所にあった。

詰所と言うよりは、もう支部と言った方がしっくりくるほどの広さだ。


「おう、帰ったぜぃ」


そう言いながらシゾーが玄関に入り靴を脱ぐ。どこか懐かしい感じのする建屋が多いと感じていたが、玄関で履物を脱ぐという行為をこの世界で見るとは思わなかった。

そう思いながら玄関に立っているとシゾーが言う。


「ん?どうした?突っ立てないで入ってかまわねぇぜ」


すると奥から碧眼金髪の童顔エルフの青年が出てきてシゾーに言う。


「副長、お客さんは外の国の方じゃないのですか?」


「あん?ああ、そうか。この国じゃー割と家の中では靴を脱ぐのが一般的でな。国境周りの町だと外国人が多いからこう言う習慣は少ないが、国の中心部ではこんな感じだ」


「なるほど、そのような習慣があるのですね。それではそれに倣いましょう」


一応、知らないふりをしておきながら靴を脱いでフード付きのローブを脱ぐ。


「えっ?」


私の顔を見たとたん声を上げて動きが止まるエルフの青年。


「そう言えばソータは外の討伐で城前での騒ぎにはいなかったな。ハハッ!驚いたろう?」


「え、ええ・・・。話には聞きましたが、ここに来るとは予想してませんでした」


「まぁこんな所で話していてもしょうがねぇ。中に入っておくんな」


そう言われ詰所を案内される。建物は完全な和風というわけではなく、洋風と和風が混ざった昭和の金持ちの家の様な感じだ。そこから居間にでると各自適当に座ると話をはじめた。


「結局、城には俺も未だに入れねぇし、団長も帰ってきそうな気配もない」


「まぁそれは仕方ないですわ、昨日の今日ですもの。それより本日は昨日の請求に参りましたわ」


「お、おぅ・・・」


「請求?副長また何かやらかしたんですか?」


「いや、やらかしたとかじゃねーぞ。アレは緊急事態だったんだ。どーにもならないから代わりに、ノア嬢を雇っただけだぞ?」


どうやら、シゾーがお金に関して弱腰なのは、何度か色々やらかしているからのようだ。


「そんなに心配なさらなくても結構ですわ。結果、敵の首魁トーマスが出てきましたが1時間1万ゴールドとお話していましたので、1時間経ってはいませんが1万ゴールドで構いませんわ」


「1万ゴールドか、アレを相手してそれで済むなら助かるぜ・・・ソータ、後は頼むぜ」


「分かりました。確か彼女は冒険者でしたよね。登録があるならギルドを通して置きますね。そうすれば此方も経費で楽に落とせますし、税金等もギルドがやり繰りしてくれるでしょう」


「それではそれで宜しくお願いしますわ」


そう言えばすっかり失念していたが、ギルドを通すことで税金なんかも手続きしてくれるのか。

さらに言えば、この世界に就労ビザ的な概念があるかは分からないが冒険者がそこらへんを気にせずに仕事してるって事はそういう手続きも上手くやってもらえているのかもな。ギルド様様といった感じか。

そんな感じで金銭の話がついた辺りで、別の騎士が入って来てシゾーに話しかける。


「副長。そろそろ若い奴らに稽古を付けてやってくだせぇ」


「なんだ、もうそんな時間か。ん?お、そうだ」


そう言うと何か思いついた様にシゾーが私を見る。


「どうか致しましたか?サー・シゾー」


「ああ、良ければノア嬢も稽古を見て行かないか?」


「ええ、それならばお言葉に甘えようかしら」


ここでの稽古やらが少し気になったので見ていくことにした。

それから屋敷内にある練習場にまで案内される。所謂、道場の様な広い造りになっていて若い騎士達が木刀を持って打ち合いをしている。

木刀の長さはそれぞれ個人の得物に合わせているのか統一されてはいなかったが、どれも刀を模した物であり彼らが帯刀している事が誉であると示しているかの様でもあった。

また、その刀の使い方は人それぞれで流派的な教えも無い様に見えた。


「サー・シゾー。鍛錬している騎士達の刀の使い方がバラバラに見えるのだけれど、ここで統一した技術を教えている訳ではないの?」


「ああ、それか。まぁ中には代々騎士の一族や貴族の者達もいてな、彼らの代々伝わるスキル等もあるから一概にここで統一させるわけには中々いかなくてな」


「なるほど。そうなのですね」


「しかし流石だな、一目見てバラバラなのに気が付くとは恐れ入るぜ。良ければ若い奴らに活で入れてくれんか?あー・・・金はだせねぇが」


「構いませんわ、私も少し見ていたら身体を動かしたくなりましたわ」


木刀で打ち合う練習を見ていたら、つい懐かしくなって身体を動かしたくなってしまった。こういう練習もたまにはいいだろう。


「あ、でもウチには大鎌っぽい練習用の道具はねぇけど大丈夫か?」


「これで構いませんわ、いえ寧ろこれがいいですわね。お借りしますわ」


そう言って道場に掛けてあった木刀を取る。刃を模してる部分の長さ大よそ2尺。いわゆる刃渡り60㎝の今の私の身長に丁度あったよくある日本の打ち刀のサイズだ。


「よし!皆、練習を一旦やめだ!」


そうシゾーが言うと皆一斉に打ち合いを止めて整列する。なかなか統率が取れていて見事な物だ。まぁここでコレが出来なければ戦場で息を合わせた行動なんて無理な話か。


「今から、このノア嬢が貴様らの鍛錬の相手をしてくれるそうだ。興味のある者は挑戦してみるといい。大概の奴は知ってると思うが城前での反乱軍を一人で圧倒したのがこのノア嬢だ。なめて掛かると死ぬと思え!」


物騒な紹介をされてしまったが事実なので反論は出来なかった。そんな紹介が終わるとざわめきと同時に稽古場の中心いた人は端にさがり人の円が出来る。

ここで突っ立てても仕方ないので円の真ん中に行き、挑戦者を待つ。だが誰もやってこない。


「どうした!誰も挑戦しないのか?情けねぇなぁ」


そう言うも中々挑戦者は出てこないどころか、何処からか「女子供を意味なく甚振るのは騎士道に反する」なんて声があがる。


「はぁ?さっきも説明しただろう!まぁいい、そこの発言をしたお前が最初にノア嬢と打ち合え。ノア嬢に勝った奴は隊長格まで上げてやる。その代わり二人とも寸止めなんて生ぬるい事はしなくていい、骨でも何でも折るつもりでやれ!俺が許可する」


そうシゾーが言い切ると若い男が円の中に入ってくる。


「フン。俺は、デア派だからな!そんな姿に騙されたりはしねぇ。お前には悪いが隊長になれるんだ、ボコさせて貰うぜ」


「構いませんわ。準備が出来たらいつでもどうぞ」


そう答えると男は勢いよく上段から真っ直ぐ素直に突進しながら奇声を上げて切りかかって来る。

何の駆け引きもない只の力任せの上段からの切り下ろし。これならまだ昨日刈りまくったゴブリンの方が早いかもしれない。

まぁリーチの長さは圧倒的な差があるので向こうは余裕があると思っているんだろう。だが剣術とは寧ろ剣の長さを無視するものである。

そのまま振り下ろされる木刀を躱しながら刀を両手で巻くように回転させ振り下ろされた腕に目がけて上から小手を打ち据える。

するとバキリという骨の折れる音が響き、男の木刀が落ちて叫び声を出して床に転がる。それを見ていた周りの騎士達が転がる男を連れだしていく。


「次は、誰かしら?」


そう冷徹に言うと、ムキムキマッチョな男が出てくる。


「某は、トーと申す。先ほどの男が失礼した。だがソレはソレ、手ほどきの程をよろしく申す」


ふむ、顔もガタイも厳ついがそれなりに出来る男なのだろうか?


「こちらこそよろしくお願いいたしますわ」


そう言うと大男は、刀と言うには長く太すぎる木刀を八双に構える。ある流派では蜻蛉の構えだとか、陰の構えと言われる基本的ではあるが有効的な美しい姿だ。

そして彼にとって、大きな体に大きな武器をより相手に見せつける事で相手を威圧しながらも長く構えていられる得意な戦法なのだろう。

それに対応するように私は脇構えに変える。刀の切っ先は私の後ろに向き、刀を相手から見えぬように隠す構えだ。お互いの得物の長さが違うので有効でもある。

単純な間合いの長さでは此方が圧倒的にフリではあるが、"刀剣短くば一歩進んで長くせよ" という言葉がある通りに相手もソレを理解をしているのか仕掛けて来ることはない。

このままでは埒が明かないので、あえて私から相手の間合いに入ろうと動くと、それを察して奇声と共に八双の構えのまま上段から打ち込んでくる。

それを素早く頭上で受け止める。男は木刀ごと力で飛ばせると思っていたらしく驚きながら更に力を込めてくる。だが木刀が飛ぶことも撃ち負ける事もない。

それは私が相手の力をそのまま受け止める事が無い様にずらし、さらに右手の人差し指の付け根に力を集中させそこから大きな力を受け止める、或いはそこに集中した力を放つ技術 "八ヶ条の法" を使っているので純粋な筋力ではじかれる事はない。

また上段から降って来る力を下から受け止めているので、相手から流れてくる力を地面に流し、自らの踏ん張る事で地面から生まれる力を利用する、技術というよりも "姿勢" という在り様で対応しているのでこれもまたそうそう負ける事のない理由である。

だが、それでは勝つ事は出来ない。なので相手がより力を入れる瞬間を狙って、切っ先を一気に下げて身体を左前に進めると同時に私の木刀をレールとし相手の木刀を狙った方向に導く様に滑らして体制が崩れた処で、先ほど小手を撃った様にそのまま刀を素早く回転させて木刀の切っ先を首に突きつける。


「ま・・・参った」


大男は、そう言うと静かに私から離れ間合いをとって礼をすると元いた場所に戻っていった。

さて、次は・・・。と思うとシゾーが出てくる。


「まさか、ノア嬢の剣技がここまで優れているとは思わなかった。今度は俺が一手指南頂こうか」


やれやれ、まったく・・・しかし久々に面白い稽古になりそうだな。







お久しぶりです。今回もどうぞよろしく。

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