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ニュクスの灯ビザーファイル・黒蝶の羽撃きは、異世界の煌めき。  作者: 七枝 繁
ルーガス王国と胡蝶の歌姫編
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第四十五話 冒険者ギルド オンダーバーラー支部

第四十五話 冒険者ギルド オンダーバーラー支部



ペノリア邸を後にした私は、今度は冒険者ギルドを探すことにした。

なんだかんだでギルドにたどり着くまで1時間はかかっていた。迷ったわけではなく純粋に距離が長かった。こんな事なら馬車でもなんでも使えば良かっただろうか。

冒険者ギルド、オンダーバーラー支部は、首都に在るだけあってしっかりしとした造りの建物でイスー支部に負けず劣らずの出来栄えである。

ただし、賑わいと言う点ではイスーの方が上だろう。とはいえ、それぞれのカウンターには人の列があり依頼完了報告をするのに並ぶ必要はある。

私は並びながらフード越しに周りの様子を伺う。特にこの場所だからと言った種族の偏りはなさそうに見える。若干ヒューマーが多めなのと、ジーニィが居ないのといった感じの何時もの景色だ。

ここも他のギルドとたいして変わりはなさそうだ。日々の糧の為に出来る仕事をひたすらこなした、くたびれた姿の冒険者達が多数を占めていて小説や漫画に出てくるようなファンタジー感よりも厳しい現実感がより出ている。

それを現すかのように待ってる今も、泣きそうな若い女がギルド職員に連れられて走ってギルドの奥に入っていく。愛する者の為か、家族の為か、分からないが無茶して取り返しのつかな事になった冒険者がいたのだろう。

それ故にギルドもランク分けをし受けれる依頼を制限しているのだが、中々思うようには上手くいかないものだ。

それでもギルドという管理された集団であるからこそ、ある程度の情報は対価なく流され、何かあった時も可能な限り対応する事が出来るので非常に意味があるものなのだ。

そんな事を考えながら周りを見ていると、どうやら順番が回って来たようだ。いつも通りに、カードを渡し依頼内容を口頭で説明する。すると受付嬢が何時もの如くクリスタルにカードを当てて確認するまでは良かったのだが・・・。

受付嬢は、不満そうな顔をして今一度カードをクリスタルを当てている。何か納得いかないのか此方に向くと高圧的な感じで言葉を放ってくる。


「確認しますが、これは貴方のギルドカードですか?」


カードを見せられて確認される。


「ええ、そうですわ」


「そうですか。でしたらこの討伐数はどういう事でしょう?」


「討伐数?」


「ええ、たった数時間で300を超える討伐数が一日に2回も出来るなんて、どう考えてもあり得ません」


ああ、なるほど。討伐数が激しすぎて疑われてしまったのか。やれやれ困ったものだ。上手くごまかせる説明なんてどう考えてもないよなぁ。


「えー、まぁそのカードの記された通りに魔物の群れに突っ込んで討伐しただけですわ」


黙っていても仕方ないし、いい嘘も無いのでありのままを言った。


「ふざけないで下さい。討伐された魔物の中には、単体の討伐で漸くB級冒険者が依頼を受けられる物も含まれてるのですよ!」


あー・・・なんか、時折強いのがいるなーって思ってたけどやっぱ、そのくらいヤバい奴だったかー。纏めてブッパしてたからあんまりそういう事考えてなかったぁ。


「うーん。そう言われても倒せてしまった物は倒せてしまったんだし、カードは偽造とか出来ないのでしょう?」


そう言うと受付嬢は更に顔赤くして怒り出す。


「これは絶対、何らかの不正な方法で記述された物です。いいでしょう、貴女がそうしらばっくれるなら、此方も最終手段を取らせていただきます」


そう言うと、首にかけてた笛を吹く。ピーと音が鳴ると周りにいた冒険者は下がっていき、二人の男が現れる。


「えー。もしかして力づくですか?」


「ふん、貴女が本当に魔物を討伐出来たのなら、彼らと戦っても勝てるはずです。彼らはB級冒険者ですからね!まぁ無理でしょうけど」


「あら、もしかして倒しちゃっていいのかしら?なら楽でいいですわね」


なんだか有り難い状況になったようだ。まぁもしかすると強いかもしれないが、パッと見そうでもないし、こいつヤベェなセンサーも反応していない。なんとかなるだろう。


「ガキをいたぶる趣味はねぇが、仕事なんでな悪く思わないでくれ」


片方の男が此方に向かってフラグ的なセリフを吐いている。ついでにギルドに雇われてるのにこの悪役仕様とはいかがなものか。


「あらあら、大変。年端もいかぬ子供にいたぶられる趣味がある方なんて中々難儀してますわね。でもそれをこんな場所でカミングアウトなんて大変な性癖ですわ」


折角なので煽ってみる。


「てめぇ!許さねぇぶっ殺してやる!!!」


そう言いながら剣を抜き襲い掛かってくる。沸点低すぎだろ?こんな初歩的な煽りに反応するなんて・・・しかもセリフが三下すぎる。

動きも、予備動作がどれも大きすぎて遅すぎる。これがB級なら残念すぎるな。そんな事を考えながら、さらりと回転しローブ端を舞わせながらすれ違てみせる。


「おーにさーん、こちらー♪あ、おーにさんじゃなく、おにーさんの方でしたわね?」


「てめえ!!」


挑発に乗った冒険者は勢い良く踏み込んでくるが、切りつける前を捉えて足で足を引っかけてやる。

冒険者は派手に転びそうになるが何とか耐えているので、そのまま後ろから頭を掴んで地面に叩きつける様にすると更に足に力をいれて男は耐える。

もちろんこちらはそうなる事は想定済みなので、そのまま一気に首根っこの鎧の襟を掴んで耐えようと踏ん張ってる方向に引き上げて後ろに倒すようにすると、自らの耐えようとする足の力が更に加わってバランスを崩し一気に後ろに倒れだす。

後は反対側の手で男のデコを抑えて跳び上がり、全体重をかけて男の頭を床に叩きつけてやれば一丁上がりだ。

幸いギルドの床は強度の低い木材だったので男の頭は潰れたトマトにならずに伸びているだけである。

さて、あと一人。ふむ、こっちは先ほどの男と違い冷静に無言で長剣を構えている。


「喋り過ぎも困るけど、何も言わずにレディを攻めようなんてのも男としてどうかと思うわ?少しはエスコートくらいしてもいいのですわよ?」


此方から煽ってみるが反応はないな。距離もあるから攻めるタイミングを計っている様だ。なら、逆に誘ってみるかな。

よそ見を軽くするように敢えて隙を作ってやると、男はスキルを発動させて一瞬で距離を詰めてくるが、一瞬で鳩尾に私の大鎌の石突きが見事に刺さりそのまま白目を剥いて倒れる。

別に何をしたわけでもない。スキルを発動させる為には、声を発するから、その呼吸が乱れるタイミングに合わせてポシェットから大鎌を取り出して一歩進んで柄の部分を真っ直ぐ伸ばして突っ込んでくるのを待っていただけである。


「こんなもんでいいかしら?」


そう受付嬢に言うと、ハッ我に返ったのか慌てて言葉を返してくる。


「こんなのたまたまですね!だけど今日は、あの方が来てるので貴方なんて一瞬で終わりです」


ぉぃぉぃこの期に及んでまだ認めないのか。メンドクサイなぁ。この際シゾーでも来て証明してくれると助かるんだけど、そんな上手い話はないかぁなぁ。


ないですよねー。そんな事を考えていたら奥から人が出てくる気配がする。


「へぇ。なんか下の方が騒がしいと思ったら、冒険者ギルドで大暴れしてるヤツがいるのか。いいねぇ。そういうの大好きだぜぇ」


おや?これは聞き覚えのある声だな。その声が響くと同時に何故か、受付嬢が先ほどの悔しがっていた顔とは裏腹に自信満々に仁王立ちしている。

すると声の主が奥から出て来る。忘れる事はない見慣れた狼の顔のシゾーだ。


「ふん!シゾー様が来たからには貴方なんて手も足も出ずに一巻の終わりよ!」


なんで、この受付嬢がイキってるんだろうか?カウンターの上に乗り私を指さしている。むしろ此方が助かったのだが。まぁ面白そうだからいいか。


「ん?その姿にその大鎌・・・。ノア嬢か。また、ハードロックな事してんじゃん?」


「あら、これはサー・シゾー。昨日ぶりですわね」


ワザとらしく言いながらフードをこの時初めてギルド内で外す。すると周りで見ていた外野の雰囲気がガラリと変わる。

黒眼黒髪である事以上に、昨日の大立ち回りで大暴れした本人が目の前にいるのだ。ヤバい現場にいるかもしれないと緊張し初め周りの空気を凍らせていく。

そして私達のやり取りを見て、先ほどまでイキっていた受付嬢の顔はどんどん青くなっていく。可哀想だが、その顔芸はなかなかに愉快である。



「なんだ、この二人にでも絡まれたのか?二人とも確か、B級冒険者だと思ったが・・・」


状況を見て聞いてくるシゾー。


「いえ、そちらの受付の方が、どうにも先日の討伐した魔物の量と質が納得いかないとの事でそれを証明する為にこの御二方と戦う事になったのです」


「そりゃー可哀想に。この二人は運がねぇなぁ」


「ええ、殺さない様に手加減はしたのですが、それでも受付嬢に納得してもらえずに "あの方" と戦う事になりそうなのですが、サー・シゾーがそうなのですか?」


冗談交じりにニヤリと笑いながら大鎌を構えながら言ってみる。


「イヤイヤ、仮に俺がその受付嬢の言う "あの方" しても遠慮しとくぜ?月が出てる夜ならまだしも、こんな昼間にノア嬢と闘って無事でいられる気がしねぇ。ノア嬢の本気(マジ)ってのは興味あるけどな」


シゾーはガチめにお断りだと言ってきた。しかし、月が出てる夜ってなんだろうな。狼だから月が出てる夜はパワーアップとか変身とか出来ちゃったりするのか?


「では、困りましたわ。折角危険を冒して依頼をこなしたのにただ働きとか・・・」


演技力全開で困った仕草をする。


「それは俺が普通に証言すればいいだけじゃないか?」


「そうですわね。そうしてもらえると助かりますわ」


笑顔でシゾーに言葉を返す。


「と、いう訳だ、お嬢。昨日のノア嬢の魔物討伐の数は俺が保証する。詳しくは言えねぇが、このノア嬢その気になれば月なしで俺が出来る "アレ" ぐらいは出来ちまうから、そのくらいの討伐は余裕だ」


そう、シゾーが青ざめて動けない受付嬢に伝える。


「あ・・・あ、はい・・・」


この様子では受付嬢のHPもMPも1と言ったところか。それにしてもやはり、月があるとシゾーは強くなるらしいな。興味深い。

それからは、ギルドの支部長が出てきて土下座をして許しを請うなど少しばかり騒ぎは続いたが、その後しっかり精算をしてもらい懐がウハウハになるのだった。

倒した魔物は721匹

D級以下が593匹、C級が85匹、B級が43匹だった。D級以下が一匹1000、C級以下が2000、B級が5000ゴールドである。

合計1,275,000ゴールド いやー儲かった!

その場にいたシゾーも、冒険者に転職した方が良さそうだなーとかまで言ってた。ついでに、昨日の依頼料いらなくないか?とまで言われたが、勿論頂く。ただ働きする善人とか偽善者とか思われたくないしな。

そんな訳でギルドから料金を貰うと、シゾーに新環騎士団(ノーヴスサキュラス)の街にあるという詰所に案内してもらう事にした。





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