第三十七話 聖女inジェノサイド
第三十七話 聖女inジェノサイド
翌朝、変な目立ち方はしてイザコザに巻き込まれない様に国境検問所に朝一で突撃した。
しかし、そこには既に10人ほど並んでいた。"時は金なり"が信条の商人達である。
有り難い事に、彼らは情報収集と商機には目ざといが、それ以外には余計な事には首を突っ込まない人種なので何事もなく、すんなりと国境検問所を抜けることができた。
しいて言えば、鞄の中身確認の際に中からリリィが出てきて検査員を驚かしてしまったぐらいか。
だが、これも冒険者ギルドカードに設定しておいたサブジョブの竜調教士の御かげで不問となった。冒険者ギルドカードすごいな!
国境を越えるとルーガス王国側の国境付近の街イキドーを歩いて目指す。
その中で、魔法が使えない事を思い出し、少し道から外れて実験をする事にした。リリィ曰く魔法は使えないが魔術は使えるという話だったな。
(なぁリリィ、魔法は使えないが、魔術は使えるってどういう事だ?)
(うん~?まぁやってみればいいんじゃない。魔術が使えるってのは私の予想でいかないけどやってみればわかるでしょ)
(そうだな)
取りあえず、最も簡単な魔法、フレイムショットを放ってみる事にした。
「フレイムショット!」
言葉だけ響き何も起きない。魔力は練れるので魔素がないとか魔力が阻害されるという訳ではないらしい。
(ふむ、本当に何もおきないな。でもこの感じは・・・。とりあえず魔術を起動してみるか)
(どうなるかしらね)
「餓喰の魂塊・舞」
リリィの能力で再調整された新しい餓喰の魂塊を使ってみると、五匹の黒い蝶が現れる。
(なるほど、確かに魔術は使えるな)
(やっぱり問題なく使えるみたいね)
先ほどの魔法の時の違和感を思い出す。
(やはり、この世界の魔法に関しての私の仮説が正しかったってことか?)
(あら?この世界の魔法に関してある程度気が付いていたのね。さっすがぁ~)
(茶化すなよ。要は、この世界には一定条件を満たせばアクセスできる巨大なレゲメトンがあってそれがこの世界を覆っているって感じだろ?)
(大体あってるわね。そしてその巨大なレゲメトンは神々以外設定を弄れない。ただしその巨大レゲメトンにもAIが付いていて更に一定条件を満たすと新たな魔法が構築されるようになっているけどね)
(場合によっては、この世界のジョブシステムともリンクされている様子だな。まぁそこは置いといてだ。このルーガス王国で魔法が使えないのはその、巨大レゲメトンにアクセスする事が何故か出来ない。よって魔法が使えないと言う理由だな)
(あったりぃ~。流石ね。じゃ、何故使えないのかは分かるかしら?)
(何故使えないのかは・・・そうだな。これに似たシステムを当て嵌めて見ればいいかもな。例えば地球の携帯電話のシステム。携帯電話という端末も大元の処理施設も問題なく稼働はしているが、端末から処理施設を繋ぐ中継基地が壊れていたら電話は繋がらない。つまりそんな所か?)
(凄いわね。S級エージェントは伊達じゃないということかしら~)
(地球じゃ携帯にしろネットにしろ電気にしろ似たようなシステムが多いからな。神々も最終的にそういうシステムで作るしかないと判断したんだろう)
そんなこんなで魔法が使えない謎は解けイキドーに本格的に向かう事にした。
イキドーは国境から15分も歩けば簡単につくことができる街だ。造りはタッシローに似ている。国境沿いの街であり、戦争になれば要塞としてもある程度機能するようになっているのだろう。
そんなイキドーだが、なんだろうか?雰囲気が少し変な感じだ。初めて来る街なので飽くまで感覚的でしかないのだが・・・。
そんな違和感は、冒険者ギルドイキドー支部にてはっきりした。冒険者が殆どいないのだ。街を思い返せば、冒険者だけでなく兵士達も僅かであった。
受付に行き、どういう事か聞いてみる。どうやらイキドー付近の村々が魔物の群れに襲われているのだとか。防ぐにも、どの村にいつ襲うか分からないので兎に角分散して村を護衛しているとのこと。
今までイキドー付近は魔物が大量発生する事はなく、自然と城壁のない村々が開拓されていき今の様な沢山の集落があちこちに点在する地域となったらしい。
それ故に今回の様な突然の大規模魔物発生に対応できずに国も冒険者ギルドも右往左往して統率がとれずに悪循環を招いているようだ。
あまりこの国で他人の目を引くような事はしたくはないが、無視するには余り状況は良くないようだ。
この状況を打破するために幾つか依頼が出ているので内容を確認してみると丁度いいものがあった。それは魔物の討伐数によって支払いがされるタイプの依頼だ。
倒した魔物はギルドカードに記載されるのを利用した方法で、それをギルドで再設定すると何時、何処で何を倒したかを一定期間内記録する事が可能になり、それをシステムを使って計算するようだ。
ただし、この方法だと上限が無い為に一匹当たりの相場的な値段は最も安く受ける人は殆どいないらしい。
だが、今の私には丁度いい依頼でもあるのでそれを受けて冒険者ギルドを出る。街では案の上、僅かであるが拝んでくるお年寄りなんかもいるので目立たないようにフードの着いたローブを一着買ってから町の外に出た。
魔物討伐の作戦は簡単すぎてないに等しい。高度をかなり上げて飛び魔物の群れを目視で見つけ、そこから魔術と大鎌による強襲というゴリ押し戦法だ。
5分も索敵をしながら飛ぶと直ぐに魔物の群れは見つかり魔術の射程範囲に入る。群れはオークやゴブリンの類だ。色やサイズが色々と違うので細かく分ければかなりの種類がいるんだろうが十把一絡げに倒せる相手だ。気にしなくていいだろう。
そのかわり数は多いが、この魔素溢れるこの世界で術起動までの時間がたっぷりとある状況なら地球の近代戦争兵器級の威力を持つ魔術で数を一気に減らせるだろう。
レゲメトンを操作して爆弾を魔術で疑似再現したデータを引き出す。そして更に強化魔法陣によって威力を上げる。
「サーモバリックフレイム」
音声認証を唱えると天上に掲げた右手の上に巨大な炎の塊が出来上がる。それを魔物の群れに向かって振り下げると巨大な炎塊は腕の動きに合わせて動き出す。
魔物が炎塊を認識した時には逃げたところで既に遅し、轟音と共に激しい熱量を帯びた爆発が起きて半径20m程は炭となる。
そこからすかさず、次の魔術を起動する。
「クラスターストーム」
先ほどの様な巨大な火球だが、今度はそこから炎の矢が産み出され無差別に魔物の方へ飛んで行き、何かに着弾した瞬間に小爆発を起こす。その炎の矢の数はおよそ100発。
既に最初の爆発で状況判断しきれない魔物達が更に謎の攻撃を受けて群れは完全なパニック状態に陥っている。
魔術が終わるころには300程いた魔物は1割ほどの数にまで減っていた。
そこへ大鎌を抱えて素早く着地と同時に一匹を両断する。それに気が付き敵襲と確認できた付近の魔物達は襲撃に対応しようと武器を構えるか、構えた所で無念にも身体が二つに切り裂かれる。
後は、振り回した大鎌の質量に合わせて動き、移動する。遠心力、反作用、テコ、ベクトルの合成、様々な物理現象を利用して鎌の刃だけでなく反対側の石突、刃とは逆側の尖がりデザインの鈍器が予測不能な起動で魔物達を襲う。
しかも私自身大きな質量を敵のど真ん中で振り回しているので簡単に停止する事が出来ず、瞬間的な判断だけを頼りに魔物を切り刻んでいき、比喩ではなく本当に血の雨が降っている。
そして、最後の一匹と思った瞬間、そこいたのは狼の顔をした人間(?)だった。既に大鎌はソレを真っ二つにする軌道を絵描いていたが向こうが素早く避けた。
「おっと、あぶねぇなぁ」
喋った。やはり人間か?
ここ数日、色々あって更新が遅くなっています。
まぁ読んでくれてる人少ないんですけどね!
遅くはなっていますが、まだまだ書き続けて行くのでどうぞよろしく。




