第三十六話 冒険者ギルドタッシロー支部
第三十六話 冒険者ギルドタッシロー支部
翌朝、冒険者ギルドに向かい正式に依頼を受けると際にクリスティアに会いに行き暫くイスーを離れることを話す。
すると、クリスティアもイスーを離れなければいけない用事があるらしく一緒に行けないと残念がっていた。
それから、侯爵にも挨拶をしてイスーを出る。
ルーガス王国へ入るには、ここから、まずタッシローに向かい、そこから国境付近の街ハッマーを目的地とするのが基本的なルートだ。
前回のロンガースプリングでの馬車に缶詰を思い出したら、飛んだり歩いたりの方が遥かに楽しそうなので今回の旅は自由なペースで進みながら遊べる計画にした。
何より飛んだ方が圧倒的に速い。こちらの馬車は恐らく平均時速20㎞行くか行かないかだが、飛行で移動する場合は最大で時速100㎞ぐらいは出る。
とはいえ、時速100㎞で飛び続けるのは色々と身体に負荷が掛かるので実際はその半分程度で飛び続ける事となるだろう。
初めてこの世界に来た時とは違い、ちゃんと地図もルートも方向も確認してあるので迷う事はないだろう。最悪の事も考えて食料も沢山持ったし問題はない。
そんな訳で、イスーの門を出るとスキル "イグノアハイド" で他人に気づかれない様にしてから、一気に飛び立ってタッシローに向かう。
途中、空中戦に備えて大鎌を振ってみたが、空中ではとてもじゃないが使える武器ではなかった。
まず、足の踏ん張りが皆無な為、足、胴の力を腕に通して大鎌を振う事が上手くできない。大鎌の質量が大きいため反作用が影響して自分まで動いてしまう。
勿論、力のベクトルを変える事によってある程度抑えられなくもないが、到底満足に戦えるというレベルではなかった。
結果、万が一空中戦を余儀なくされるのであれば、戦闘機戦の様に魔法でドッグファイトするのが基本となりそうだ。
やはり、この世界もそんなに甘くはなく俺ツゥエェーーが出来るイージーモードではないようだ。
そんなこんなで、時には歩きながら大鎌を振り回し、時には高速で飛び回っていると、タッシローにいつのまにか到着していた。
タッシローはルーガス王国との国境付近の街だけあって規模の割に頑丈に作られた城壁のある街であった。
見た目の軍事的な雰囲気から閉鎖的に思われそうだが、現在お互いが友好国として関係を保っているので門は大きく開けられ行商人や冒険者の行き来も多く開放な雰囲気で賑わっていた。
折角なので街を一回りしながら宿屋を探す。飛んだことにより2日分は移動時間を短く出来ているので明日のんびりと国境を越える予定だ。
ついでに冒険者ギルドにも寄ってみる。イスーの冒険者ギルドよりはいくらか規模は小さいものの、そこそこ賑わっており屈強な男達が多いのが目につく。
事前情報と同じくギルドのお知らせ看板にもルーガス王国での注意書きとして魔法が使えない事が記されている。その御かげかギルドには肉体派が集まっている。。
それとお知らせ看板には、親切にもこんな記載があった。
"ルーガス王国へ入国される際には冒険者ギルドカードの登録ジョブを魔法職からスキル職に変更する事をお勧めしています"
なるほど、確かに魔法が使えない国で魔法職を登録していても、無駄だものな。
私のジョブってなんだっけ?カードを出して確認してみる。
メインが魔導刀士で、サブが暗斥候と汎武装士か。
折角だから変更してみよう。
受付に向かい列に並ぶ。なんだかジロジロ威圧的に見てくる輩と、ほんの数人だが人の顔見て手を合わせて拝んでいる輩がいる。
前者は、10代半ばのヒラヒラな服を着た少女が冒険者側の受付にいる事に関しての興味やら威嚇であろう。後者は、恐らく聖女がらみだろうな。
案の定、私の後ろに並んだ男がこの並びの受付は冒険者専用だと、親切にも教えてくれる。もちろん丁寧に大丈夫だと答えておく。
暫くしてから順番が回って来たのでカウンターにカードを提示して登録ジョブの変更を依頼すると、顔を上げた受付嬢に二度見、いや三度見される。
すると、少々お待ちくださいと言われ受付嬢は席を立つと老齢の男性を連れてくる。男性は私を値踏みするかの様に下から上へと見ると、ニッコリスマイルをして挨拶をする。
「初めまして。私は、冒険者ギルドタッシロー支部支部長メイクル・ダーウェンと申します。よろしければ私の事務所で手続きをさせて貰ってもよろしいでしょうか?」
いきなりギルドマスターが登場するのは前回と一緒だな。まぁ同じ州内なので侯爵かイスーのギルド支部長が連絡していた可能性は高そうだが、毎回この様子だと大変だな。
まぁ断るわけにもいかないので了承する。
「ええ、構いませんわ。それでは後ろがつかえているのですぐ移動しましょうか」
「ありがとうございます」
それから列を離れメイクルに案内されギルドの2階の支部長室に案内される。
部屋を左右へと眺める。整理整頓され光の入り具合もとても良い書斎と言った感じだ。
「お手数おかけしました。お話はタクルゥティオ様より伺っております。確か今回のご依頼は、登録ジョブの変更でよろしかったでしょうか?」
なるほど、侯爵が根回しをしていたか。
「ええ、そうですわ。お願いいたします」
「畏まりました。それでは現在登録可能なジョブを確認させていただきます」
それから、長々と前に言われた職だけでなく、新しく追加された職を言われる。
・剣術士
・刀術士
・剣聖
・暗黒剣士
・魔導剣士
・魔導刀士
・魔法士
・魔導士
・格闘士
・魔闘士
・暗斥候
・汎武装士
・瞬銃士
・魔銃士
・死撒行士
・滅導士
・概念魔導士
・神炎導士
・聖歌姫
・竜調教士
・死舞鎌士
以上21職である。
聞き間違えでなければ、職ふえとる・・・。
・概念魔導士
・神炎導士
・聖歌姫
・竜調教士
・死舞鎌士
まぁ、聖歌姫 以外は身に覚えがありすぎるので仕方ない。
しかし、聖歌姫はどっから来たのだろうか?歌なんて歌って戦った事ないけどな。それともこのシステムは周りの噂ってのも影響するのだろうか?
とりあえず、今は置いておこう。今は何のジョブを登録するかだったな。魔法が使えない国なので魔法系もはずして、刀も使えないのでブレーダーも外すとすると結構絞られるな。
使っている武器から、メインを死舞鎌士でもいいな。でもサブをどうするか迷っていると、リリィが話しかけてくる。
(サブは、竜調教士、聖歌姫してみたらどう?)
(なんでだ?竜調教士はいいとして、聖歌姫は意味不明だぞ)
(だからよ、竜調教士は、もしかしたら私の強化か何かにつながるかもしれないし、聖歌姫は逆に設定しておけば何故現れたか分かるかもしれないわよ)
(そうか?イスーのギルドも言ってたが職による恩恵は噂程度で、特にないって話だったぞ)
(気が付いてると思うけど、このジョブシステムは神々が構築したシステムよ。恩恵が何にもないわけはないと思うわ)
(やはりそうか、ならつけてみるのもありか。サブは何にするか迷ってたしな)
しかし、神の構築したシステムか・・・。
思念の会話のあと少し考え始めるとメイクルが話しかけてくる。
「私かれこれギルドの職員を40年はやっておりますがここまでジョブクラスが多い方は初めてですな。それも幾つかは実際に見るのは初めてのジョブもあります」
「そうですわね。私もなんでこんな事になっているのか今一つ理解できておりません。とりあえず登録の方は決まりましたわ」
そう言うとリリィと相談して決めた登録ジョブを伝える。メイクルは畏まりましたと言うとさっくりと登録してくれた。
「それとですね、タクルゥティオ様からお話を伺い判断した結果、失礼ながら先ほど貴方様を鑑定させていただきました」
「鑑定?そんな事できるのですか?」
「ええ、これは私の固有スキルです。あらゆる物を鑑定いたします。それなのですが、プロテノア様を鑑定したところ、本来あるはずのレベルが存在しません」
「レベル?」
「はい、この世界の生命は成長という度合を示すためにレベルが存在し表記されます。最もそれを知るには私の様な鑑定か神殿で祈り、お告げで直接神から聞くしかないのですが」
そんな話全然聞いていないな。
(リリィ、知っていたか?)
(ええ、まぁ。でも私は鑑定できないし、レベルなんてあんまり私達には関係ないので気にもいないかったけどね)
「で、そのレベルがないと何か不都合でもあるのかしら?」
「恐らく特にはないでしょう。レベルなんて知らずに生きている方も沢山いますし、何より戦闘能力はしっかり表示されています」
「戦闘能力?」
「装備品を含めた戦う能力値ですね。プロテノア様の戦闘能力は、12万5千~です」
「~?」
「恐らく、スキルや魔法行使で、更に能力値がさらに大幅に上げられるという事でしょう。ちなみにA級冒険者の平均戦闘能力が装備品込みで10万前後です。今現在プロテノア様は武器を装備していない状態でA級冒険者を超えている感じですね」
なんだかすごいことになっているな。
「それでは、気にせずに今まで通りやっていればいいってことかしら?」
「ええ、そうですね。ですが一つお伝えしておきたい事があります。これは私の調べた結果ですが、レベルのない人と言うのは神々が直接手を下して作った人間であるという古い文献が幾つか見つかっております」
神々が直接手を下した・・・か。なるほど確かにこの身体は造られた身体だから納得がいくな。
「わかりましたわ。ちなみに、レベルを聞かれた場合、私はどれくらいで答えればいいのでしょうか?」
「何とも難しいですが戦闘能力やスキル、魔法から考えると最低でも65ぐらいはあると答えた方がいいでしょうね。まぁ冒険者にとってレベルは最大の個人情報なので通常は答える必要はなく65というかなりの高レベルを答えれば遠まわしの返答拒否と思われるだけでしょう」
「そうですか。ありがとうございます」
「いえいえ、私からはこれくらいですかね」
「それでは私はこの辺で失礼します。貴重な情報を有難うございました。重ねてお礼申し上げますわ」
「ええ、それでは良い旅を」
私は部屋を出るとそのままギルドを後にした。それから街をブラブラした後、適当な宿を見つけて眠りについた。
しばし、色々やることがありまして更新が遅れておりました。
これからもどうかよろしくお願いいたします。




