第三十四話 ニュー・ミッション!
第三十四話 ニュー・ミッション!
セバスとの激闘の末、州都イスーへと帰ってこれたのは10日後の事だった。
何せ、黒幕は州都の治める貴族であり、その中でも頂点に立つ公爵である。皇都から来た騎士やら官僚やらの捜査の協力やら何やらで足止めを7日間足止めされた。
しかし、此方に来てまだ1か月ほどだと言うのに一気に色々あったものだ。
そう、私がウッカリ向うの世界で肉体を失った結果、怪しげな取引に騙されて、この世界に女の子として飛ばさた挙句、気が付けば迷子の迷子の子猫ちゃんだった。
あてもなく荒野で彷徨っていると、このソールデースペル皇国のイスーファントゥ州を治める侯爵に出会い、その縁で州都イスーで暮らす事となる。
その後お金稼ぎにギルドの試験を受けギルド公認の冒険者となり、向こうで手にした戦闘技術と、此方の戦闘システムを上手く使い依頼とこなしていると、侯爵から連続少女殺人事件の囮捜査依頼が来る。
依頼を受け囮捜査を開始するが、その間も様々な想定外に出会う。クリスティアという戦闘民族のジーニィの女の子の義姉に何故かなってしまったり、向こうの世界にいた精神生命体のリリィが竜の卵に入り肉体を手に入れたりと珍妙な事ばかり起きるドタバタ劇だった。
肝心な事件の方はと言うと、クリスティアが重傷を負ってしまうが、実行犯を見つけ捕縛寸前まで追い込むことができたが、ここで隠ぺいしようとした黒幕の部下に実行犯を殺されてしまう。
そんな中、どうにか証拠品は回収する事が出来き、黒幕にたどり着く事が出来た物の黒幕は隣の州を治める公爵であり、その部下の一人はイスーファントゥ州を治める侯爵の執事であった事から事件解決は厳しい物となった。
最終的には、黒幕の公爵及び、武力行使をしてきたその部下達は死亡し、生き残った関係者は国の機関によってそれぞれ処分されたのだった。
嗚呼、そうだった。私自身も一つ?面倒な事を抱えてしまっている。それは、"胡蝶の歌姫" と言う歴史的有名な人物と名前が同じであり、その歌姫と同じ黒眼黒髪である事で変な目立ち方をしてしまっていることだ。
名前はさておき、どうにもならない黒眼黒髪は目立ってしょうがない。何故なら今まで黒髪の人間に未だ出会ってないくらいこの世界では珍しい髪色なのだ。
御蔭で "聖女様" なんて私の事を呼ぶ輩もいる。
そんなこんなで、今はイスーでのマッタリライフを楽しんでいる。様々な追加報酬で懐は潤っているのでギルドの仕事をする必要はないのだが、修行ついでに魔物の討伐を満身創痍から回復したクリスティアと共にこなしていた。
そんなクリスティアにもリリィから聞いたソウルアーツの別の使い方を教えると、最初は使いにくいと言ってはいたものの流石の戦闘民族、あっという間に使い方をマスターしてまう。まぁ最初の使い方は使いこなしていたからと言うのもあるが流石と言うしかない。
しかも驚くべきは、ソウルウェポンにソウルアーツを掛けると体力の著しい消耗が無くなっただけでなく、手首辺りまでのナックル形態だったソウルウェポンが、肩までに装甲が伸び、足にも発現し新たなギミックが追加された。
今はその新しいソウルウェポンの使い方の模索中である。
そんなある日の事、私は侯爵に呼ばれたので向かう。既に侯爵の館には顔パスで入れる程馴染んでいるので好き勝手に出入りしても止める物はいない。まぁ外面は良くしているつもりなので無作法な事はしないが。
侯爵の部屋にノックして入り、一応いつもの通りに淑女らしく礼をする。
「デュフフ。待っていたんだな。ノアたん」
相変わらず、怪しげな笑い声と独特な喋り方である。
「元気そうで何よりですわ。それより本日はどのようなご用件でしょうか?」
「デュフフ。実は隣国の男爵に手紙を直接届けて欲しいんだな。いま僕は事件の後始末と普段の業務でちょっと手が離せなくてね、代理として手紙の返事ももらってきてほしいんだな」
隣国か、何処か知らないけれど面倒そうだな。だが、現状断るのも気が引ける。侯爵の左目左腕がないのは私のせいでもあるし、忙しいのはセバスがいないのもあるだろう。敵対したとはいえ、彼を殺したのは私なのだからな・・・。
結局、断りたくても、受けなきゃいけない理由ばかりが存在している。この侯爵、こんなんだが計算高いから初めから私が断れないのを承知で言っているのだろうけどな。
「わかりましたわ。何か嫌な予感がするので余り受けたくはないのですが、侯爵様には恩義がありますわ。受けることにしましょう」
「おお、ありがたいんだな。折角なので冒険者ギルドの依頼として通してもらうんだな。その方がノアたんにとっても今後色々融通が利くんだな」
「どちらでも構いませんわ」
するとリーミアが書類と共に手紙を持ってきてくれる。
「此方が、手紙ですわぁ。そして、これがノアちゃんが行く先で関係ありそうな資料です」
うん?手紙を届けに行くだけなのに資料なんて必要なのか?少し厄介な国なのかね。取りあえず受け取っておく。
「ありがとうございます」
「デュフフ、宛先は、ルーガス王国の首都オンダーバーラーにいるペリノア卿なんだな」
うん?ルーガス王国ってどっかで聞いたよな。どっかで聞いたような、そういえば誰かの出身国だった・・・ああ!あのケスノーの・・・という事はあれか?
「もしかして、ルーガス王国っていうのは、あのサー・ケスノーの?」
「あらあらまぁまぁ、そうですね。彼をご存知でしたわね。でも大丈夫ですわ。その資料にあるように皆が皆、ケスノーさんの様に聖女を崇拝してる訳ではありません」
そうケスノーは、私を聖女と崇めている騎士である。
「デュフフ、まぁ資料を読んでみるといいんだな。あ、そうそうこれも資料に書いてあるが、向こうに行く際には刀以外の武器を探しとくといいんだな」
刀以外?どういう事だろうか。まぁ資料を読むとしよう。
取りあえず話を切り上げると忙しそうな侯爵に一礼して部屋をでる。館のエントランスホールの椅子と机を借りて資料を読む事にした。
ふむふむ、なるほど分かった事を分かりやすく並べて行こう。
・ルーガス王国は、文芸の女神ラスヴァティを崇拝するラスヴァ教徒が大半を占める国であり、その王族も全員ラスヴァ教の信徒である。
・現在ルーガス王国のラスヴァ教は、サンクティフェミナ派、デア派、そしてその間の中立派の3つが存在している。
・サンクティフェミナ派は、女神ラスヴァティを崇拝すると同時に、その御使いである胡蝶の歌姫も重要視し、その転生者と言われる聖女を崇め、聖歌を特に重要視する。
・デア派は、女神ラスヴァティだけを崇拝し、教義と文芸全体を重んじ、それ以外はさほど重要視しない。
・現在、ルーガス王国の王室は、中立派の前々女王が亡くなり、サンクティフェミナ派のジェーニー・グレイフが王座についたが9日間で死亡。
・その後、その娘ルーニー・グレイフが即位するも、12歳と言う年齢から王室及び政府はサンクティフェミナ派とデア派で割れ水面下で抗争が行われている。
・ルーガス王国では許可なく刀を装備する事は禁止されている。それは、女王直属の新環騎士団のみがその証として帯刀を許されるからである。
・ルーガス王国国内は神器による結界が張られていて魔法を使用することが出来ない。
うん。個人的にあまり行きたい国ではないな。ふーむ、魔法も使えず刀も使えずか・・・。まぁ仕方ないな。
(なぁ、リリィ。ルーガス王国について何か知っている?)
少し成長して長くなったので首掛けタオルの様に巻き付いているリリィに思念で聞いてみる。
(ん~そうねぇ。貴方の知っている通りルーガス王国は胡蝶の歌姫の出身地ね。政治状況は最近の事だからわからないわね。国ごとのいざこざなんて非常時以外興味ないもの)
(そうか。魔法が使えないのは最近の事なのか?)
(あぁ~それは昔からねぇ。神器っていうかアレはあの場所の特質ね。別に魔素がないわけじゃないの、どっちかというと神側のシステムとの相性の問題だから魔術は使えるはずよ。ま、行ってみればわかるわよ~)
(へぇーそれはまた面白そうだな。周りが魔法使えない状況で、魔術が使えるのは利点だが、使ったら悪目立ちしすぎて危険だな)
(そうねぇ。アレはアレで昔から国防にも利用してるようだからねぇ~。魔術を派手に使ったら国防能力が揺らいで政府が勝手にパニくるかもねぇ~それはそれで面白そうだけど)
そうだな、各国は攻めるにも守にも魔法を使うことを念頭に置いて編成しているだろうから、魔法を使えない場所で魔法を使わない戦い方を特化した部隊しかない国には簡単には進行しないだろう。
後は、武器だな。とりあえず "光切兼忠" は暫く封印するしかないとして、そうなると代わりの武器が必要だが・・・。特に候補などはないが、とりあえず武器屋を次の目的地とした。
向かったのは装備関連を扱う店が並ぶ通りで武器屋をいくつか見て回る。大剣、片手剣、双剣、突剣、の剣各種から、ナックル類、槍類、鈍器類、弓類にその他、暗器から投擲武器まで一通り揃っている。
どの店も値段、品質もピンキリで品揃えは非常に良いのだが、なんていうか食指が動くような物がない。そろそろ、諦めかなぁ思い始めた通りの端にある店内の事である。
その店には、ショッキングなピンクに塗られた大鎌が飾られている。なんていうか、角が生えて三倍速いとかいう感じの色より遥かに鮮やかなピンクだ。
つい、その前に立ってポカーンと見てしまう。だってこんな武器使う奴いるか?ただでさえ大鎌なんて使う奴殆どいないのに。向こうの世界を合わせても一人しか知らないぞ。
まぁ見た感じはカッコイイよ。中二病的にも人気があるくらいには。だがなぁ使うとなるとそれ相応のパワーと技量っていうかなんて言うかアレ専用の感覚が必要だろう。
兎に角、重量はあるし、武器として大切な重心やバランスは、気の毒になるほど真っ当な人間向きじゃない。だが、コイツは不思議と気になる。まぁ気にならない方がおかしい武器だが、それとは別に何かを感じる物がある。
すると、奥で私の事を見ていた店の親父が声を掛けてくる。
「嬢ちゃん、それが気になるのかい?まぁお嬢ちゃんには扱える代物じゃないが、良ければ持つだけ持ってみてもいいぞ?まぁ持てないだろうけどなハハハ!」
そういうと、掛けてある武器を低い台座にまで置いてくれる。
「それでは、お言葉に甘えて持たせてもらいますわ」
取りあえず持ってみる。
「おお!嬢ちゃん見た目によらず力あんな!まぁその大鎌のスキルで3倍軽くなってるらしいけどな!」
3倍軽いとは如何に?どういう軽さなのか不明だが、確かに重いんだけれども目測した重量に比べると圧倒的に軽い。それとは別になんだこれ?妙に体にフィットするというか奇妙な感触があるな。
「この武器?何か妙というか、なんというか?」
「その武器はな、名工とよばれる"ロープス爺" が作ったもんだけどな、あの爺さんは変な武器しかつくらんので有名でな。気まぐれで普通に使われる武器の類を作る事もあるが、そういうのは宝剣級の値段がつくんだよ」
「へぇ、なるほど。それで武器にスキルがついているのですね」
「ああ、すごいだろ?軽く感じるだけでなく、扱う技術もあがるスキル付きだ。だけどな、その見た目と使い勝手の悪さで有名な大鎌なんでな誰も買っていかないわけよ。値段も一応名工っていう事で変なプレミアついちまってるしな」
確かに、大鎌の癖に色もそうだがファンシーなデザインだ。石突が星であしらわれていたり、刃の部分の腹の一部はハートにくりぬかれてたりと最早ただの飾りである。
ふーむ、見た感じ切れ味もかなり凄そうだし、便利なスキルが付いているからこういう普通なら一生使わないであろう武器を使うチャンスでもあるんだよなぁ。
迷っているとリリィが突如聞いてくる。
(ねぇノアちゃん?もしかしてソレにしようとか思ってる?)
(あ?うーんどうしようか迷ってる)
(そう・・・)
(どうかした?)
(いや、何でもないわ)
なんか変なリリィだな。まぁいいや。
「おじ様、コレは、お値段いくらなのかしら?」
「お?それなぁ一応、名工が作ってるからなぁ。本当は70万と言いたいところだが55万でどうだ?」
「う~ん。この武器の出来の良さはわかりますわ、でも、それでも武器のタイプを考えると、45万程にならないかしら?」
「嬢ちゃん、それりゃー、流石に店として赤字ってもんだ。オジサン泣いちゃうよ。でもまぁギリギリの50万でどうだ?ぴったりだろう?」
ふむ、親父が売れる値段はだいたい元々50万くらいか。
「では50万で、そこに置いてある "苦無" で通じるかしら?その5本セットを一緒につけて下さらないかしら?」
「お嬢ちゃん、買い物上手だねぇ。しかも "クナイ" を知ってるだなんてかなり通だね。こりゃお嬢ちゃんと値段交渉を長引かせると不利になりそうだな。分かったそれで手を打とう。だけど、返品は無しだぜ」
「ええ、分かっておりますわ。特殊な武器ですから返品されても困りますものね」
現在の所持金が100万ゴールドちょいあるから半分になるのはきついが、生活するには問題ないだろう。ついでに売り払ってないレアな素材もまだあるしな。
支払いを済ませ、商品を受け取る。
「毎度あり~!で、どうする、このままむき出しで持って帰るのか?」
「えーそうですわねぇ。こんな感じですわ」
そういって、太ももにつけてある四次元ポシェット(?)の口に大鎌の星型の石突を少し突っ込んでみると、スウーっと消える。
「な!消えた!??もしかして、あれか?物質送招喚!?」
多分何か違う気がする。恐らく名前からして親父が言ってるのは、物体の送還と招喚を自在にできる何かのスキルなんだろう。少し違うが誤解を解く必要は別にないか。
「さぁ、どうでしょう?ちょっとした乙女の嗜みですわ。ですが、知られたくないので内緒にしていてくださいね。先ほど売って頂いた大鎌で人の首を刈りたくないので」
ニッコリしながらスキル、フライトゥンアイをこっそり使い威圧する。
「お、おう・・・わかった」
少し怯え気味に返答する親父に丁寧な一礼をして私は店を出た。
お久しぶりです。初めましての方初めまして。
一週間ぶりの投稿です。
今回から、ルーガス王国と胡蝶の歌姫編スタート。
それでは次回もよろしくお願いいたします。




